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泣き虫な私が勇者になる話  作者: グリゴリグリグリ
第5章:レジスタンスとしての私
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5-6

『急げ、ハーニー!』

「わかってる!」


 作戦が開始されてか結構な時間が経っており、最初は方々から聞こえていた戦闘音も今は散発的に聞こえるだけになっていた。

 それだと言うのに私はまだ目的を達せられていない。

 ファルグ種の男と戦って思わぬ時間を取られてしまった。そしてどこに隠れていたのか、さっきまでと違って頻繁に兵士とも戦うようになっていた。その中には冒険者のような、いかにも荒くれ者といった風情の者まで居る。


「まったくどうなってるんだか!」


 また一人、冒険者風の男を倒して思わず愚痴が、口から飛び出る。

 それに対するダムネシアの反応は冷静なもので、


『一つ考えられるのは増援だな』

「増援?」

『相手はろくでもない組織なんだろ? それなら軍人以外の増援が来たっておかしくはない』

「確かに……」


 思っていた以上に厄介な相手だったのかもしれない。いや、そもそも国一つ傾けるような相手が生半可なわけじゃなかった。私の認識がそもそも甘かったのだ。

 ゾッと鳥肌が立つが、今更後戻りなんてできるはずがなかった。

 かくなる上は私が最速でカルミールを討ち取るしかない。

 そう決意した私の前に再び兵士が現れた。


「貴様っ!?」


 私はすでに姿を隠そうともせず、とにかく全力で廊下を駆け抜けている。当然、足音も出るし姿も丸見えだ。

 曲がり角でぶつかりそうになったその兵士は、近付く私の気配に剣へ手を伸ばしていたが私の方が早かった。そもそも、味方かもしれないと一瞬躊躇する兵士と、出会う者は全員敵という私では速さが違う。

 ダムネシアを振り抜くと、金属の鎧がひしゃげるような音がして兵士は壁に叩きつけられた。

 気絶したかどうかを確認する時間すら惜しい。動けたとしても私を追って来るのは難しいだろう。

 そして階段を駆け上る。踊り場に出た途端、足下に数本の矢が突き刺さった。

 急いで戻り、身を潜める。


「おい! 敵か味方かはわからんがここは通行禁止だ!」

「敵なら諦めろ。味方だったら遠回りしてくれ」


 そんな声が聞こえた。


「敵……なのかな?」


 チラリと見えた姿は冒険者であった。不揃いの服装。それでいて半分以上は体を隠している念の入りよう。とても兵士には見えなかった。


『十中八九そうだろうな。レジスタンスならハーニーより先にここに来ているはずが無い』

「それは冒険者もだと思うけど……潜ませてたのかな?」

『レジスタンスの動きもバレていただろうからな。可能性は高い』


 確認するには私がレジスタンスだと告白すればいいのかもしれないが、敵だったらと思うととてもそんなことはできなかった。

 安全に行くなら奴らの言う通りに遠回りして別の階段を使うべきだが、そこにもこうして見張りが付いている可能性もある。

 それに、そんなに時間をかけたくなかった。


『敵は二人だけ』

「わかった」


 策を考える。

 敵が兵士ではなく冒険者に近い人間ならそこに付け入る隙があるかもしれない。


「あんた達は侵入者を捕まえに行かないの?」

「そんな面倒なことするか」

「ここで敵を食い止めるだけで金はもらえるからな。それに俺達は昇進にも興味がねぇ!」

「昇進……組織の人間かな……」


 城を守ってくれ、という依頼が出されていたとして、それが受理されて更に冒険者が受けて、という時間があったならダムネシアの言う通り私よりも先に着いているなんてあり得ない。多少の時間はかかったとしても、それでも私が一番進んでいるはずだ。

 なにより冒険者は昇進とは無縁の職業だ。

 人によってはギルドマスターとしてギルドのトップになる人も居るがそれはほんの一握り。余程の功績を残して、タイミング良く先代が引退したりしない限りはなろうと思ってもなれない職業なのだ。

 と、なると考えられるのはクーア・クーララの一員という可能性。

 組織の一員なら働きによって昇進の可能性もあるだろう。

 そうなると今度は、あの男達の練度が露呈する。

 やる気が無いのは結構だが、向上心が無いということは努力もしない。特訓もしない。考えもしない。そんな冒険者をギルドで何人も見かけてきた。


「矢についてはダムネシアに任せた」

『わかった』


 ダムネシアと魔力を通して繋がるのを感じる。

 そして私は踊り場に飛び出した。


「うろっ!?」


 放たれた矢は少し頭を下げるだけで避けられた。続く矢も少し跳んで回避する。

 階段の上には二人の男が。やはり冒険者のようで、酒でも飲んでいるのか若干の赤ら顔である。

 こんな奴らよりも兵士を立たせていた方がよほど信用できると思うのだが、それを敵に言っても仕方のない話である。

 階段の中頃まで駆け上り、第二射もダムネシアが躱す。

 屈んで弓を構えていた二人は、ダムネシアを横に振るうとちょうど首を刎ねられる高さだ。相手が兵士ならば狙いも変えただろうが、相手が組織の人間であれば手加減をする必要も無いだろう。

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