ホットケーキ
ぽっかり空いた場所 暗闇
外から垂らされた液体は丸く流れる
ゆっくりと熱を帯びるそれを
私はずっと見つめていた
曖昧な形は 次第にはっきりと
何も無かった空間には香りが
だけど私は触れられなくて
ただ見つめるだけ
もうとっくに固まっているそれを
火から上げることができないまま
月日は過ぎる
ようやく勇気を持って それを取り上げた頃
それはすっかり焦げてしまっていた
表も裏も 真っ黒で無様
私はそれをかじり 苦味を飲み込んだ
苦味は全て 私の中に
再び空いたその場所で
あの香りだけが残っていた
これはホットケーキの話ではありません。
恋い焦がれ、焦げてしまったのです。
そういう恋も、きっとありますよね。