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氷の流星 3

 ユウトはスティアの言ったことを考えていた。

「難しいな」

 呼吸を合わせるということをしてこなかったユウトにとって難題だった。

 1人や2人くらいなら簡単なのだが、5人と合わせるとなると難易度が高い。

(慣れしかないよな)

 そう思いながら、ユウトはコーヒーを飲んだ。

 とは言っても、もう数日しかない。

 力で押し切ることで勝ってきたことが仇となってきた。

「副会長達と負けても大丈夫にするには点を何点とればいい?」

「負けるとか考えるのは、あんたらしくないわね」

「まあな。でも、確実性が欲しいからな」

 なんとしてもユウトは出なければならなかった。

「保険として、点を取って置くのね」

「ああ」

「私達のチームは2位との点差はかなりある。だから、あと1回Sランクの依頼を受ければ追いつけなくなるだろう」

「そんなに差があったんだ」

 ユウトは驚いた。

 もう少し差がないと思っていたのだが、かなりの差ができていた。

「うむ。君のおかげでな」

 少し不機嫌そうにスティアは言う。

 ユウトが昨日完了した依頼、6個のおかげで僅差だったのが一気に差を開いた。

「なんで、そんなに不機嫌なんだよ。勝っているんだぞ」

「そうなのだが、君1人の力で勝っている気がしてな」

「1人の力じゃないよ。試合だってみんなの力で勝っているだろ」

「だが、点のほとんどは、君が取っているのだぞ」

「依頼は暇な時沢山受けているからな」

 ユウトは試合やチームで依頼を受ける時以外は、ほとんど学園にいないで1人で依頼をこなしている。

「君はがんばり過ぎている。ときどきは休んだ方がいい」

「別に、俺は頑張り過ぎてないし、休んでいるからな」

「でも、ユウ君は私達が無理やり休ませないと休まないですが」

「おかげで、テスト勉強ができたぜ」

「テスト…」

 フレイヤは露骨に嫌な表情をする。

「テスト苦手なのか?」

「そんなことはないけど、あの方式のテストが嫌なのよ」

「そうか? あの方式だと早く終わっていいだろ?」

「そうですね。一気にやれるのはいいです」

 学園の試験は全ての教科を一気に渡されて、それを時間内に解く。

 1つの教科を集中し過ぎても、他の教科ができないと、補習は確定してしまう。

 全ての教科を万遍なく解かなければならない。

「ユウトさんはテストの結果はどうでしたの?」

「別に普通だよ」

「普通とはどれくらいですの?」

「普通は普通だよな」

 エレナの質問にユウトは困っていた。

「ユウ君は、私に勉強を教えられるくらい頭がいいですよ」

「「「えー!!」」」

 フレイヤ、エレナ、スティアはリュッカの言葉に驚いていた。

「別にあれくらい一般教養だろ?」

「古代語と竜語は一般教養ではありません」

「竜語は一先ず置いといて、古代語ってあんた」

「別に知っていても問題ないだろ」

 学者が遺跡を研究する為に学ぶ程度しか、学ばれていない。

「どうして、あんたは古代語を学んだのよ」

「いろんな本を読むためだな」

「いろんなって?」

「それは―」

 ユウトが言いかけると、

 トントン。

 ドアが叩かれる。

「ちょっと、行ってくる」

 ユウトは立ち上がりドアに向かって、ドアを開けた。

「どうも、こんにちは」

 茶髪のショートヘアーの眼鏡をかけた女の子が立っていた。

「副会長さん達が俺に何のようですか?」

「第1班はあなたに決闘を挑みます」

 抑揚のない声で言う。

「それは、俺1人に6人がかりで戦うということですか?」

「ええ。そうよ」

「6人がかりってどうなんだよ」

「あなたはそれくらい危険なの。もちろん、あなたが負けても何もリスクはないわ。あなたが勝てば、もちろん点があなたのチームに入るわ」

「副会長さん達は、俺の情報を手に入れるのが目的と」

「そうよ。あなた1人に勝てないならチーム戦で勝てるわけもありませんので、私達が勝てるなら、あなたのチームとの戦いに向けて対策を考えられますから」

「まあ。俺は構いません。でも、1つお願いがあります」

 ユウトが言うと、副会長は眉をひそめた。

「お願い? 私達に手加減をしてくださいということはあなたの性格を考えると、ありえませんが、どんな願いですか? 簡単なものだったら何でもいいですよ」

「観客を誰一人入れないでください。あと、他の人に俺の戦い方を話さないでください」

「観客を入れないですか?」

「はい。俺の戦い方をあまり見せたくないですから」

「まあ。いいでしょう。日時はどうします?」

「今すぐでもいいですよ」

「では、今からやりましょう。審判はどうします?」

「俺から頼んでおくから任せてください」

「わかりました。では、第1演習場で待っています」

 副会長はそう言い、ユウトの部屋から離れていった。

「ふう」

 ユウトは息を吐いた。

「ふう、じゃないわよ。あんた、なんで試合を受けたのよ」

 フレイヤはユウトの肩を持って、揺すった。

「逃げるのは癪だし、俺達にリスクはないだろ?」

「それは、相手が勝つ気でいるからよ。しかも、あたし達にも試合を見せないってどういうことよ」

「副会長達だと、手加減している暇はないからな」

 ユウトはそう言い、フレイヤの手を退けて、部屋の奥に向かった。

「ユウ君」

「ユウト」

「ユウトさん」

「ユウト君」

 リュッカ達はユウトを見た。

「そういうことだから」

 ユウトはそう言い、クローゼットから古びた旅行鞄を取り出した。

 ユウトが手をかざすと鍵が開き、旅行鞄が開いた。

 中には、古ぼけた本が何冊と黒い変わった形をした剣が入っていた。

「赤だけでいいか」

 ユウトは赤い本とその本を持ち運ぶためのベルトを取り出した。

「ユウト君。それは何?」

「魔道書だよ」

「見たことないものばかりだけど、どんなの写本なの?」

「名前はグリモアだったはず」

「ぐ、グリモア!!」

 レイシアは今まで1番驚いていた。

「どうしたのだ?」

 スティアがレイシアに訊く。

「グリモアよ。あのグリモアなのよ。写本が1冊もない禁書なのよ。その写本がここにあるのよ」

「写本じゃないよ。本もお」

 ユウトの頬をレイシアが引っ張る。

「あに、するうだよ」

「何、するんだよ。じゃないわ。ユウト君。本物を持っているってどういうこと!?あれは魔王が作った魔道書の中でも特別なもので、9冊のシリーズで、触るとその魔法を使えるというとんでもない魔道書なのよ」

 興奮した様子でレイシアは言う。

「そんなにすごいものを持っていたのか。ユウト」

「まあ、な」

 ユウトは鞄を閉じて鍵を閉めた。

「まあ、な。じゃないわ。というか、さっき色とりどりの本が9冊あったけど、まさか、全部持っているってことはないわよね?」

「全部あ―」

「――――!!」

 レイシアがユウトの首を絞めて声にならない叫び声をあげた。

 ユウトはレイシアの手を首から無理やり離した。

「何するんだよ」

「ユウト君こそ、なんで全部持っているのよ!!」

「知り合いに貰って、な」

「いいなー。そんな知り合いがいて。私も会わせてくれない?」

「無理。あいつ、人に会いたがらないし、あと、俺も今どこにいるかわからないからな」

「そんなー」

「というか、レイシア興奮しすぎだ」

「私、魔道書に目がないの」

「そうか。じゃあ、そろそろ行ってくる」

「ユウト君待って!!」

「どうした?」

「あの魔道書見てもいい?」

「駄目だ」

「ケチ」

「というか、その鞄に触れられないからな」

「うぅ」

 レイシアはがっかりと肩を落とす。

 そんな姿を苦笑いしながら見て、部屋を出ていった。


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