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泣き虫な私が勇者になる話  作者: グリゴリグリグリ
第5章:レジスタンスとしての私
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5-3

 配置に着いた。周囲の建物の影に散らばって隠れているレジスタンスのメンバーは十数人。一国を相手取るレジスタンスの一部隊にしては心許ない人数。

 それも、私達の部隊の目的は城から敵を逃がさないようにしているからだ。


「ハーニーさん……大丈夫でしょうか?」

「安心して。大統領以外の政治家や兵士は逃がしてもいいから。私達は大統領の首さえ取れればそれで勝てる……!」


 意識して強い言葉を使い、後ろに控えていたレジスタンスのメンバーを落ち着かせる。

 カルミール大統領の首さえ取れればクーデターは成功。その時点で国軍は投降してくれるだろう。そうでなくとも、逃げてくれるならそれでいい。

 とりあえず今日を乗り切れば後は根回し済みの貴族達の力で事は済む。

 そうすればマレーナも少しは落ち着き、私も安心できる。


「私は大統領を探しに城に入るから、後は頼んだよ?」

「はい。最初からその予定でしたからね」


 現在、政の中心でもあるメロディヌス城の正面ではマレーナが直接、呼びかけをしているはず。話し合いの場で現政権の問題を質し、大統領の退陣を迫るわけだ。もちろん、その話し合いができるとは誰も思っていない。

 今朝方チラリと見た限り、普段は観光客のために開放されている正門は固く閉じられたいた。

 こちらの動きを読んだ上で、話し合いをする気はないと、そう言っているのだ。

 マレーナの調べた話では、この国を拠点としてクーアクーララは各地で活動しているらしい。ここを手放してまた国盗りから始めるのは大変だろう。メイル王国では失敗したばかりだ。

 故にクーアクーララも現在の立場を守るために死力を尽くすだろう。プロの戦闘員との戦いに、他のレジスタンスのメンバーは巻き込めない。

 この作戦も彼らを守るためのものだ。

 そして突如、爆発音が響き渡る。


「……これは!?」

「交渉決裂」


 始めからそうなるだろうな、と思っていた私と、一縷の望みをかけていたレジスタンスのメンバーとでは驚きが違う。

 しかし彼はすぐに気を取り直し、後ろに控えていた他のレジスタンスメンバーに合図を出す。

 後ろの方で魔力が練られる感覚。

 今度はまた別の場所で爆発音が起こった。そしてもう一度。一拍遅れ、私の背後から飛来した数多もの魔法の弾幕が城壁に穴を開け、巨大な爆発音を響かせた。

 交渉決裂。実力で政権を奪い取るその狼煙である。


「じゃあ、行ってくるから」

「お気を付けて!」


 力の籠もっている声援とは裏腹に、私の気持ちは非常に落ち着いていた。

 それもそのはずで、私の今日の目的はいち早くカルミール大統領の首を取ることで、それ以外のことはどうでもいい。

 この国で暮らす人達が安心して、笑って暮らせるように、レジスタンスのみんなには頑張って欲しいが、それでも一番の目的はマレーナの安全で、真っ直ぐ向かっているのがマレーナではなく大統領の執務室なだけ褒めて欲しいくらいだ。

 マレーナは旗振り役として、前線には立つが直接戦いはしない。それだけは安心できる。

 私達の起こした爆発音に反応したのか、庭園の向こうから兵士が数人向かって来ていた。


『魔法の気配はない』

「なら大丈夫だね」


 息を大きく吸い込む。


「武器を捨てて投降して! そしたら私からはなにもしないから!」


 返って来たのは「舐めるな!」だとか「ふざけるな!」だとかそんな言葉。

 諦めてダムネシアを抜く。


「倒れないようにお願いね」

『任された』


 上半身をグイッと下に倒し、ダムネシアを横に構える。そのまま倒れてしまいそうだが、前に倒れそうになる度に一歩。また一歩とダムネシアの力を借りて踏み出して行く。お陰で疾風のように庭園を駆け抜けることができた。

 姿勢も低くなっていて兵士達も狙いをつけられないようで、矢が私のずいぶん上を通り過ぎて行く。

 そして接近し、走る勢いをそのまま乗せてダムネシアを一閃。

 三人いた兵士の足をそのまま切り裂いた。


「……ごめんなさい」


 そのままこの場を立ち去る。

 この日に備えてダムネシアと練習していたのだ。ダムネシアに体を動かされる感覚ももう慣れたもので、互いに互いの気持ちをなんとなく読めるようになった。

 その甲斐あって常人ではなし得ないほどに体を動かせるのだ。

 今日初めて、ダムネシアが魔剣であるということを実感した。


『なにか失礼なことを考えてないか?』

「とんでもない! ダムネシアは頼りになるな、って思ってただけ」


 実際、頼りになるのは間違いない。ダムネシアの力を借りて、三対一でも一瞬で戦いを終わらせられたのだ。

 そこには感謝しかない。

 窓を割り、場内へ侵入する。

 まるで泥棒みたいだが馬鹿正直に正面に回ることもないだろう。

 途端、


「侵入者だ!」


 と、廊下の右手からこちらへ向かってくる兵士が二人。

 この少ない数は恐らく、どこかの部屋を警備していたとか巡回とか、音に反応して現れた兵士ではないだろう。

 持っている武器が槍であることからも、警備としての能力よりも見た目を重視されているのがわかる。

 それでも警備は警備。軍人なので油断はできない。

 しかし私がダムネシアを構えても兵士達は槍を突き出して駆けて来るだけだ。

 その突き出された槍を屈んで避け、更に一歩踏み出す。


「くっ!」


 二本の槍を躱し、兵士達は慌てて槍を引くが、それよりも私の方が早い。

 身体強化の魔法を発動させてダムネシアを振り抜き、右側の兵士を壁に叩きつける。返す刃でそのままもう一人も壁に叩きつける。

 うめき声を上げて兵士達は動かなくなった。


「なんだ、剣も持ってるじゃない」


 見れば、腰元には短めの剣が鞘に収まっている。

 私が想像している以上にここの警備は強くないのだろうか。

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