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一話 ダンジョン祭り


 序章 ダンジョン祭り


 無の世界に連れ込まれたような、そんな何も見えない暗闇の中で何者かが言う。


「フッ! なかなか面白い者だ。少しの間退屈凌ぎにさせてもらおう」


 活気溢れる王都テンドラ、六カ国の中心に位置するこの国はいつでも賑わっている。


 特に今は、七カ国合同で開催するダンジョン攻略祭りの時期ということもあっていつも以上に賑わっている。


 ダンジョン攻略祭り。これは七国の王、七神が協力し合い行う盛大なお祭りだ。国中の冒険者達が集まり、最強の冒険者を目指す。もちろん賞金や商品なども国から貰える。


「ふっふふーん、やっとこの日が来た! ダンジョンの攻略。そして、最強の冒険者! 俺がやったるぜ!」


「ひゃっ!」


 気を抜きすぎて、路地から走って来た少女にぶつかってしまった。


「イチチチチ、ごめんごめん大丈夫?」


 ぶつかった子の被っていた布は飛び散り、ふかふかの毛に覆われた耳が露わになった。


「い、いえ。申し訳ありませんでした。貴方様こそ大丈夫でしたでしょうか」


 少女は深々と頭を下げ、震える声で謝ってきた。十四歳ほどのまだ幼さの残る少女には出来すぎた言葉遣いだ。


 よく確認すると首輪が付けられている。これは奴隷の証、この幼さで奴隷にされてしまったのか。


 この世界では、奴隷商売が認められている。奴隷は色々なことを覚えさせられるが、特に言葉遣いや態度を徹底的に教え込まれる。この幼さで少女が出来すぎた言葉遣いを使ったのは奴隷だからだろう。


「俺は大丈夫だよ。それより君急いでたみたいだけど大丈夫?」


「そうでした、急いで戻らないと! すみませんでした」


 深々と頭を下げると、少女は人混みの中に消えていった。


「よっっと! 結構強くぶつかったから頭が少しクラクラするな。それにしても嵐のようだったな。ん? なんだこれ」


 何かキラキラ光る物が落ちている。


「あの子が落としていったのか? ってこれ、クリスタルでできたペンダントじゃんか! 絶対大切なやつだろ!」


 慌てて、少女が走って行った方を見るがもう少女の姿はない。


「しょうがない、きっとまた会えるだろうし、その時渡せばいいか」


 ダンジョン祭りの会場に近づくにつれて、人混みやお店の数が増えてきた。その中に魔物の骨を吊るす、ひときわ異彩を放つお店が目に入った。


「うっわ、なんだあれ。」


 黒と赤の看板に、魔骨鍛冶屋と書かれている。


「魔物の骨を使って剣を作る鍛冶屋さんか。見た目は不気味すぎるけど、なかなか面白そうなお店だな、入ってみるか」


 お店の中には剣やダガーなどの様々な冒険者グッズが飾られている。


「おっ、いらっしゃい!」


 お店の奥からすらっとした、ナイスバディなお姉さんが出てきた。きっとこのお店の店主だろう。


「変わった店構えのお店ですね」


 美人と話す機会など皆無の俺は、おどおどしながら話しかけてみた。


「ん? そうかー? いい感じの店構えだと思うんだけどな。特に魔骨を吊るしてるところがチャームポイントなんだ!」


 少し変わり者という感じがするが、美しすぎる笑顔が、全てを忘れさせてまう。


「アイゼルさーん、短刀を作ってみたんですけど、どうですか?」


 今度は少女が出てきた。美人でお姉さん系の店主と打って変わって、まだ幼さの残る妹系の少女だ。


「デザインはいいんだけど、斬れ味がちょっとだめだな。でもこの前のよりは良くなってるよ!」


「ほ、本当ですか! もっと頑張ります!」


 少し照れた笑顔で答える少女の表情は、なんとも言えない可愛さだった。その笑顔に見惚れていると少女と目が合った。


「はっ!」


 声を荒らげた少女は、店主の後ろに隠れた。


『え、俺嫌われたの⁉︎ 一目見られただけで嫌われたの⁉︎』


「すまないな。この子は元々奴隷で私以外の人と話すのが極端に苦手なんだ」


「あっ、そうなんですか。よかった」


「ん? 何がよかったんだ?」


 つい、ほっとして心の声が出ちゃったみたいだ。とても不思議そうな顔で見てくる。


「いや、なんでもないです」


「そうか。そうそう、一応紹介しておかないとな、この子はレーネだ。私の弟子なんだ、よろしく頼むな










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