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泣き虫な私が勇者になる話  作者: グリゴリグリグリ
第5章:レジスタンスとしての私
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5-5

「ごふぁっ! いっつぅ……!」

『大丈夫か、ハーニー?』

「なんとか。ダムネシアのお陰だよ」


 壁をその拳でぶち抜くほどのパンチを受け、その壁と挟まれても痛いで済むのはもちろん、ダムネシアが身体強化の魔法を発動してくれていたからだ。

 殴られる覚悟を決められたのも、直前に注意を飛ばしてくれたからだ。

 そして壁を突き抜けた後、ダムネシアが体を動かして私は持ち直す。

 男は拳を突き出した姿勢のまま穴の向こうからこちらを見ており、すぐに攻撃を仕掛けて来るような気配はなかった。

 と、思った次の瞬間、男が体を沈めたかと思うと、稲妻のような速度でこちらへ突っ込んで来た。

 目を見張り、思考が停止する。

 そんな中自然とダムネシアを前へ向けていた。


「きゃあ!」


 もつれるようにして吹き飛ばされ、続いて後ろの方からなにかが壊れる音。

 頭がぐわんぐわん揺れ、手も痺れダランと伸びたまま。折れてはいなさそうだがすぐに動かすこともできなさそうだ。

 構えたダムネシアには赤い血が付いていた。


「バケモノではなさそうでなにより……」


 弱音を吐きそうになったのを堪えて、呟く。

 さっき切りつけた時は鋼鉄でも殴ったかのように錯覚し、刃を握られても手の皮一枚切れていなかった。しかしさしもの男も、自身の突進のスピードを利用されれば傷を付けられてしまうのだ。

 あの突進は脅威だが、チャンスでもある。


「ダムネシアは大丈夫?」

『あれしきで折れるような私ではない』

「それはよかった」


 男は城壁に突っ込んで瓦礫の下敷きだ。

 まさかこれで死ぬとは思えず、油断なくダムネシアを握り直す。痺れるような痛みが走るがそれは無視をする。

 なにも起きないまま少しの時間が経った。

 実際には三十秒にも満たない時間なのかもしれないが、先を急ぐ私にとっては何時間にも思える時であった。

 まさかアレで死んだのか。ならばここは放って先へ進むべきか。しかしまだ生きていたら別の部隊が襲われる。

 思考がグルグルと回り、それだけで倒れてしまいそうだ。

 こういう時に魔法で遠くから攻撃できれば様子を見ることもできるのだが、生憎と私に魔法の才能はない。

 もしも追撃を仕掛けんと突っ込み、男がそれを待っていたとしたら。

 それを想像すると足は動かせなかった。

 このままなにもしないまま待つのは心臓に悪い。そこらに転がっていた破片を瓦礫の山に向かって投げつける。それが山に落ちるかどうか、そのタイミングで、


「ルルラァオウ!」


 瓦礫の山の中から飛び出した男がそれに噛みついた。

 城を構成していた壁の一部をそれこそクッキーのように粉砕し、吐き捨てる。


「判断は間違っていなかったようね」

『ああ。あれには私も反応できない』


 砂漠の砂の中で獲物が通りがかるのを待ち続ける大サソリのように、飛びかかる瞬間は正に目にも留まらぬ速さ。外したと気づいてこちらを睨みつける目は獲物を狙う狼の目つき。

 ゾクリと背中をなにかが通る。


「でも……もう私の勝ち」


 待っている間に身体強化の魔法のために魔力を練り上げ続けていた。

 この距離なら突進を仕掛けてくるであろうことは容易に想像ができ、案の定、男はその身を沈めた。

 さっきは急に突っ込んで来たので準備はできなかったが、それでも対応することはできた。今度は攻めてくるのがわかっていて、準備もできている。

 その光景はゆっくりと目に映っていた。

 走って突っ込むと言うよりは、その一歩が大きく跳ぶように。視線は真っ直ぐ私を捉えている。

 ダムネシアの柄を地面に突き立て、刃を向ける。

 もう狙いを変えることも後戻りをすることもできない位置だ。

 そのまま男は頭からダムネシアに突っ込んで来た。

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