魔法複合とその増加要素
執筆に手間取りました………
ニシハラまでは片道8時間かかる。
ただし、それは徒歩ならの話だ。
馬車ならば4時間で行けるのだ。
それに、薬草がある場所はそれより手前にある。採取してから帰っても、往復9時間程度。日本の社会人が朝から出勤し、残業して夜に帰るのよりは断然良い。
馬車はレンタルで1回銅貨20枚ほど。薬草5本の市場価格で足りる。つまり、馬車を使った方が効率は断然良い。
「今回のは、本当に私達のためにあるようなクエストだね~」
報酬が高くて、納品は薬草。これほど有難い採取クエストは中々ないだろう。
「そう……だね。」
加奈恵は何故か僕としか普通にコミュニケーションができない。何故だろう。
「あ、私直輝の方に行ってくるね!」
由美はそう言って御者席へと向かっていった。
あいつ、嬉々としてるなぁ。
さてと。
僕は魔法書を開いた。
他にやることないからね。
タイトルは「魔法複合による増加要素について」
『同一の魔法を重ねた場合、効果が累乗されていく。
この効果に関して、単体攻撃魔法は威力が倍増する。範囲攻撃魔法では、効果範囲が増加する。このように、魔法によって増加するものは異なる。』
初耳の情報だ。
『単体攻撃魔法の威力は指数関数的に増加する。これは一般的にも良く知られており、また、敵対心が無い者と重ねるのは比較的容易である。』
僕も知っている知識だ。
『範囲攻撃魔法を重ねるのは至難の技なので、それを実現したものはほとんど居ない。天才魔法兄弟と呼ばれた双子の魔法使いでさえ、それを完成させるのに60年を要したと聞く。』
普通の人には無理じゃない?まぁ僕のマルチには関係ないけど。使う人が同じなわけですから。
『回復魔法の場合は少し特殊である。単体回復の場合は能力の指数関数的な増加が起こるが、その係数は小さい。範囲回復の場合、範囲が増加するか、効果が増加するかは魔法式により決定する。この詳細は下巻で記す。尚、下巻を読む前に「魔法式 中級」を読むことを勧める。また、回復魔法を重ねるのは範囲攻撃魔法よりも難しい。伝説的な回復魔法使いの双子が生まれた時から生活を共にし、習得に580年ほど要したそうだ。範囲回復についてはそこからさらに100年を要したらしい。』
エルフとかの長命種かな?まぁ僕には関係ないけど。大切なことなので二度言います。僕には関係ないけど。あれ?さっき言ったから3回か?
『次に、支援魔法についての説明をしよう。支援魔法を重ねる場合……………』
「何を読んでるの?」
「うわっ!」
気がつくと正面に加奈恵がいた。最初から正面ではあったけど。今はその距離を詰めてきている。
「いつから、なんでこんな目の前に?」
「えっと………結構前からかな?なんでって言われても………………」
加奈恵の顔が微妙に紅くなっていく。
そのとき、馬車が大きく揺れた。座ってたらなんともないけど、立ってたらバランスを崩してしまうくらい。
「あっ」
「おっと」
バランスを崩してコケそうになった加奈恵を支える。
「あ、ありがと…………」
「どういたしまして。」
少しの間の、無言。
「………で、何を読んでたの?」
「ええと、これ。」
「「魔法複合による増加要素について」?」
「魔法は他者の魔法と同調させることで、その力を引き上げられるのは知ってるよな?」
「それって単体攻撃魔法だけじゃ……」
「だけじゃなく、全ての魔法に反映される。今から支援魔法についてのところだけど、一緒に読む?」
加奈恵に尋ねる。
加奈恵は目を輝かせて
「読まない訳ないでしょ。」
と言って僕の右隣に座った。
『次に、支援魔法についての説明をしよう。支援魔法を重ねる場合は、その効果は………』
それからは目的地に着くまで、僕らはこの本を読み続けた。
今回は
「南野、お前ふざけんな。こんなダラダラと魔法に関して書くなよ。」
みたいに思った読者様がいらっしゃったかもですね。
今回はほぼ純粋に伏線を作る回でした。そこは謝罪します。
その他に
「前半にあれだけイベント盛り込んでなにがやりたいの?」
みたいな方もいらっしゃるかなと。
あれは趣味半分サービス1/4暴走1/4です。
作品展開上光や加奈恵たちは成長してしまうのです。で、あれば11歳(元の世界の時間に直すと12~13歳、つまり中学生くらい)の描写ができなくなるのです。回想でしかできなくなるのです。ロリータコnプレックスの人が困るかなと(あれ書いてる途中で思いついた理由)。
という訳です許してください。
追伸:
①既に最終回の構想はあったりしますのでそこまで書きます。
②後書きにも伏線がはいってたりしますw