彼の好きな人
私は、帰ろうとする晴人君を呼び止め
誰もいない屋上に向かった
「話って何?杏奈ちゃん」
晴人君に好きな人を聞こうとしたが
恥ずかしいのと もし、聞いてしまったら
晴人君と接する時に 気まずくなるんじゃないかと
不安になってしまった
「あ、先輩の調子はどう?心配で…」
私は、話題を変える事にした
「さっき 先輩に廊下で ばったり会ったけど
元気そうだったよ」
「それなら良かった…あ、じゃあ、
私、もう帰るね!また明日!」
私は、その場から すぐに立ち去りたかった
でも、晴人君が 帰してくれなかった
手首を掴まれ 止められた
「待って 杏奈ちゃん 話は、まだ終わって
ないんじゃない?さっきから様子が変だよ?」
晴人君にそう言われ私は、聞く事にした
「あのね…実は、保健室での話
聞いちゃったんだよね…晴人君
好きな人いるの?」
私は、答えを聞くのが怖くなり
下を向き目を瞑った
晴人君は、黙ってしまった
長い沈黙の末 ようやく 晴人君は、口を開いた
「…いるよ 僕の好きな人は、目の前にいる
杏奈ちゃん 君だよ」
「嘘… 本当に?好きな人って私!?
こんな私のどこが好きなの?」
私は、驚きと喜びと信じられない気持ちで
いっぱいだった
「嘘じゃないよ 杏奈ちゃんを
好きになったのは、入学式の日の朝
杏奈ちゃんが 美代ちゃんと一緒に
歩いている時の 君の笑顔が 本当に
幸せそうで羨ましかった…
笑顔が眩しくて もっと その笑顔が見てみたい
って思ったんだ 僕には、無いその笑顔が
純粋に 欲しかった 杏奈ちゃんの隣にいたら
きっと 僕も 杏奈ちゃんみたいな素敵な
笑顔になれると思ったんだ
杏奈ちゃん 僕は、杏奈ちゃんの事が好きです」
改めて告白された私は、何故か涙が出た
「杏奈ちゃん それ、嬉し涙だって思ってもいい?
僕と 付き合ってくれますか?」
「はい…私で良ければ お願いします!」
晴人君は、私を優しく抱き締めてくれた
「先輩 僕達、付き合う事になりました
先輩の気持ちは、嬉しかったんですが
僕の好きな人は、杏奈ちゃんなので」
私と晴人君は、次の日のお昼に先輩を
中庭に呼び出し 報告をした
これは、晴人君と決めた事だ
隠し事をしたくないし、どうせ
分かる事だから 報告をしたのだ
先輩は、驚いた顔をしたが 溜息をつくと
優しい笑顔を浮かべた
「とんだおバカさん達ね わざわざ
ライバルの私に 報告をしに来るなんて
でも、そういうの嫌いじゃないわ
コソコソされるよりも 堂々とされた方が
お互い 気持ちがいいものね!
今だから言うけど 貴方達 最初から
好き同士だって気が付いていたわよ
バレバレよ…悔しいけど応援するわ
私がもし、いい人が見つかったら
応援してちょうだいね!」
私達は、それから仲良くなり、
晴人君、祐介君、美代ちゃん、私で
先輩と一緒に お昼ご飯を食べるようになった
私は、幸せを手に入れた
でも、1つ 気になる事がある…
それは、晴人君は、何故 悲しそうな笑顔を
浮かべるのか…
それがまだ、私には、分からなかった
美代ちゃんに聞いても 普通の笑顔だと答えた
祐介君も先輩も 特に気になってはいないようだ
『私だけなのかな?晴人君の笑顔が とても、
悲しそうに見えるのは…』




