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片恋メイト  作者: 泉あすか
1/1

そんな、恋の始まり

のろのろと更新していきます。

誤字脱字内容に気をつけますがあったらすみません(><)!






人はなんて簡単で単純で

そしてなんて奇怪なんだろう。



「あんたねぇ、ホントバカなの?」

パタパタと少女についた土埃を叩きながら短髪、学ランの少年は言った。

少し釣り上がった目をさらに釣り上げて、眉間にシワを寄せて不愉快そうにパタパタと叩く。

イライラが伝わってきて少し怯んだ。

だけどパタパタ叩く手は優しく思えて次の瞬間に安堵する。

「別に馬鹿じゃないです。てゆーかなんでここに。」

なんで今この瞬間にいるんですか。

バツが悪くて、それを隠すように不機嫌そうに少女は聞いた。

「遠くから見えたからよ。お姫様がイジメられてるところが」

ぱちんっとウインクする。


そう、今、イジメを受けてる真っ最中だ。


「ちょ、ちょっと無視しないでよ!」


おねぇ言葉な少年の登場で怯んでいた少女が声を上げる。

それはクラスで一番大きなグループのリーダー女子。

その後ろに控えるのはそのグループに属する五人の女子達だ。

「別に無視してたわけじゃないわよ。この子が優先だっただけ。別にワタシあんたに興味なんてないもの。」

ツン、と言い放つ。

ほんとに見た目と話す言葉にギャップがある人だなぁと思う。

もう慣れたそれをしみじみと思っていたらまた女子達が怒り出す。

なんなのよとかさいてーだとかキモイだとか。

数では上回るからなのか仮にも男が手を出してこないだろうなんて過信からか、ただ何も考えてないだけなのかそれはもう色々と飛び交った。

「ギャーギャーうるさいわねぇ」

イライラを募らせてポツリ。

ギロりと睨むと少し声がやんだ。

「大体なんでこんな状況なのよ?」

その目が少し柔らかくなって、と言うか呆れたようなそれに変わって、少女へと向く。

「フラれたんだって」

「は?」

「兄貴に。」

少女の兄はかっこいい。誰から見てもイケメンで勉強もできて運動もできる。

そして優しい。

更に目の前にいるおねぇ中学生と友達であるのもポイントをあげているという謎の加算もついてとってもモテた。

「あぁ、なるほど。まぁ妥当ね」

「そうだね」

「それでそれあんたと何があるの?」

「...多分ない」

「はぁ?」

ったく、とらちがあかないとばかりに少年は彼女らへと振り返った。

「誰がふられたのか知らないけど、まぁここにいる時点で誰がふられても仕方が無いわよね?そんでそれと、この子となんの関係があってこんなことになってるの?」

「う、うるさいわよ!大体あんたこそ関係ないでしょ!!」

そーよそーよ!

それは煽りか声援か。

「友達の妹が理不尽にイジメられてちゃぁ助けるのが普通でしょ?別にワタシに関係ないとかそーゆー問題じゃないの。わかる?」

頭一個半分は大きい背を丸めて少女らに強い視線を合わせた。

ぐっ、と苛立ったように彼女らは後ずさる。

少年はそれにふん、と馬鹿にしたように笑った。

「オカマの癖に!」

「はぁ?」

「アンタなんてただのキモいオカマじゃん!!私の方が優真君のとなりに居るのに相応しいに決まってるもん!」

言葉尻が震えだす。怒りか涙か。どちらにせよ内に堪えられない何かを溢れさしてヒステリックみたいに叫んだ。

それに言葉を返したのは少女。

「キモくないよ。」

淡々とした声で語る。

「友達だか子分だかわからない人たちを連れて、八つ当たりで他の人を傷つけようなんて考えてる貴方達よりよっぽどカッコイイよ。」

きり、と強い瞳に映るのは怒りか。

「なっ、なによ!」

「てゆーか。」

リーダー少女の言葉にならない悔しげな声を遮ったのは少年。

「ワタシは好きな事を好きなように表現してるの。アンタ達に文句言われる筋合いはないわ。」

にぃ、とイタズラを思いついた子供みたいに口端を釣り上げる。

「まぁあんたの大好きで大好きで仕方がない優真はそれをいいって言ってくれるけどね。」

ぱちんっとひとつウインクした。

「ワタシもこんなワタシが好きよ?」

あんたはどうなの。

音にならない間が、そう問うているみたいに思えた。

それはそこにいた全員が感じ取ったのだろう。

行こう、と誰かの小さな声が聞こえて少女らは一斉に駆け出した。

「ばーか!一昨日きやがれー!ってね!」

「それはかっこ悪い。」

「なんだってー??」

どちらからともなく笑う。

笑いあった。



「あんな言葉にいい返せる力があるんなら自分の為に使いなさい」

ポン、と少年が少女の髪を撫ぜる。

「でも、嬉しかったわ。ありがと。」

少女の目が少しの驚きに開かれて、ついで喜びに細まった。

時々家に遊びに来ているというだけだったその人と少し、近づいた気がした。

それは不思議な感覚で、でも少し嬉しい気持になる。

「かっこいいじゃない、アンタ」

気に入ったわ

そう言って少年はまた笑った。


それに


目が開く。

心臓がなった。

喉が渇いた。


人はとても奇怪だ。


こんな事でこんな何でもないことで、

恋に落ちる




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