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閃光の夢 10

エレナは動けなかったが戦闘音が聞こえなくなったので、ゆっくりと身体を動かしてユウトの元に歩いていった。

ユウトは悠然とした様子で立っていた。

「ユウトさん」

エレナは動かない身体に鞭を打ちユウトに向かって走り、抱きついた。

「ユウトさん、ユウトさん」

涙を眼に溜めながらユウトの名前を呼ぶ。

「どうしたんだよ」

「どうしたじゃないですわ。ユウトさんはまた無茶を」

「でも、いいじゃないか。そのおかげでエレナは結婚しなくてもよくなったんだから」

「そうですけど、あまり無茶をされて倒れられても困りますわ。この胸の疼きをなんとかしてもらうまでは」

エレナは頬を染めて胸を押さえた。

「疼き?」

「ええ。ユウトさんにキスをしてから胸がきゅんとして、更に何かに吸われている感じがしますの」

上目づかいでユウトを見る。

「吸われる?」

ユウトは疑問に思ったが、答えはすぐにわかった。

「これの所為か」

エレナに左手の甲の紋章を見せた。

そこには水色の線だけでなく、黄色の線が新たに引かれていた。

2本の線は繋がっていない為、まだ何を示しているのかユウトにはわからない。

「これはなんですの?」

「さあ?」

「自分の身体のことなのに他人のように言うなんて、どうかしていますわ」

「そうだな。でも、これは絆を示していている気がするんだ」

「絆ですの」

「ああ」

「ところでユウトさん。その水色は誰との絆を示しているのですの?」

「えーと、―」

エレナがジト目で慌てているユウトを見る。

正直に答えていいのか考えていると、

「ユウト」

フレイヤ達がこちらに走って来ているのに気がついた。

「みんな」

ユウトはエレナから離れてフレイヤ達の方へ歩いていく。

「はぐらかしましたわ」

エレナは頬を膨らませていたが、すぐに元の表情に戻して、ユウトの後を追った。

「ユウ君、やりましたね」

「うむ。かっこよかったぞ」

「ほんと、登場のタイミングがばっちり過ぎて驚いちゃうわ」

それぞれ試合の感想を興奮した様子で言う。

「ユウトさん。お嬢様を助けて下さりありがとうございます」

ミリルは丁寧に頭を下げた。

「いや、そんな丁寧に頭下げなくていいよ。俺はただ助けを求めてきた仲間を助けただけだから」

フレイヤは1度咳をして注意を引いた。

「それは置いておいて、ユウト。あ、あのき、キスはなんなのよ」

フレイヤは顔を赤くして訊いたことでエレナは顔を真っ赤にして湯気が出そうになっていて、リュッカ達はユウトをジト目で見ていた。

「何なのって訊かれてもな、俺からしたわけでないし」

「そうですよね。ユウ君はあくまで被害者でエレナが勝手にしたわけですもの」

「被害者までは言い過ぎだろ。というか、キスぐらいで動揺し過ぎ」

「ユウト君、私としたときはかなり驚いていたのに、今じゃあ別に平気みたいになっちゃって」

レイシアは頬を膨らませる。

ユウトはレイシアの頬を突いて、膨らみを解かせた。

「しょうがないだろ。慣れたんだから」

「「「「「「慣れた!?」」」」」」

フレイヤ達は全員驚いたような表情をする。

「ど、どういうことだ。ゆ、ユウト」

「どういうことと言われても、お前らが不意打ちにキスをするとか、治療と言ってするとか、魔女に煽られてとかしてきたからだろ」

「ま、待って。ユウト。あたし達全員とキスをしたことがあるわけ?」

「ミリルはしていないけど、他は全員にされたな」

ユウトがそう言うとフレイヤ達は固まってしまった。ミリルを除いて、

「これは、ここでユウトさんにキスをして皆さんにダメージを与えないと」

1人目を輝かせながらフレイヤ達をいじめる計画を立てていた。

「ユウトさん」

ミリルはユウトの名前を呼んでキスをした。

ユウトはかわすことができずなされるがままだった。

「「「「「!?」」」」」

フレイヤ達は更に表情を硬くした。

「み、ミリル?」

「はい、なんでしょうか。お嬢様?」

「ど、どうして、ユウトさんにキスしているのですの?」

「それは、お嬢様と共有するためですよ。お嬢様の旦那様と私の旦那様が一緒って何かいいじゃないですか? あとお嬢様昔の約束は憶えていますか?」

「憶えていますわ。2人で一緒に幸せになるですわね?」

「はい。そうです。ユウトさんを共有すれば2人で幸せになれますよ。お嬢様」

満面の笑みでミリルは言う。

「エレナ、このメイド変わっているわよ」

フレイヤは引きながら言う。

「うむ」

スティアも頷いていた。

「ミリルは確かにわたくしをいじめる趣味はありますけど、メイドとしてちゃんとしていますわ」

エレナはミリルを庇うように言う。

レイシアとリュッカはユウトに近づいて、

「ユウ君助けられましたね」

「ミリルがキスをしなかったら、ユウト君があそこで責められていたわよ」

「ユウ君、浮気は駄目です」

「そうよ。愛人の1人や2人くらいなら許すけど、全員は駄目よ」

「浮気とか、愛人って、お前ら」

ユウトは頭を抱えた。

「エレナ。これ返しておくよ」

ユウトはエレナにレイピアを返した。

「ふははは」

倒れていたアルヴィンは起き上がり叫ぶ。

「お前は甘いんだよ!!」

怒りに狂ったように言うが、ユウトは冷静に

「下がっていてくれ」

低い声でフレイヤ達に言う。

フレイヤ達はユウトの声に驚いていたが、素直に後ろに下がった。

「馬鹿め!! お前は終わりだああああ!!」

砕ける音と共に空が落ちてくる。

「結界が壊れたか」

ユウトの前に黒ずくめのアサシンが4人現れる。

「さあ、お前達、高い金を払ったんだからな。あの黒髪のガキを殺せええええ!!」

アルヴィンの声と共にアサシン達は動くがもうすでに遅い。

ユウトの左手には黒い銃の引き金がついた剣が握られていて、もう振り下ろすだけの状態だった。

「魔女」

『はいはい』

「やるぞ」

『今回は対価はいらないわ』

「対価を求めないなんてどうした?」

『別にいいじゃない』

「そうかよ」

魔女との会話を終えたユウトの左手からどこまでも深く吸い込まれてしまいそうな黒い闇が現れ、魔銃剣に集まる。

「喰らえ」

ユウトは冷めた声と共に振り下した。

魔銃剣から暗く、生命を喰らい、光を拒絶し、全てに絶望した、全てを否定する深淵を放出し、演習場もろともアサシンとアルヴィンを飲み込む。

「―!!」

誰も声を出すことも出すことができず、蹂躙されるのを待つしかなかった。


深淵が消えたあと残ったのはぼろぼろになったアルヴィンとアサシン、そして黒い汚れた泥だけだった。

「ほんとは殺してやりたいけど、あいつらの前だからな、これくらいで済ませてやるよ」

ユウトは鞘に銃剣をしまい、振り返りフレイヤ達の元に歩いていく。

「ゆ、ユウト。あんた、あれは」

「今話さないと駄目か? 疲れているんだけど」

ユウトの額には汗が滲み出て、左腕は小刻みに震えていた。

「いいけど―」

「じゃあ、ごめんな」

ユウトはフレイヤ達を置いて自分の部屋に向かった。


ユウトは自分の部屋に着くと、カギを閉めて、中のドアを閉めたあとユウトはドアにもたれながら崩れるように座った。

「対価いらないとかじゃないよな。この魔銃剣、どんだけ体力使わせるんだよ」

天を仰ぐように手を伸ばす。

「ユウト」

スティアの声と共にユウトがもたれているドアが叩かれる。

「どうした? 俺は疲れているんだけど」

「話がしたい。ここを開けてくれ!」

「話か…」

疲労の色が出ている声でユウトは返事をする。

「体調が悪いのか?」

「いや、ただ疲れただけだから。ちょっと待っていてくれ。動くから」

ユウトはゆっくりと身体を起こしてドアの前から退いた。

「入ってくれ」

ユウトがそう言うと、ドアがすぐに開き、スティア達が入ってきた。

「フレイヤ達もいたのか」

「何よ。文句あるの?」

「いや、声が聞こえなかったから」

「スティアが私に任せろって言ったから、任せたの」

「だが、私のおかげでユウトがドアを開けたではないか」

スティアは自慢するように言う。

「で、話ってなんだ?」

ユウトが訊くと、冗談めいた雰囲気がなくなり、フレイヤ達はユウトの左腕を見つめた。

「ユウト君。さっきのは何なの?」

「さっきの?」

「誤魔化さないで」

レイシアの真剣な声を聞いてユウトは息を吐く。

「罪深き世界カルマ・フィール

「「「「「え?」」」」」

「さっきの技の名前」

「魔法なのですの?」

「いや、この魔装具の力だけだ」

ユウトはフレイヤ達に黒い銃剣を見せた。

「ユウ君。それはあの旅行鞄に入っていた魔装具ですよね?」

「ああ」

「ということは、魔女から貰ったものですか」

「ああ…」

少し寝むそうな声でユウトは答える。

「どうしたのよ。ユウト」

「どうしたって、眠いんだよ」

「そうよね」

「今日はもういいか?」

ユウトが訊くと、少し不満そうだったがフレイヤ達はユウトの部屋から出て行った。



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