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策士と時計台

8/13 19:30

誤字修正及び入れ忘れた一文の追加を行いました。

売却手続きは他の2人に任せた。

ここまでは、計画通り。

ここからは、私が数日かけて立てた作戦を3人で修正したものを、確実に遂行するのみ。

「直輝、あのお店で食事しない?」

指差したのは、全てのテーブルが高めの仕切りで区切られている店。

ミッション03:周りに人目がない、完全に2人きりの状態にする。

「そうだな。」

ミッション03、コンプリート。

私と直輝はふたりで店に入った。

店員さんから、席に案内される。

「直輝は何を食べる?」

ミッション04:特殊攻撃『あーん』の実行

これを成功させるために環境を整えている。

まず、直輝が料理を2択で迷うように仕向ける。

そこで私が

「じゃあ直輝がそっちを頼んで。私がこっちを頼むから。」

と言う。そして食べるときに少し交換するようにする。そしてここでミッション04を遂行する。ミッション03はこのときの外部からのダメージ(「バカップルめ…」)を遮断できるという点でミッション04の成功率を高めるコンボとして有効である。

そして、私の直輝観察と光の直輝との会話から2択で迷うように店のメニューとふたりきりの環境を両立させる方法を考えた結果がこれだ。店のメニューは光が調査済みだった。

あいつ、どうやって調べたんだ?

「むぅ………」

直輝が迷っている。

「どう?もしかして決まらない?」

「ああ、このふたつで迷ってる。」

「じゃあ直輝、こっちを頼んで。私がこっちを頼むから。そして後から交換すれば問題ないでしょ?」

「………それで良いのか?」

「もちろん!」

「じゃあそうしよう。」

第一段階成功。

さて、上手く事が運ぶだろうか。



「お待たせしました!」

店員さんが注文したものを運んできた。

「わぁ……」

感嘆の声をあげてしまった。予想を遥かに上回る見た目、立ち上る湯気がその姿をより美味しそうにする。そして香りもとても良い。

ニシハラとは比べ物にならないレベルだ。ジークに来てから訪れた店の中でも最も良い。それでいてお値段そのままとは。

光の情報収集力、恐るべし。

「それじゃあ、食べよっか」

私は笑顔で直輝にそう言った。

「そうだな」

という言葉が帰って来たので、とりあえず食べることにした。

味もとても良い。一体どこから情報を仕入れてるんだか。

それでも、目的は忘れない。

「直輝」

そう言って私の方の料理をスプーンに乗せて差し出す。

直輝は首をかしげて

「なんだ?」

と言ってきた。ホント鈍いなぁ!

「ほ、ほら、さっき言ったでしょ? 交換するって」

直輝は合点がいったように「そういえば」と呟いた。今、忘れてたよ⁉

「ほら、早くして!」

そう言うと直輝は差し出されたスプーンに「手」を伸ばし、そのスプーンを受け取った。

「えっ?」

私が放心してる間に直輝は料理を入れ替えた。

「こうしたほうが食べやすい」

私はそれに対して「そうだね」と返した。あーんはちょっと難しかったか。むぅ……

あれ?でもスプーンも入れ替わっている。ということは間接キス?

あーんは失敗したけど、まぁ良いか。

ミッション04失敗。でも、私の心は満たされていた。


そのあと、ふたりで町を少し回った。

そのときにミッションをするのをすっかり忘れてしまっていた。

そして、ミッションの存在を思い出したのは、最後の店である武器屋に向かっていたとき。

「直輝、ちょっと寄り道しない?」

「寄り道って、どこへだ?」

「あの時計台の下」

私は時計台を指差す。武器屋へと向かう道から一本ずれるだけ。武器屋への道のりはさほど変わらない。

「じゃあそうするか」

そうして直輝と時計台へ向かった。


そして、時計台の下で。

私は歩みを止めた。

「どうした?」

星が輝いて、私を応援してくれているかのようだ。

これから行うのは、加奈恵にも、光にも伝えてない、恋した私に課せられた義務ミッション

「ねぇ、直輝」

私はそこで1拍あけて言った。

「私は、前から直輝の戦う姿を見て、格好良いなって思ってた。いつも、私達のために前に出て、傷付いて。それで、折れなくて。それがとても凄くて、格好良いことだと、私は思ってる。だから――」

そこから先の言葉が出てこなかった。ただ、沈黙したまま、時間だけが流れた。

気がついたら、直輝が微笑ほほえんでいた。多分、私の思いは伝わったんだと思う。

「由美」

直輝が私を呼ぶ。

「ついてきてくれるか?」

「もちろん!」

私は即答した。

そして、直輝は私の手を引いて―――――――――



武器屋へと入った。

直輝が手を離して剣が置いてある方へ向かった。

えっと、これ、どういう状況?

すると直輝が剣を持って帰って来た。

「由美が剣の魅力に気づいてくれるとは……剣を振るうときに格好つけた甲斐があった」

えっ……

つまり、格好良いって言ったのは直輝のことじゃなく、剣のことだって思ってるってこと?

私は頭を抱えたい気分だった。


私の恋は、まだ先が長そうだった。

「宿と寝顔」にて張らせて頂いた伏線を回収しました。

次回は光の視点に戻りまして、食事に行くときのお話とするつもりです。

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