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自称天才兄弟は無機質JKを部屋にあげるそうです

「うるさい……」

「あぁ、悪い」

てか思わず驚いちまったけどこの無機質JKが俺技術者(先生)の先を行くあさみけいと同一人物ってのが信じられないな。

「にぃ買ってきたよ。って誰この女、まさか知り合いのロボットに遭遇してしまったの。あー可哀想な、にぃ」

「安心しろ妹よ、運が良いことにこいつは今までの俺の人生で一度も出会った事のないロボットだ」

俺が誇りながらそう言うが結衣は全く話を聞かずに自分の事のように泣いてる。

あのー聞こえてますか?この無機質女、安心安全。だから床を叩きながら泣くのはやめてくださるかな?

同情してくれるのは嬉しいけどあなたの大泣きで集まった視線で僕のライフはもうゼロよ。

「すごい量……羨ましい……」

無機質JKはこの状況に我関せずを貫き、結衣が買ってきたラノベの山に目を光らせている。

ラノベで目光らせるって流石はライトノベル作家と言うべきか。

俺は3分の付き合いとは言え無機質JKが始めて目に光を点している事に驚愕していたが、それを他所に女泣かせたのかと野次馬根性の奴らが増えてきた。

俺はその視線を嫌い結衣と紙袋を抱え本屋を後にした。

「ハァー、今日はえらい目にあったな」

俺は結衣に話しかけるように言ったのだが、泣きべそをかく結衣に俺の声は届かない。

おーい結衣さん、俺もニートとは言え無視されると傷つくですけど。てか前から思ってましたけど結衣さんって1話目ニート系妹として登場したじゃないですか、なのに2話目で急に真面目系妹になって3話目泣きべそ系妹ってキャラぶれぶれですけど、そろそろキャラ確立しないとまずいんじゃないですか?

「ほんとほんと……」

俺の心の声に共感するように返ってきた言葉は望んでいた妹のものとは違った。

振り返らなくても分かる一定のトーン、無機質な声

「何でここにいるんですかね?あさみけい」

 

「お茶でいい?」

「うん……」

俺はここに住んでから初めての来客にぎこちなくお茶を出した。

何故こうなったかと言うとあのままこの無機質JKと口論しても解決する気がせず、その代わりとばかりに近所のマダムの視線が増えてきたのでなくなく家に入れる事にした。

ニートは近所のマダムの視線に弱い。

「で結局お前は何しに来たんだっけ?」

「これ……読みたい……」

無機質JKは目をキラキラに輝かせ紙袋からとある魔法の広辞苑を取り出した。

何きみ、人の不幸見るの好きなの?

なんて笑顔100パーセントの金髪美人JKに言える訳もなく

「お前ラノベ作家なんだろ。そんくらい自分の金で買えばいいだろ」

「むり……お財布無くしたから……」

「は?それ大丈夫なのかよ?」

「大丈夫……今担当編集が探してる……」

「ニートの俺が言うのも何だがそれ世間一般だと大丈夫じゃないって言うんだぜ」

俺の追求を嫌ってか無機質JKは顔を背けた。

ラノベの山が積まれたラノベのエベレストへ。

「あ、これあなたもラノベ書くの……?」

無機質JKはエベレストの中でも他の本とは異色を放つ原稿用紙に目を向けた。

「あぁ、まだアマチュアだがな」

「読んでいい?」

「……あぁ、いいぞ」

俺は気恥ずかしさによる躊躇いが あったが結衣以外の生の声が聞けるチャンスはそうそうないので了承した。

 

無機質JKはあれからものの一時間半で俺の幻想のスカイウォカーを読了した。

「どうだ?」

「おもしろかった!特に最後のドギュンドギュンのシーンは最高だったよ!」

俺は反応が待ちきれずに食い気味に質問すると、それ以上の勢いで答えが返ってきた。

ちなみにこのドギュンドギュンは感想での言い回しでなく実際にこういう風に書かいてるんだ。中々のワードセンスだろ?

「お前普段は何考えてるか分からないけどラノベについての目はあるようだな」

「それほどでもあるけどね。この作品も本当に面白いよ。私の編集に見せれば担当についてくれるかも」

「ほんとか!?」

「うん……今度見せてみるね」

「ああ!頼む」

これなら4ヶ月待たずして雷文庫小説家になれる。

「何このブルブル音?まさか電話?やっぱりにぃが見つかった事によってロボット協会からの刺客が?それともまさかロボットを操る技術者せんせいからの定期更新!?《れんらく》」

今まで泣き寝入りしていた結衣は手帳型のスマホケースを握りしめて、独り言をぶつぶつと呟いてる。

あれおかしいな、俺も結衣もスマホにケースを付けない。何故ならニートは滅多に外に出ないので携帯を傷つける心配もないのだ。ニートは安上がりだなハハハ……。クソ。

とそんな事はさておき俺でも結衣のスマホでもないって事は、まさか……。

「無機質JK!これって担当からじゃないのか?」

「無機質JKって。それにそんな吉田カーボンのスマホケース知らない」

「お前滅茶苦茶詳しいじゃねーか!こんな黒一色のスマホケースにそんな名前付いてたんか!」

無機質JKはあからさまに焦り、汗をダラダラに流し知らぬ存ぜぬを通している。

だが他人の財布を探してる担当編集を放っておくのも人道に背く気がして、今度は厨二病キャラになりつつある結衣からスマホを取り上げ無機質JKに突き出した。

「君は知らない……担当から電話がかかってくる恐ろしさを……」

「ああそうですよ。アマチュアの俺からしたら編集から電話何てかかってきた日には大喜びだよ」

俺はこのままでは拉致が開かないと思い手帳ケースを開けコールボタンを横にスワイプした。

「もしもし、やっと繋がった。あさみ先生今どこにいるんですか?」

「友達の家……」

「友達の家ですか、今から向かいますから住所とか分かりますか?」

「住所は分かるけど……迷惑かけたし私が向かうよ……」

無機質なお前にも一応の社会性はあるのか。

ってか住所知ってるって何?しかも俺たちってまだ会って二時間ぐらいなのに友達なの?お前って性格よりプレイな感じなの。話した奴全員友達だぜっていうタイプなの?

「いや!気遣いだけで充分です。あさみ先生にウロウロされると永遠に出会え無いのでじっとしててください!で住所は?」

俺のジェットコースターみたいにグラングランした意識が無機質JKの担当の大声で現実に帰還した。

「えーっと、横バキュンバキュンバキュン!」

だめだよ!今アメリカ並みに銃声聞こえたよ。まぁそのおかげで俺の住所は守られたのだった。

「了解しました。ではこれから向かいます」

待てよ。ここに無機質JKの担当が来るって事は俺の原稿が今日見られるって事じゃないか。

ふふふ、雷デビューが4ヶ月から今日になったぜ。

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