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温もりと甘え

やっと夜編終わりです。

作者の趣味で迷走しましたゴメンナサイ。

ロック値の説明したかっただけなのに……

そして、この話がここまででは最長です。

「これが目立たないようにするためと、あとはちょっと寒いから、おぶってくれると助かるな。」

加奈恵はそう言った。

「ダメ………かな?」

少し首を傾けて、上目遣いでそう言ってきた。

断る理由もないけど、こうされると断り辛い。加奈恵が悪女にならないかちょっと心配になる。

「わかった。加奈恵をそうやって連れていく。宿に着いたあと、銭湯に行こうと思うけど、加奈恵はどうする?」

「私も、行こうかな。冷めちゃったし。」

「そっか。」

とりあえず、今は帰ろう。

「それじゃあ、乗って。」

「………うん。」


帰り道はずっと静かだった。

僕も、加奈恵も、ずっと、一言も話さなかった。ジークの夜は、沢山人がいたのに、とても静かに感じた。多分、それどころじゃなくなっていたからだと思う。彼女と触れあっていた背中は、とても温かくて。感触が、妙に心地良くて。平然といるなんて、できなかった。


「おっ、お帰り!ってどうして濡れてんだ?」

「ちょっと郊外まで行ってたら魔物に囲まれちゃって。そこが橋の上だったんでそこから飛び降りて逃げてきたんです。」

「橋ってことはあの橋か。あんた、この町は初めての筈なのにツウだねぇ。」

「前に、ニシハラに来た商人の話を思い出しまして。」

もちろんウソだが。思念画面の検索機能使いましたが。

「まぁそれはそれとして、だ。お前ら、濡れたままじゃ寒いだろ。うちの風呂場を貸してやるから温まってけ。」

キャロさんは言葉遣いが店員というより友人といった口調で接しやすい。それに、こう気が利く。

「では、お言葉に甘えさせてもらいます。」

「ありがとう…………ございます。」

「構いやしないよ。」

この人は優しい人だなぁと、心から思った。




そんな自分がちょっと憎い。

キャロさんはやっぱりキャロさんだった。

ちょっと慌ててるので今の状況を整理しよう。

キャロさんの家に服を持って加奈恵と一緒に行って、キャロさんのお父さんにちょこっと挨拶して、真裏の飲食店の店主がキャロさんの旦那さんだって知って、今度行きますって言った。

そこまでは良いとして、そこからが問題な気がする。

「時間が時間だから、お前らまとめて行ってこい。」

キャロさんがそう言ってきたのだ。

「「えっ」」

僕と加奈恵の声がシンクロした。

「流石にそれは…………」

「恥ずかしい…………です。」

「そんなことは知らん。早く行ってこい。」

キャロさんのその言葉に押し負けて、今、僕は加奈恵と二人で風呂場にいる。

キャロさんのあの表情、なにか企んでる表情だった。

あれと同じ表情を、由美がよくするからわかる。

「まさかこんなことになるなんてね。」

「まったくだよ。」

由美の言葉に、僕はそう返した。

「………こんなことが、前にもあったよね。」

「そういえばそうだね。」

今思いだしたけど、前にもこんなことが一度あった。

あの人は、僕の両親が忙しくて帰ってこれそうにないということで、三樹家に一日だけお世話になった。

「あの日は、二人で勉強してて、気がついたら寝ちゃってて、雨が降って目が覚めて濡れて帰ったんだっけ。」

「そのときに、私は足を挫いちゃったんだよね。」

そういえば、加奈恵が足を挫いたから、僕がおんぶして連れて帰った記憶がある。あれっ?それって…………

「だから、今日は、あの日のことを思い出して、光くんに甘えちゃった。」

加奈恵は甘えん坊なところが少しある。だから、とっても加奈恵らしいと言えば加奈恵らしい。

「それは全然構わないよ。」

僕にとってもあの頃は懐かしい。

僕は加奈恵の続きの言葉がなんとなく想像できた。

「だから、この後、あのときみたいに」

「もちろん。」

だから、加奈恵の言葉に即答する。

「ありがと。」

そう言って加奈恵は僕の背中を流し始めた。

あの日、加奈恵は「いつものお礼」といって背中を流してくれた。

えーっと、その後は………

ちょっと思い出して僕は硬直する。

あれはちょっとマズイ。なにがマズイって僕の心が。

それでも、加奈恵を止める訳にもいかず、僕は、それを受け入れるしかない。

そしてそれが来た。

「………いつも、ありがとう。」

加奈恵が抱きついて、耳元で、そう囁いた。

「光くんがいなかったら………私は今日だけで、二回死んでた。だから、本当にありがとう。」

続けて、そう囁いた。

そう言われると、なんだかくすぐったい。

「なにかひとつ、私にできることだったらなんでもするから言ってね。」

最後にそう言って、加奈恵は僕から離れた。

鏡越しに映る加奈恵は、頬を紅く染め、とても可愛らしかった。

僕は、このときの加奈恵の温もりや柔らかさ、可愛らしさは忘れられそうにない。



「光くんって意外と意地悪だよね。」

「でも、なんでもするって言ったでしょ?」

「それは、そうだけど………」

「………それと、加奈恵が可愛いのが悪い。」

二人きりの室内では、どんな小さな声でも、相手に届いてしまう。

「かっ、可愛いだなんて……」

「そりゃあ、あんな近くであんなに可愛いらしい声を出されて、それで紅潮した顔なんか見せられたら、ね。」

「あれは私も恥ずかしかったからしょうがないじゃない。それに、光くんの存在がいつもより感じられた。」

「僕も。加奈恵の存在が強くて、この世界には加奈恵と僕しかいないくらいに感じた。それに、恥ずかしかったけど、気持ち良かったし。」

「気持ち良かったってなにが?」

「言わせないでよ………」

二人して黙る。

そして、加奈恵が再び口を開く。

「それで、このあとあのときみたいに二人で手を繋いで寝ることで本当に良いんだよね?」

「もちろん。あのときが懐かしかったのと、もう少し加奈恵に甘えてほしかったから。」

「でも、あのときとは少し意味が違ってこない?」

「さっきのことがあったから、今更だと思うけど。」

「それもそうだね。……………襲わないでね?」

「少なくとも今夜は襲わないよ!」

慌てて反論する。すると、加奈恵は

「「今夜は」ってことは脈ありかぁ……」

とよくわからないことを言って笑顔を浮かべていた。

「まぁ、とにかく、おやすみ。」

「うん。おやすみ。」

そして僕らは、眠りにおちた。

いよいよ冒険者デビューです!

そういえば2人にブクマ登録されてました!

これからも執筆頑張ります!

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