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闇を照らす 6

 数分後、

「ゆ、ユウト君…」

「ちゃんと、聞いているか?」

 ユウトはレイシアを正座させて説教を続けていた。

 数十分後、

 ユウトの説教がやっと終わった。

「わかったか?」

「はい。もうしません」

 レイシアはしゅんとして頭を下に下げていた。

「これからは自分を大切にするんだぞ」

「わかったわ」

「じゃあ立っていいぞ」

 そう言い、ユウトは手を差し出した。

 でも、レイシアはユウトの手を取らないで、ずっと正座をしていた。

「どうした?」

「脚が痺れて立てないの」

「ああ。なるほどな」

 レイシアの様に正座をしたことがない人はすぐに脚が痺れてしまい立てなくなる。

 ユウトは昔からよく正座をしていたから、正座をしても脚が痺れるということを忘れていた。

「ユウト君、立てないわ」

 涙目でユウトを見ていた。

「まあ。立てるようになるまでそこにいていいから」

 そう言い、ユウトはソファーに深々と座った。

「ふう」

 ユウトは疲労でぐったりした。

(今日はなんだか戦っているより疲れたな)

 悪夢で起床をして、いきなり、料理対決を始めると言われ、それからスープを食べて、そのスープによるダメージを癒す為に休んでいたら、いつの間にか夜になっていて、寝ていたら、レイシアが夜這いしに来て、それについての説教をした。

「んー」

 ユウトは固まった身体をほぐす為に背を伸ばした。

 正直、もう寝られる気がしなかった。

「まあ。いいか」

 そう言い暗視用の眼鏡をかけ、本を読み始めた。

「ユウト君?」

「ん?」

 ユウトは本から目を離した。

「ねえ。ユウト君。もし、私があのまま受け入れたらどうするつもりだったの?」

「自分の発言に責任くらい持つさ」

「って、ことは、あのまましたんだ」

「そうなるな。まあ、そこまで覚悟できていないってわかっていたからな」

「ふーん。でも、ユウト君。私なら別にエッチなことしてもいいと思っているんだ」

 きっとレイシアはにやにやしながら言っているのだろうとユウトは思い、

「なんで、こんな子なんだろ。初めて、会ったときは純情そうな天使のような子だと思ったのに、蓋を開けたら変態だもんな」

 ぽつりと言う。

「ユウト君は、そっちの方が好みなの?」

「いや、そっちの方が扱いやすいと思っただけだ」

「調教しやすいってことね」

「…はあ」

 ユウトはまた、ため息をついた。

(レイシアの中で俺はどんな人間なんだよ!!)

 他のチームメイトの中でもどんな人間として思わられているのか気になったが、

「調教とかじゃなくて、あしらいやすいと思っただけだ」

「ふーん」

「で、レイシアは、どうして俺を誘惑するようなことをするんだ?」

「もちろん、ユウト君を狼にするためよ」

「ストレスか」

 ユウトは適当に言った。

「そ、そんなことないわよ。確かに城での生活は退屈で疲れるだけだったけど、今の生活は楽しいわ」

「それはよかった。なあ、レイシア」

「なあに?」

「よかったら。城での生活について話してくれないか?」

 ユウトがそう言うと、レイシアはにやにやして、

「あら、ユウト君。私のこと気になるの?」

「ああ。とても気になる」

 ユウトはレイシアについて反応すると負けた気になるので棒読みで言った。

「じゃあ、話してあげるわ」

「おう」

 レイシアは思い出す様に上を見た」

「そうね。まずユウト君も知っているかと思うけど、私の家族は父に母に姉が2人という5人よ」

「まあ。それくらいは知っているよ」

 王族の公式の家族くらい王国に住んでいれば、誰もが知っている。

 顔を見たというなら話は別なのだが、

 王国の王、ロッレックス・フィルニア、その妃、アーシェ・フィルニア。

 第1王女、シャーリィ・フィルニア、第2王女、マリアナ・フィルニア、そしてユウトの前にいるレイシア・フィルニア。

 王国の歴史を辿っても姫しか居ないというのは今回が初めてだ。

 あと王、ロレックスは民のことを1番に考える善王として有名だ。

「姉は2人とものほほんとしているから、私がしっかりしないといけないの」

「ふーん」

 ユウトもそういう評判を聞いたことがある。

「じゃあ、続きを話すわよ」

「おう」

「生活は基本的にその辺の貴族と変わらなくて、家庭教師が一般教養を教えてくれて、ほとんど1日中勉強だったわ」

「まあ。しょうがないよな」

「ええ。でも、当時の私は退屈していたのよ」

「子どもだったしな」

 ユウトも教育を受けたが退屈していたのを思い出した。

「でも、家族全員でご飯を食べるようにしていたわ」

「それはいいことだな」

 貴族、しかも身分が高くなれば高くなるほど家族と過ごす時間が短くなっていき食事を共にしなくなり、顔を会わせなくなるということが多い中で、王族がきちんと家族との時間を大切にしているというのは、凄いことだろう。

「ええ。それは私の自慢よ」

 レイシアは胸を張っていた。

「なあ。レイシア」

「どうしたの?」

「王都に帰らなくてもいいのか?」

「ええ。ユウト君を籠絡するまでは帰らないわ」

「というより、なんで俺に好意を寄せているんだ?」

「わからないの?」

「ああ。話したのはこの学園に来たときが初めてだろ?」

「憶えてないの?」

「ああ。憶えてないから教えてくれないか」

 ユウトがそう言うと、レイシアはがっかりしていた。

「わかったわ。話してあげる。私達が初めて会ったのは5年前の魔法祭よ」

「5年前の魔法祭か…」

 5年前の魔法祭、それはユウトが魔王となった年の魔法祭。

 そして、誰かが世界樹に願って、ユウトの魔力のほとんどを消失させた。

「で、どこで会ったんだ?」

「私が城からこっそり抜け出して王都の市街地を歩いていたときにユウト君が助けてくれたのよ」

「助ける?何かに襲われていたのか?」

 でも、王都の警備なら魔獣を入れるようなことはしない。

 そうなると、何に襲われるのだろうか。

「襲われてないわ」

「じゃあ、助けたっていうのは?」

 ユウトが訊くと、レイシアは顔を赤くしてもじもじしていた。

「ユウト君に…もらったのよ」

 肝心なところが小さすぎて何を言っているのか分からなかった。

「なあ。聞こえなかったから、もう1度言ってくれるか?」

 ユウトがそう言うと、レイシアはユウトから顔を逸らして、

「ユウト君にご飯を奢ってもらったのよ」

「は?」

「だからご飯を奢ってもらったのよ」

「それはわかったけど、好意を寄せられるには微妙じゃないか?」

「私にとっては、十分なのよ」

「そうか」

「で、ユウト君は思い出した?」

「すまん。思い出せない」

「どうせ、魔王様にとっては、私なんか数多くの助けてきた女の子の内の1人ですよーだ」

 拗ねたように頬を膨らませて、ユウトを見ようとしなかった。

「そんなことないって」

「本当かしら」

 半眼でユウトを見る。

「……」

 思い出すことができないので答えることができない。

「やっぱり、そうなんだ」

 レイシアが悲しそうに顔を伏せる。

(どうしようか?)

 ユウトはどう説明しようか考えていると、

「ふふ。ユウト君が真剣な表情をして考えている」

 さっきまで悲しい表情が嘘のような嬉しそうなレイシアの声が聞こえる。

「レイシア?」

「ユウト君が憶えていなくてもしょうがないわ。私もローブを着て、顔を隠していたからわからないわよ」

「いや、俺が悪いと思う」

 ユウトは自分が全面的に悪いのだと自覚していた。

 だから素直に謝った。

「悪いと思っているの?」

「まあな」

「じゃあ、許してあげる」

「で、俺に奢ってもらったから好意を寄せていたのか?」

「違うわ。私は初めて親切にしてもらったのよ」

「初めて?どういうことだ?」

「みんな、王女だからっていう、上辺だけの理由で親切にするのよ。だからユウト君に奢ってもらったのが、初めて本当の親切心によって行われた行為だったのよ」

 魔眼は先天性の場合が多い為、

 レイシアも魔眼を持っている所為で人の感情が小さいころから視てきたのだろう。

 城の中で野心や陰謀に塗れている貴族を視て来て、本当の親切というのを知らなかったのだろう。

「なるほどな」

「わかった?」

「ああ。なんとなくな」


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