彼との出会い
「杏奈、起きなさい朝よ」
お母さんは、カーテンを開けながら
私を起こしてくれた
朝日がとても、眩しくて私は、思わず目を閉じた
「もー、また寝ようとしてー今日は、
高校の入学式でしょ?もう直ぐで
美代ちゃんが 迎えに来ちゃうわよ」
そう今日は、高校の入学式
幼稚園からの幼馴染の美代ちゃんと
同じ高校に通う事にした
美代ちゃんは、頭も良くて可愛くて
しっかり者だからみんなから凄く 頼られている
美代ちゃんは、私の事を心配してくれて
私の選んだ高校に変えてくれたらしい
美代ちゃんは、先生からの信頼も厚く
都内で1番、偏差値が高い高校に入学するはず
だったのに私なんかの為に 普通の高校に
入学する事にしたみたい
「高校を卒業したら美代ちゃんと会う確率も
減っちゃうって考えたら寂しいな」
私が独り言を言うとお母さんは、頷いた
「確かに社会人になったら
別々になるからね 高校までよ
一緒に居られるのは だから大切に
高校生活を満喫しなさい」
お母さんとのんびり話している間に
美代ちゃんが迎えに来てしまった
「ごめんね!今、着替えてるから
もう少し待っててね!」
お母さんが私の代わりに美代ちゃんに
謝ってくれた
「いいえ 大丈夫です 想定の範囲内なので
入学式に間に合うように早めに来ました」
美代ちゃんに私が遅れる事を想定されるとは
情けないけど さすが幼馴染だなと痛感した
階段から急いで降りて洗面所に駆け込んだ
歯を磨いて冷たい水で顔を洗い髪を整えた
冷たい水で顔を洗ったお陰で少しは目が覚めた
「杏奈 朝ご飯冷蔵庫に入れておくから
お昼に食べなさい 食べる時間ないでしょ?」
「ありがとう お母さん 帰って来たら食べるね」
「入学式が終わったらお父さんと買い物してから
帰るから少し、遅くなるわ 夜ご飯には、
間に合うように帰って来るけど お姉ちゃんも
入学式が終わったら出掛けるって言ってたから
お昼は可哀想だけど1人で食べてね」
私は、どうせなら美代ちゃんとお昼を
私の家で一緒に食べようと誘ったけど
家族と食べるからと言って断られた
「そんな事より 早くしないと入学式が
始まっちゃうわよ!お母さん達も後で
美代ちゃんのご両親と一緒に行くから
学校で会いましょう!いってらっしゃい!」
私は、お母さんに背中を押され
美代ちゃんと一緒に外に飛び出した
「お母さん達に制服ゆっくり見せて
あげられなかったなぁー」
私は、しょんぼりしながら歩いた
「そんなの帰ってからでもゆっくり見せて
あげたらいいじゃない寝坊するから悪いのよ」
美代ちゃんに正論を言われガックリと肩を落とした
「そういえば 杏奈 ちゃんと上靴入れる袋
忘れずに持って来た?」
「あ!忘れた…でも、今 取りに行く時間もないし」
「もー、昨日のうちに入れておきなよって
何回も電話で言ったじゃん 仕方ない私の予備で
持って来た袋をあげ…あれ?嘘、無い!」
「ええ!?雨降るんじゃない?」
「杏奈だけには言われたくない…
私、確かに昨日の夜 杏奈が袋忘れると思って
予備の袋入れておいたはずなのに…」
「お母さん達も絶対、袋なんて持って来るはず
ないよね…どうしよう」
私達が困っていると後ろから声を掛けられた
「あの…すみません何か困っているんですか?」
声を掛けて来たのは、私達と同じ
紺のラインが入った水色のネクタイをした
新入生の男の子だった
『凄く優しそうな男の子だな』
美代ちゃんが人見知りをしている私に代わり
その男の子に伝えてくれた
「実は、この子上靴を入れる袋を忘れて…
私も予備の袋忘れちゃって だからこの子に
袋を貸せないから困っているの」
その男の子は、自分の通学用カバンから
三角形に綺麗に折り畳まれたレジ袋を出してくれた
「これ、良かったら使って下さい
僕のは、別にあるんで…」
私達がお礼を言うと男の子は、
照れ臭そうに首を横に振った
「困った時は、お互い様ですから」
男の子は、笑顔を浮かべたけど
どこか悲しそうだった
『言葉は丁寧で凄く優しいし、雰囲気も
とても、優しそうな感じがするのに…
どうして悲しそうに笑うんだろう』
私は、その時から男の子が気になっていった
私達3人は、無事に遅れず学校に着いた
校内に入ると掲示板に人集りが出来ていた
私達も人集りに混ざり見てみると
クラス割が書かれていた 3クラスに分かれている
私達は、同じクラスだった
男の子の友達も同じクラスらしい
教室に入ると既にクラスの子達がいた
「晴人ごめんな 父さんが急に仕事になったって
伝え忘れてたよ 朝、父さんが送ってくれたんだ
入学式に出られない代わりにって車の中で
何回も謝られたよ まぁ、昼までには、
帰れるらしい だから一緒に飯食おうぜ!」
早速、話し掛けて来た男の子がいた
「祐介 同じクラスで嬉しいよ!
うん お言葉に甘えてご馳走になるよ」
男同士の熱い抱擁を交わした
私と美代ちゃんが見ていると
担任の女の先生が教室に入って来た
「はーい 皆さん席に着いて 今日から
このクラスを担当する事になった
五十嵐 まりなです!宜しくね!」
見た目は、30代前半 凄く優しそうだ
「まだ、入学式の準備があるから教頭先生が
呼びに来るまで短く自己紹介しましょう」
自己紹介が始まり、美代ちゃんの番になった
「はじめまして 石井 美代です 宜しくお願いします」
次は、美代ちゃんの隣の席の祐介君だ
「はじめまして 室井祐介です 宜しく」
その後ろが 晴人君だ
「はじめまして 白石 晴人です 宜しくお願いします」
晴人君の隣が私なんだけど人見知りの私が
上手く自己紹介出来るかとても、不安だ
美代ちゃんが 「頑張れ」と言ってくれる
祐介君も晴人君も心配そうに見つめる
先生もクラスの子達も私の方を見ている
気がつくと私は、保健室のベットで寝ていた
「あ!そうだ 私、自己紹介の時に
恥ずかし過ぎて気を失ったんだ…」
自分の酷い人見知りが恥ずかしかった
時計を見るともう、入学式が始まっている時間だった
保健室の先生が 体育館の前まで送ってくれた
私は、保健室の先生にお礼を言うと
深く深呼吸をしてから体育館の中に入った