表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リィンカーネ ~ 転生マッチングアプリ  作者: 等々力 至
第1部 転生マッチングアプリがもたらす世界
12/19

第12節 アンドゥ

 鳩が鳴くように、乾いた銃声が二度鳴った。

 一発目が左耳をかすったと思ったときに金属音もした。エダルドが左耳につけていたピアスに当たったのだ、エダルドがピアスを付けていたことに十真(とうま)は改めて気づいた。

(ああ、ピアスは二度とできないな、すまない、エダルド)

 左耳が飛び散ったことに彼は気付く。手を当てたりしなくても、それがわかってしまった。そして、そんなことに考えを及ぼす間もなく、二発目が胸に当たった。


 何秒かの空白の後、気付くと彼は店の天井を見ていた、撃たれて仰向けで倒れたんだ。


 緊急事態が起こったからか、天井のディスプレイパネルは赤い光を点滅させている。他の客や店員の声が聞こえる。銃を持っているぞ、保安部を呼べ、という叫び声が何度も聞こえるが、このような事態に対応すべき保安部員であるロッシーは銃撃されて倒れている。

 そして、犯人は保安部長であるヤミキだ。


 耳と胸が熱い、いくら呼吸をしても、酸素が取り込めない。

 息が苦しいくせに、息をする度に熱さと寒さが交互にやってくる。背中が流れた血で濡れている。

[これが大量出血というやつか]

 十真は銃撃されるのは(当たり前だが)初めての経験だった。


 おかしい、おかしい。彼は自問自答を繰り返す。

 十真は蜘蛛の糸にすがるカンダタのように、スマホを取り出した。

 画面をタップして、アプリの画面を見る。


――――――――――――――――――

 転生マッチングアプリ

<<リィンカーネ Ver.β2>>


 あなたが実行した転生は次のとおりです。

 1.時代:おまかせ

 2.場所:異世界

 3.転生前の記憶:引き継ぐ

 4.強さ:人類最強

 5.好感度:100

 6.財力:100

 7.魔力:100


 ステータス:転生完了

 フッセ:7


 [アンドゥ](7フッセ)

――――――――――――――――――


 十真(とうま)は『4.強さ:人類最強』の表示を見直しながら、考えを巡らせる。

 このアプリは人間を入れ替えて転生させるほどの力がある。神や仏、あるいは高度に進化した宇宙人でもなければ作れないアプリだ。

 だから、そのアプリで人類最強の強さを設定できるのというなら、俺は人類最強の強さになったはずだ。人類最強という言葉の定義が曖昧なものであったとしても、そこらのおっさんの銃で撃たれて死ぬ程度の強さなのか?

 凍土を歩いてきたのは、ここで撃たれて死ぬためなのか?

 俺が何かこの地で罪を犯したとでもいうのか?


 くそっ、くそっ

 息が切れる、目が霞む。

 悔しさや不満しか頭に思い浮かばない。


 だが、ある文字が十真の目に留まった。

(アンドゥ…だと?)

 彼は画面が少し変わっていることに気づいた。

(こんなの、前は無かったぞ)


「やったか?」

 銃をかかえた男が十真を見下ろしている。


 彼は失血して冷えた頭で考えた。

 こいつがバカ部長か、なんで俺より先にロッシーを撃ったんだ?

 本当に馬鹿だな、部下の様子を見るほうが先じゃないのか?


 そんな批判が届くわけも無く、興奮に駆られたヤミキ保安部長は銃を構え直すと、引き(がね)に指をかけた。


(もう、これしかない)

 十真は[アンドゥ]をタップした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ