氷の流星 11
「スティア!!」
ユウトが勢いよく起き上がった。
「ユウト、大丈夫なのか?」
「ああ。飛龍は?」
「あれだ」
スティアがバラバラに砕けた飛龍を指差した。
「倒したのか」
「ああ。一応な」
「すごいな。というかまずいな」
ユウトとスティアの周りは先程よりも火の強さが増し、炎がユウト達を包むのも時間の問題だ。
「痛ッ!!」
ユウトは左手の甲に刻まれるような痛みを感じた。
そこには水色で何かの紋章が浮き上がっていた。
でもその紋章は途中で途切れて未完成だった。
「何だこれ。というか腕が上がる?」
ユウトは状況が理解できていなかったが、左手を天にかざして紋章を見ていた。
すると、紋章が光りだし、ユウトの手に水色がベースとなりそこに黒い線が入っているユウトの背と同じくらいの大きさの大弓が現れた。
「これは?」
「私の弓と装飾が似ているが大きさが違う弓だな」
「ああ。でも、これが纏っている魔力はスティアの魔力に似ている」
ユウトは自分でそう言って気が付いた。
「スティア、1つ賭けになるけどいいか?」
「うむ。君を信じている」
「わかった」
ユウトは制服の上着をスティアに被せた。
「ユウト?」
「これで少しでもましになるだろ」
ユウトはその大弓を真上に向けて弦を引いた。
すると、氷でできた太矢が現れた。
ユウトは限界まで弦を引き、放した。
太矢は雲を切り裂き、天に向かっていく。
その姿は地に堕ちた星が再び空へと戻っていくかのようだった。
青き光を放っていた太矢は砕け、雪の結晶となり降り注ぐ。
その雪の結晶は炎に触れると炎ごと木を凍らせる。
「スティア。大丈夫か?」
「ああ」
「よかった。怪我がなくて」
「君は土や煤がついてぼろぼろだな」
「別に俺はいいんだよ。怪我なんかすぐに治るから。それに引き換えスティアは普通の人間の女の子なんだから傷がついたりしたら大変だろ」
「それだと、君が普通の人間じゃないみたいな言い方だ」
スティアは眉をひそめた。
「そうだな。俺は普通の人間じゃあないから」
「どういうことなのだ?」
「さっきの飛龍が来た時、俺は笑っていたんだよ。その状況を楽しむかのようにな」
「…」
「昔、母さんが自分達は戦闘民族だって、話してくれたことがあって、な。その時は、何かの冗談かと思っていたけど、確信したよ。俺は逆境になればなるほど血が熱くなって、戦いを楽しむ人間だ、って。あと、な。あいつらが言っていた病は数年前に流行った黒病だよ」
3年ほど前、アメルスティアでは黒病という病が流行った。
その病は、肌に黒い模様が浮き上がり、血を吐いて死ぬという病だ。
原因は不衛生による菌の繁殖し鼠によって運ばれたのだが、東方人の魔法によって作り出された病と噂され、東方人は迫害を受けた。
「俺もその時に迫害を受けて、首を刎ねられた。でも、俺はこうして生きている、しかも傷1つないんだぜ。そんな奴を人間と思うか?」
ユウトは自嘲気味に言う。
「…」
スティアは俯いたまま答えない。
「やっぱり、な…」
ユウトはスティアの背に向けて、
「あいつらを捕まえにいこうか…」
ユウトは来た道に向かって、歩み始める。
「ユウト!! 待て!!」
スティアが大きな声でユウトを止める。
ユウトは歩みを止めたが振り向かない。
「君は人間だ。誰が何と言おうとも君はユウトという人間だ」
「…」
「私が責任を持つから。だから君は―」
「…ありがとう」
ユウトは手で顔を擦り、スティアを見た。
「じゃあ、あらためて、あいつらを捕まえに行こうか」
「うむ」




