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氷の流星 10

スティアが安堵したような声を出すが、ユウトは狼が逃げた方を見つめた。

「ユウト?」

ユウトは人差し指を口に当てて、静かにするように合図した。

すると、何かが羽ばたいている音が聞こえた。

(鳥じゃあないよな。となると、龍か)

ユウトは唇を噛んだ。

今の状態では、龍を狩ることができない。

(剣を解放する…。そうすれば龍くらい狩れるけど、彼女が)

ユウトは魔剣を鞘に入れ、腰に差した。

空いた右手を開いたり閉じたりして動きを確認した。

ドクン

心臓の鼓動が強くなり、血が熱くなる。

周りは炎に囲まれており、そして飛龍までくる。そんな逆境なのだがユウトの口は笑っていた。

(楽しい? どうしてこんなに気分が高揚とする?)

ユウトはそんな疑問を抱いたが、すぐに感情に呑まれた。

緑色の鱗を持った飛龍がユウトとスティアに向かって飛んできた。

「スティア。あれを狩るのを手伝え」

ユウトはスティアの方を向き言う。

「う、うむ。わかった。私は何をすればいい?」

スティアはいつもと少し口調と瞳の色が変わったユウトに戸惑ったが、飛龍を狩ることに集中した。

「スティア、お前はあれの翼を撃て、落ちたところで、俺があいつの頭を割る」

「わかった。だが、ユウト、君は大丈夫なのか?」

「ああ。問題がない。調子が良すぎるくらいだ」

笑いながら言うユウトを見て、スティアは少し恐怖を覚えた。

「さあ。こいよ」

飛龍はユウトとスティアを殺すために翼を羽ばたかせて竜巻を起こした。

その竜巻は火を取りこみ、燃えながらユウトを襲うが、ユウトはそれを、腕を振るだけで消し飛ばす。

「氷結のフリーズアロー

スティアが飛龍の翼を氷の矢で撃つが、まわりが炎の為、届く前に溶けてしまう。

ユウトは気にしないで、溜めて、跳躍した。

飛龍の上に行き飛龍の頭に拳を叩きこんだ。

そこから右手で連打を加えた。

「す、すごい。龍種と素手で対等以上の戦いをしている」

スティアは茫然とユウトを見ていた。

飛龍は地面に落ちたが、すぐに体勢を立て直した。

「GYAAAAA」

飛龍が吠える。

それを無視してユウトは追撃を加えようとした。

だが、ユウトの身体が揺れ、倒れた。

「ユウト!!」

スティアはユウトに近づいた。

ユウトは汗を流し、苦しそうな表情をしていた。

スティアがユウトの左腕の袖を捲ると、肌が、矢が掠ったところを中心に黒く変色していた。

毒が回っている。ユウトが矢に掠ってからもう十数分経つ。

魔獣でも数分で死ぬ毒を食らいながら、それだけの時間戦っていた。

普通の人間では、不可能なことだ。

身体が限界に来ても、ユウトは立ち上がろうとしていた。

「ユウト。もういい、立つな。私があいつをやるから」

「あ…あああ」

スティアの言葉は朦朧としているユウトの耳に入らない。

ユウトは右手で地面を押して立とうとするがまた地面に倒れる。

でも、飛龍は待ってくれない。

どんどん近づいてくる。

『力が欲しい?』

「え?」

どこからか少女の声が聞こえる。

スティアは声の主を探す為に周りを見た。

声の主は見つからなかった。

それどころか、全てが止まっていた。

飛龍も炎も動かなかった。

『ねぇ、力が欲しくない?』

また声が聞こえる。

「力…」

『それを手に入れれば、あの龍を倒せるわよ』

「欲しいのだが、力には代価がいるはずだ」

『その弓の本来の力を引き出すだけよ。だから、代価なんていらないわ』

「君は誰だ。ユウトの剣の意思なのか?」

『私はそんな陳腐な存在じゃあないわ』

「じゃあ、君は誰なのだ?」

『あなたや世界の敵ね。私のことは魔女でいいわ』

「魔女。どうしてこのようなことを」

『彼を今、フェーズ3に移行させるわけにはいかないからよ』

「フェーズ3?」

『あなたには関係ないわ。今は力を求めるか、求めないのか答えるのがあなたの役割よ』

「力があれば、あれが倒せるのだな?」

スティアは飛龍を見た。

『ええ。そう言っているでしょ。それはあの女の弓なんだから』

「だったら、私の答えは決まっている。あれを倒せる力が欲しい」

『そう。じゃあ、今から言うことをしなさい』

「ああ。わかった」

魔女はスティアに方法を教えた。

それを聞いたスティアは顔を真っ赤にして口を魚のようにぱくぱくしていた。

「な、なんて破廉恥な」

『この程度で破廉恥ねぇ』

魔女の呆れたような声で言う。

『早くしないと、世界が動き始めるわよ。私の魔力も無限じゃないのよ』

「わかっている」

スティアは、ユウトに自分の弓を触れさせ、ユウトの唇に口づけをした。

すると、スティアの弓が光り出し、内側から亀裂ができ、中から新しい水色の弓が出てきた。

「こ、これは?」

『それくらいは、自分で調べなさい。それよりも、時間を元に戻すわよ』

指を鳴らす音が聞こえたと思ったら、全てが動き始めた。

「GYAAAAAA」

飛龍がユウトに向かって走ってくる。

「させるか」

スティアは、新しくなった弓を引くが、弦が堅くなかなか引けない。

そうしている間にも飛龍は近づいている。

「あああああ」

スティアは力の限り弦を引いた。

すると、弦が動き、引くことができた。

飛龍の距離があと5メートル、4メートル、3メートル、2メートル

1メートルまでなったときスティアは矢を放った。

その矢は飛龍の頭に真っ直ぐ飛び、飛龍の頭を貫き、身体を突き抜けて尾から矢が抜けた。

その矢が通ったところを中心に凍り始め、飛龍の身体が全部凍ったとき、氷が爆ぜ、飛龍はバラバラに砕けた。

スティアは疲労で地面に腰を落とした。

『よくやった。と、言っておきましょうか。彼の治療もしておいたから時期に目を覚ますわ』

「君の目的はなんだ?」

『彼を再び手に入れる。だから助けたのよ。彼を救う為に、あなたはついでよ』

「そうか。それでも感謝する」

『塩を送るのはこれで最後よ。私は敵に毒ガスを送るような人間だから』

「う、うう」

ユウトが意識を取り戻してきていた。

『それじゃあ、私は行こうかしら。彼に、その駄剣で斬れないなら、私の剣を使いなさいと伝えておいてくれるかしら』

そう言い、魔女の気配が消えた。


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