闇を照らす 7
「じゃあ、次はユウト君について教えてもらおうかしら?」
レイシアは小悪魔のような笑みを浮かべながら言う。
その笑みを見たユウトは嫌な予感がした。
「俺に訊きたいこと?」
「ええ。もちろんユウト君の好みの女の子についてよ」
(やっぱりか)
大体予想はついていた。
「別に、ユウト君は答えなくてもいいわよ。視させてもらうから」
「くっ」
ユウトは油断していた。
感情が視えるというなら言葉にしなくても、答えがわかるということだろう。
「私の魔眼は、ハイかイイエくらいは視えるから隠しても無駄よ」
レイシアの言葉にユウトは唇を噛んだ。
「じゃあ、始めるわよ」
「……」
「まずは小手調べに、ユウト君は髪の長い子と短い子どちらが好み?」
ユウトは黙っていたが、レイシアはふむふむと頷いていた。
「なるほどね。髪の長い子が好きね」
「ッ!!」
図星を突かれてユウトは表情を強張らせた。
「じゃあ次ね。髪繋がりで、髪の色は何色がいい?」
ユウトは強張ったままレイシアを見ていた。
「あれ?」
どうやら視えていないようだった。
「ということは、色は関係ないのね」
またレイシアはふむふむと頷いていた。
「じゃあ、ウォーミングアップも終わったから、本命の質問をするわよ」
ユウトの額に汗が流れ落ちる。
「まずは―」
(まずは、か)
ユウトは内心唸る。
「貧乳派のユウト君は、本当に胸の小さい女の子が好きなの?」
「誰が貧乳派だよ」
「じゃあ、胸の大きい子と小さい子どちらが好きなのかはっきりしないとね」
レイシアが意地悪な笑みを浮かべているのを見て、ユウトは苦笑いをする。
「うーん。また視えない。ということは、どちらでもないということかしら」
「……」
ユウトは目をつぶって表情を読まれないようにしていた。
「質問を変えるにもどういうのに変えればいいのかしら」
レイシアは考えていた。
「あっ!!」
レイシアは何か思いついたのか、ぽんっと手を叩いた。
「ユウト君。美乳派ね」
「は?」
レイシアの口から発せられた爆弾言葉に驚かせられた。
「ふむふむ、なるほどね」
何か理解したような口調で言いながら頷いていた。
「大きさは関係なく、形やバランスが大切なのね」
真っ直ぐな瞳でユウトを見つめる。
「レイシア」
ユウトはレイシアを止める為に声をかける。
「ええ。もう十分訊いたからいいわ」
「そうか」
ユウトはレイシアと話していると疲れるので、本を読むことにした。
「ユウト君」
「……」
「ユーウートー君?」
「……」
「えい!!」
無視をしていたユウトにレイシアが抱きついた。
やわらかい胸が頭に当たってドキドキするが顔には出さないで、
「……どうした?」
「反応が薄いわよ」
「なんか、レイシアの行動に反応したら負けなような気がするんだよな」
ユウトがそう言うと、レイシアは頬を膨らませる。
「構ってくれないと寂しい王女様は死んじゃうのよ」
「構うってどういう風に?」
「そうねー」
レイシアは上を見た。
「リアクションをしてくれるとか、おしゃべりするとか」
「ふーん」
ユウトは本を読みながら返事をした。
「また、反応薄い」
「しょうがないだろ。かなり疲れているんだから」
「だったら寝る?」
「そうしたいけど、レイシアが帰らないから寝られないだろ。脚が治ったなら自分の部屋に戻ってくれよ」
「もう遅いからここで寝るわ」
(確かに遅いけど)
もう2時くらいになるのだが、レイシアがこの部屋に入ってきたのは12時くらいだった。
(まあ。1人で部屋に戻るまでに何かあっても困るな)
「しょうがないな。今日だけだぞ」
「やったわ」
そう言い、ユウトの手を引いた。
「何?」
「一緒に寝るのよ」
「何言っているんだよ。俺はソファーで寝るに決まっているだろ」
「えー」
「説教が意味をなしてないな」
「ちゃんとユウト君が言いたいことは理解しているわ」
「ほう。じゃあ、言ってみろよ」
「俺以外の男に触れられるなでしょ?」
「どうやったらそう解釈できるんだよ。俺は自分を大切にしろ、って言う意味で言ったんだぞ」
ユウトはレイシアの発言で、どっと疲れるような気がした。
数十分にも渡る説教をしてもレイシアには無駄だった。
「わかっているわ。私がこうするのはユウト君だけよ」
「だからってなあ」
「ユウト君。私ね。ユウト君のことを―」
「レイシア。その続きは言わないでくれ。言われると、な」
レイシアの言葉を遮って、ユウトは言う。
「言われると?」
「その、な」
ユウトは言葉を濁す。
「わかったわ」
聡明なお姫様はユウトの言いたいことを理解して、頷いた。
「ごめんな。全てが終わったらちゃんと聴くから」
「いいわよ。でも、ユウト君を誘惑するのは止めないわよ」
レイシアがユウトを抱きしめる。
「俺は―」
ユウトはレイシアに言おうとするが、
「いいわ。今は私を見てくれなくても、でも、ね」
「ああ」
暫くレイシアはユウトを抱きしめていたがゆっくりと放し、
「じゃあ、おやすみなさい」
そう言いレイシアは1人でユウトのベッドに向かった。
「おやすみ」




