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泣き虫な私が勇者になる話  作者: グリゴリグリグリ
第5章:レジスタンスとしての私
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5-2

 当日。この国の行く末のように空はどんよりと曇っていた。

 レジスタンスによる革命がこれから行われ、どちらが勝のか。そして勝ったとして未来はどのように変わっていくのか。不透明な未来を想像させるような空である。

 私達のやることは天気に左右されることでもない。当日までに軍の兵士が取り締まりに来なかったので、戦場は十中八九、メロディヌス城になる。天井があるので、晴れていようが雨が降ろうが関係ない。


「ハーニー……。準備はできてる?」

「うん。昨日の内にばっちり」


 ダムネシアと話して気持ちにもなんとか整理がつき、剣に迷いはなくなった、と思いたい。

 これから戦うのは魔物なんかではなく、私と同じ人間だが、それに関してはこれまで仕事で犯罪者の取り締まりをしていたので怖じ気づくことはない。

 投降するなら良し。抵抗するなら残念だが、マレーナと知らない兵士とでは秤にかけるまでもない。

 ブーツのヒモを結び直し、これで完璧に準備完了だ。


「マレーナこそ、ここで待っているつもりはないんだよね?」

「もちろん。僕が始めたことなんだから、最後まで僕が責任を持たなくちゃ」


 そう言うマレーナは全身を鎧で包んでいる。しかしこの鎧は身を守るための防具ではない。

 全身に綺麗な紋様が彫られていて、羽根飾りや房飾りで派手に飾り付けられている。戦場ではいかにも目立つ恰好である。胸の部分にはハルメニア王家の紋章と、マレーナの家であるピープル家の紋章が。

 これで革命の正当性を知らしめているのだ。目立つような装飾もこのための物だ。

 正直、安全な場所で大人しく、そうでなくとも目立たないようにしてもらいたいのだが、こればっかりはマレーナも引くことはできない。

 ならばすぐそばで守ってあげたいのだが、


「じゃあ、手はず通りに頼んだよ?」

「うん……。でも、私はまだ納得してないからね」


 作戦は、正面からマレーナ率いる本隊がハルア国政府に対して話し合いの要求をする。それが拒否された場合、別の場所に潜んでいた分隊と同時に四方から攻め立てる。

 戦いに備えてレジスタンスのみんなも銘々に武器を持っているが、ほとんどは戦いも未経験の一般市民。冒険者である私が分隊の隊長に担ぎ上げられるのも仕方のないことだった。しかし配置が城の裏手。戦いが始まってマレーナと合流できるかも怪しい。

 ちなみにこの国へ来た時の護衛依頼を共に受けていたガイザールも分隊長である。


「多分、カルミール大統領は僕達の呼びかけに応えないと思う」

「つまり、戦いになるのはほぼ決定、ってことね」

「うん。それでカルミール大統領は……」

「クーアクーララのメンバー。私の家が襲われた事件に関わってた可能性が高い、でしょ?」

「……うん。大丈夫?」

「何度も聞いたからね。もう割り切ってるよ」


 との言葉は嘘ではない。正しく言えば割り切っているのではなく、最初から気にしていないのだ。

 記憶が失くなっていたからか、お父様やお母様、そしてメアリー。屋敷のみんなのことは悲しいと思っても、仇を討とうとは思わない。

 それでいいと思うし、だからと言って私の中でみんながいなくなるわけじゃない。

 私にとって重要なのは、カルミールがどんな人物なのか、ではなくこの戦いでマレーナを失わないで済むかどうか。それだけである。


「時間だ。行こう」


 誰かが言った。それを聞いてマレーナは顔を上げたが、その表情には迷いが見える。

 私よりもマレーナの方が踏ん切りがついていないではないか。


「大丈夫だよ。きっと上手くいく」


 具体的なことはなにも言っていないが、それでもマレーナの気持ちは少し軽くなったようだ。


「行こう! 今日ですべてが終わる。明日のためにも。この国の未来のためにも……。そのために僕達は準備してきたんだ!」

「「「おー!」」」


 この場にいた全員が拳を突き上げ、雄叫びを上げる。別の場所で待機している人達も同じ気持ちだろう。


「ホント……マレーナも成長したよ」


 さっきまでの迷いはもうない。

 後は私も、死力を尽くすだけである。

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