刺雷の騎士7
次の日。
「くそ、身体がうごかねぇ」
ユウトは昨日の試合で魔力を使ってしまったから魔力欠乏症になっていた。
魔力欠乏症とは、魔力を使い切ってしまって出る症状だ。
初期段階は身体がだるい、手足がしびれるなどでひどくなっていくと今のユウトの様に動けなくなるのだ。
トントン。
小屋のドアが叩かれた。
(ウィルか?それともおっちゃんか?)
そうユウトは考えたがとりあえず誰かが来たのは確かなので、
「誰かは知らないけど、今身体が動かないから開けて入ってきてくれ」
そうユウト言うとドアが開いて入ってきた。
「あら、なんて汚らしく狭い部屋ですこと」
エレナが入ってきた途端そんなこと言ってきた。
ユウトがいろんな人の助けを借りてやっと作った小屋を何も知らない奴にいきなり汚いなどと悪く言われるとさすがにユウトもキレた。
「汚いと思うんだったら出て行けよ!!」
「えっ?」
「喧嘩売りに来たんだったら帰ってくれ」
「なっ!?わたくしを誰だと思っているのかしら。この王国でも伝統のあるミルレスト家の娘ですわよ」
「家柄とか知らねえよ。いいから出て行ってくれ」
そうユウトが言うとエレナは涙目になっていた。
「ひどいですわ」
そう言いエレナはどこかへ走って行ってしまった。
「なんなんだよ」
お付きのメイドがこちらにお辞儀をしてエレナの後を追って行った。
それを見た後ユウトの意識はまた闇の中に落ちて行った。
また次の日。
「お嬢様。昨日は流石にお嬢様が悪いと思います。私が調べた情報によりますと、あの小屋は料理長のマルターニィさんや、庭師のタルクスさんなどといった人が協力して建てた小屋ですから彼が大切にしているのは当たり前ですよ」
ミリルはこれで何回目かわからないくらいこれを繰り返している。
「ミリル、わかっていますわ。だからこれを作ってきたのですの」
エレナの手にはカップケーキをの入った箱を持っていた。
「さあ、いきますわよ」
そう言いエレナはドアを叩いた。
トントン。
「……」
「返事がありませんわね」
「もしかしたら寝ているのか、留守かもしれませんよ」
「とりあえずもう一度叩いてみますわ」
トントン。
「……」
やっぱり返事がなかった。
「開けますわ」
「そうですね。寝てたり、留守だったりしたら置き手紙をしていきましょう」
エレナはドアを開けた。
ドアの向こうでは、昨日寝ていた藁の山から移動していて、倒れたように床でうつ伏せに寝ていた。
カシャが心配そうにユウトの頭を猫パンチしていた。
それでもユウトは起きなかった。
カシャはエレナを見つめて何かを訴えていた。
「にゃー」
エレナも異変に気がついてユウトの頬を叩いた。
「ちょっと、あなた。大丈夫ですの?」
「う…あ…」
ユウトがかすれた声を出す。
「ミリル!人を呼んできて」
「はい!」
ユウトは軽い脱水症状だった。
「ほんと、助かった」
「感謝してくださってもいいのですよ」
「本当にありがとう」
ユウトはエレナに頭を下げる。
「っていうか。昨日はすまん」
「えっ?」
「なんつーか、そのいきなり怒りだしたりしてさあ」
「いえ。私こそ、この小屋のことを悪く言って」
「いや、いいんだよ。お嬢様にしたらこんな小屋汚いに決まってるし」
「いえ。そんなことは。あっ。そうですわ。これ作ってきましたの」
カップケーキの入った箱を渡した。
ユウトはそれを受け取り、開けた。
可愛らしいチョコやフルーツのカップケーキが入っていた。
「きれいだな。食べえてもいいか?」
「ええ。もちろんですわ」
ユウトはチョコのカップケーキをひとつ取り食べた。
「美味しいぞ。これ」
「当然ですわ。わたくしが作ったものですもの」
「これ、君が作ったのか。すげえな」
「伝統のあるミルレスト家の娘ですもの。料理くらいできますわ」
「お嬢様はある方の為に練習したのですよ」
隣でエレナのメイドのミリルが言う。
「へえ」
ユウトはチョコのカップケーキを食べながら言う。
「ミリル!!」
エレナは慌ててミリルの口を手でふさぐ。
「本当にうまいな」
そうユウトが言うとエレナは笑顔になる。
「そうやって、笑顔でいるほうが可愛いと思うぞ」
ユウトがなにげないように言うとエレナは顔赤くなる。
「な、何をおっしゃいますの!?」
「いや、君が俺を睨んでいるところしか見ていなかったからさあ、やっぱり女の子は笑顔が1番だと思うぞ」
「そ、そんなことより、あなたがわたくしのマナ障壁を切り裂いた方法を教えてくださいませんこと!」
(こんな美人なのに可愛いとか言われたことないのか?)
などとユウトは思うが口には出さず、エレナの聞いてきたこと答えることにした。
「あれは魔力をこの剣の先にだけに集めて突き刺すってことをしたんだ」
ユウトがそう言うとエレナは驚いた。
「そんなことできますの?」
「案外簡単だぜ」
「そうですの」
エレナは教えてほしそうな顔でユウトを見る。
(やり方教えてくださいって言わないのか)
「……」
ユウトは頬をかいて、
「よかったら方法を教えようか」
ユウトがそう言うとエレナは顔を輝かせたがすぐにそっぽを向いた。
「いいですわ。あなたに貸しを作りたくはありませんの」
(軽くめんどくさいけど、そんな顔見たら教えるしかないだろ)
「じゃあ、このカップケーキのお礼ということで教えるならどうだ?」
エレナはしばらく考えるふりをした。
そしてユウトをまっすぐ見る。
「交渉成立だな」
「よかったですね、お嬢様」
ミリルが笑顔でエレナに言う。
「べ、別に」
そう言っているがエレナの顔はうれしそうだった。
(素直じゃないな)
「実際にやってみないとできないから君の授業が終わったら、演習場で教えるっていうことでいいか?」
「ええ。いいですわ」
ユウトはエレナに手を差し出した。
「なんですの?」
「これからよろしくっていう握手だ。俺のことはユウトって呼んでくれ。君のこともエレナって呼ぶから」
「ますます、彼に似ていますわ」
そうユウトに聞こえないように小さな声で言う。
「なんか言ったか?」
「い、いえ。せいぜいわたくしにわかりやすいようにお教えになってよ」
またエレナがそっぽを向いた。
「善処するよ」
そう言いユウトが手をひっこめるとエレナは少し残念そうな顔をした。
「どうした?」
「い、いえ」
「お嬢様はユウトさんの手を握りたかったんですよ」
ミリルがそう言うとエレナは顔を赤くしてミリルのポカポカ殴りだした。
「ミーリールー!!」
エレナの叫び声が響いた。




