高速詠唱と詠唱省略
単なる実験回です。
ギルドに薬草を届けると、とても驚かれた。
まぁ200もこんな短時間で集めれば、ね。
それよりも気になったことがあった。
「高速詠唱と詠唱省略……か。」
このふたつがどのような効果を持つか試さないといけない。
今、ギルドの訓練所のひとつである、魔法訓練室に来ている。ここは、魔法の影響が室外に及ばなくなっているため、ありとあらゆる魔法の試し撃ちができる。
「ちょっと効果を試しに行きたいけどどうする?」
と尋ねたとき、同じく魔法使いである加奈恵は
「いきなり……実戦使用は、難しそう。」
と言って共に来ている。
由美は
「じゃあ直輝と夕食食べて帰っとくね。ふたりとも、食事はきちんと採ってね。」
と言った。
僕や加奈恵は何かに熱中すると食事を抜くことが多かった。
そのおかげなのか年の割に背が低い。
そこ、もう手遅れとか言わない。
「まず、高速詠唱を試してみるか。」
そう言って、最も基本的な魔法でありながら物凄く詠唱が長い物を唱える。
「我が身に宿る魔力よ、大気に潜みし魔力よ、水に土に、全てに宿りし魔力よ。我が求めに応じて顕現せよ。始まりを告げる音を鳴らせ。我が身に祝福の光をもたらせ。我が身に宿る魔力を写し出せ。《魔力鑑定》!」
《魔力鑑定》。この魔法を使用することで魔法に対する適正がある程度わかる。この魔法が発動しなかった場合、全く魔法が使えないということになる、魔法の中で唯一のLv.0の魔法だ。
詠唱に要した時間は1分ほど。これを高速詠唱する。
すると、詠唱に45秒がかかった。確かに詠唱速度が上がっている。
正しくは魔力を編むスピードが上がっている。魔法とは魔力を編み魔法を発動させるのだ。つまり、編むスピードが早いとそれにあわせて詠唱を速くできる。
次に省略の実験だ。
「輝く炎球よ、その熱で焼き焦がせ!《ファイヤーボール》!」
Lv.1のファイヤーボールを発動させる。
普通のを試すのはいわゆる対照実験のためだ。
「《ファイヤーボール》!」
すると、魔法が発動した。
消費魔力量が少しだけ増えた。
「炎球よ!」
これでも魔法が発動した。消費魔力量はさっきよりも増えた。
「輝く」
これはファイヤーボールではなくライトが発動した。
「その」
魔法は発動しない。
「つまり、魔力を編もうとしつつ呪文の一部のうち意味を理解できるものを詠唱すると使えるのか。」
その後、魔法のレベルを上げていくとLv.3から使えなくなった。
加奈恵はLv.2から使えなくなった。お互いに今現在使える魔法の最大レベル-2だ。そういう規制はあるのだろう。
高速詠唱も規制があるのか試すと、こちらは使える魔法の最大レベル-1だった。
これで実戦でいきなり試して規制に引っかかるということは無くなった。
予想より早く終わったので、食事をきっちり採って帰ることにした。
そこ、食べようとしないから背が伸びないとか親みたいなことは言わないで。自覚あるから。
次回は異なる人物の視点でお送りしようと思います。