氷の流星 5
ユウトは試合を終えて、自室に戻っていた。
「これ、使わなかったな」
ユウトは自分の腰の辺りにある魔道書を見た。
本当ならこの魔道書を使いながら戦う予定だった。
でも、予想以上に副会長達が弱かった。
あと、もう1つ予想外のことがあった。
どちらかというと後者の方が魔道書を使わなかった理由だ。
「しっかし、どうして魔力が」
少しだけ戻っていた。
どうして魔力が戻ったのかわからない。
いままで、多くのことをしてきたのに、戻すことはできなかった。
でも、まだ初歩的な魔法を使うには足りない。
だから、魔力を直接魔剣に纏わせて戦うスタイルは変わらない。
「気にしてもしょうがないよな」
考えてもわからないものを気にしていてもわかるというわけでない。
(今は対校戦についてだけに集中)
副会長達との戦いで、代表に確定したようなものだが、共和国の方の代表に勝たないと意味がない。
(全ては彼女の為に)
本番はここからだ。と、気合いを入れて、ユウトは自室のドアを開けた。
「え?」
レイシアが鞄に抱きついていた。
(それは予想通りか)
ユウトがこの部屋を出て行く時の反応を見ればこれは大体予想通りだったが、
部屋が強盗に入られたかのような荒らされ方をしていた。
レイシアがいるということはフレイヤ達もいるはずだから強盗に入られたということはないだろう。
「はぁ」
ユウトはため息をついてから奥に入る。
リュッカ、フレイヤ、エレナ、スティアがわかれて、何か隠されていそうな場所を探していた。
「おい。何しているんだ」
ユウトは冷たい声で言った。
「「「「!?」」」」
4人は驚いて飛び上がった。
(魔法がなくてもあんなに浮けるんだな)
ユウトは少しだけ感心した。
「ゆ、ユウト。早かったわね」
漁っていたものを慌ててしまいながらフレイヤは言う。
「まあ、な。ところで―」
「し、試合はどうなったのだ!?」
ユウトの言葉を遮りスティアが訊く。
「こうやって早く帰ってきたんだから勝ったに決まっているだろ」
「さ、流石ですわ。ユウトさん」
「ありがとう。で、どうして―」
「ゆ、ユウ君。おめでとうございます」
それぞれがユウトを話さないようにするために交互に話して、話していないときは急いで片づけている。
(凄いチームワークだな)
これだけいつも協力してくれればいいと思い、ユウトはため息をついた。
「まあ。いいや。ちゃんと片付けてくれよ」
ユウトはそれだけを言い、レイシアの方に向かい、
「お前は何をしているんだ」
だ。のタイミングで、ユウトはレイシアの頭にチョップをした。
「あう」
その一撃でレイシアは、自分の世界から帰ってきた。
「目が覚めたか?」
「ええ」
「じゃあ、その鞄から退いてくれ」
「いや」
レイシアが鞄に抱きつく。
「しょうがないな」
ユウトはレイシアの脇腹をくすぐった。
「ゆ、ユウト君。や、やめて」
レイシアは悶えながら言うが、ユウトは気にしないでくすぐり続けた。
レイシアはしばらく我慢していたが、ついに我慢できなくなって鞄を放した。
「やっと、放した」
ユウトは笑い続けて息を切らしているレイシアを無視して、鞄を開けて、魔道書とベルトをしまい、クローゼットに入れる。
そしてユウトは空いているソファーに座る。
「ふう」
「ふうじゃないわ」
涙目になりながら、レイシアが言う。
「どうした?」
平然としているユウトを見て、レイシアはため息をつく。
「ユウト君。私の脇腹どうだった?」
「どうって言われてもな」
ユウトは困った。
素直に言ったら怒るのではないかとユウトは思った。
「素直に言って」
「わかったよ。やわらくて気持ちがよかった」
ユウトがそう言うと、レイシアは肩を落としてがっかりしていた。
「ユウト君って女の子に興味がないの?」
「なんでそんなことを」
「だって、女の子の身体に触っても特に反応がないから。男の子の方が好きだと思うわよ」
「別に、反応がないのは女の子に興味がないわけじゃないよ。特に意識しないようにしているだけだ」
「それを聞いて安心したわ」
そう言い、ユウトの隣に座った。
頬をユウトの肩に乗せている。そのおかげでレイシアの体温が伝わる。
ユウトはその温かさにドキドキするが、顔を出さないようにする。
「さ、さて、暇になったから街にでも行くか」
ユウトは慌てて立ち上がり、ドアに向かって歩く。
「ユウト。あたしも行くわ」
「わかった」
ユウトの後をフレイヤ達は追って学園都市に向かった。




