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闇を照らす 3

 それぞれが、皿にスープを入れてユウトの前に置いていた。

「「「「「召し上がれ」」」」」

「どれから食べようか?」

「「「「「もちろんあたし(わたくし)のから」」」」」

 フレイヤ達は同時に言って、同時に睨みあう。

「喧嘩するなよ」

 ユウトは小さくため息をついて、1つ手に取った。

 具材が1つも入っていないけど、出汁が出ているのか色は黄金色をしていた。

(オニオンスープかな?)

 ユウトはこのスープがなんなのか想像しながらスプーンにすくい、口の中に運んだ。

 味は確かにオニオンスープの味で辛くもなく、だけど薄くもなく、ユウトの好みの味で、かなり美味しい。

 完璧に近いのだが、ユウトの舌は違和感を覚えた。

「誰がこれを作ったんだい?」

「私よ」

 レイシアが返事をした。

「美味しかった?」

 可愛らしく首を傾けながらレイシアはユウトに訊いた。

「確かに美味しかったけど―」

「けど?」

「このスープは何を入れたんだ?」

 ユウトがそう訊くと、レイシアは困ったような表情をして、

「えーと…」

 どう答えようか迷っているようだ。

(やっぱりか)

 ユウトの考えは確信となった。

「言えないなら、俺が代わりに言おうか?」

 ユウトがそう言うとレイシアはビクッと飛び上がった。

「どうする?」

 ユウトはレイシアに確認した。

「私が言うわ。ポーションを入れたのよ」

「そうか。どれくらい入れたんだ?」

「ちょっとよ」

 レイシアは親指と人差し指を曲げて小さな隙間を作った。

「本当にか?」

 ユウトが念押しすると、

「ほ、本当よ」

 レイシアがあたふたしながら言う。

「これでも、俺。ポーションの味は全部憶えているからな」

 ユウトがそう言うとレイシアは諦めたように、

「全部ポーションで作ったのよ」

 半ばヤケクソ気味になりながら言う。

「で、どうやって味を調えたんだ?自分で飲む訳にもいかないだろ」

「ポーションの扱いは慣れているのよ。効果を打ち消さないで調合して味も調えることもできるのよ」

 レイシアが言うことが確かなら、それは本当に凄いことだろう。

 ポーションの味を全部憶えているユウトも大概だが。

「で、なんのポーションを入れたんだ?」

「ひ、疲労回復」

 レイシアの目が泳いでいる。

(ばればれなんだよな)

「まあ。昔大量に飲んだからほとんどのポーションに耐性が付いているだよな」

 ユウトがそう言うと、レイシアはがっかりしていた。

「ユウト、冷めるから早く次の食べてくれ」

「そうだな」

 ユウトは一気にレイシアのスープを飲んで、次のスープに手を伸ばした。

 次に手に取ったのは、クリームシチューだ。

 ユウトはスプーンですくって口に運んだ。

 スープはまろやかで野菜は一口サイズに切り揃えてあって食べやすい。

 短時間だったのに、野菜はちゃんとやわらかくなっていて、じゃがいもは芯がなくほくほくしていた。

 そのスープには実家に帰ったような安心感があった。

 ユウトは実家に帰っても安心するわけではないが、このスープを食べるとほっとする。

「このスープを作ったのはスティアだろ?」

「うむ。正解だ。よくわかったな」

「スティアの料理は何回か食べたからな」

「で、美味しいか?」

「ああ。食べると温かい気持ちになる」

「そうか」

 スティアは満足気な表情をしていた。

「ユウトさん次はわたくしのを食べてくださいな」

「ああ。わかった」

 ユウトはスティアのクリームシチューを一気に飲み干した。

 そして、エレナから受け取ったスープを飲み始めた。

「どうですの?」

 エレナ心配そうにユウトを見ている。

 だけど、その心配は杞憂だった。

「…美味しい」

 ぽつりとユウトは小さな声で言った。

(正直、ここまで凄いと、な)

 コンソメスープなのだけど、今までユウトが食べてきたコンソメスープが一瞬で霞んでしまう。

 一言で言うなら完璧。

 学園都市で働いている調理師より上手。お金を出したくなるような美味しさ。

(メイドがいるのに自分で料理をこんだけ作れるとは)

 よほど完璧主義なのか、目的があるのか、どちらにしろかなりの努力をしたのだろう。

 ユウトが、気が付いた頃にはもうスープがなくなっていた。

「ふう」

 ユウトは一息ついた。

「ユウト。全部飲んでいくの?」

「そのつもりだけど」

「お腹いっぱいにならないの?」

「ああ。俺は結構大食らいだからな。これくらいじゃあお腹いっぱいにはならないよ」

「そう。でも、お腹いっぱいになったって言って食べなかったら許さないんだからね」

「わかってる」

「じゃあ、次、あたしのを食べなさい」

 フレイヤはマグマのようにぐつぐつ煮えているスープをユウトの目の前に置いた。

「これは?」

「マグマスープよ」

 名前の通り、色がマグマのような色をしていて、本当のマグマを持ってきたんじゃあないかと思ってしまう。

「お、おう」

「さあ。食べて」

 ユウトは恐る恐るスプーンをマグマスープに入れた。

 スプーンは溶けないところや、燃えないところを見ると本当のマグマではないようだ。

(もうどうにでもなれ)

 ユウトは覚悟を決めて、口の中に入れた。

(あれ?)

 辛いのだが、食べれらないほどではないようだ。

(というよりも、かなりうまい?)

 エビや魚の味がよく出ていて、更にピリッと辛く、いいアクセントになっている。

「フレイヤ!!かなりうまいよ」

 少し興奮気味になりながら言う。

「「「「えっ?」」」」

 フレイヤ以外はユウトの言葉に驚いていた。

「そうでしょ」

 フレイヤは胸を張っていた。

「ああ。これ、かなり好みだよ」

 そう言いユウトは夢中で食べた。

「ふう」

 フレイヤが作ったスープを食べて、一息ついた。

「さあ。最後は私のです。どうぞ召し上がってください」

 リュッカが最後に残った皿をユウトに向かって押した。

「お、おう」

 ユウトはちょっと引き気味になりながら返事をする。

(とうとう来たか…)

 適当に選んだり、薦められたりしているような風を装っているが、実のところ、ユウトはリュッカの作ったスープを避けていた。

「さあ。どうぞ」

 リュッカは期待したような瞳でユウトを見ていた。

「ぐっ」

 その目を見てしまったユウトは早く食べなければならないという気持ちになってしまう。

 ユウトは覚悟を決めて、すくった。

 スプーンに具材を乗せず汁だけを乗せた。

 そして、口の中に運んだ。

(うっ!!)

 口の中に入れた瞬間、顔をしかめたくなった。

 でも、ユウトはリュッカがいたから顔には出さなかった。

 だけど、背中には冷や汗が絶えず吹き出ていた。

 ユウトは口に入れた物を飲み込み。

 1度、深呼吸したあと、もう1度スプーンにすくい、口の中に入れた。

 覚悟が出来ていた為、今回は味がよくわかった。

 甘く、苦く、辛く、酸っぱく、

 いい風に言うなら、いろんな物の味がよく染みていた。

 悪く言うなら、えぐい。

「どうです。ユウ君」

「ああ。リュッカの故郷の味がするよ」

(リュッカは悪くない)

 そうリュッカは悪くない、リュッカはレシピ通りに作っただけだ。

 リュッカの故郷である、フランドル地方は料理が不味いことで有名な地方だ。

 だから、故郷のスープという時点でこの味になるのは確定している。

「そうですか。それはよかったです」

 リュッカは眩しい笑顔で言う。

 リュッカは自分の故郷の料理を小さい頃から食べているので、味に慣れていて、これが当たり前と思っている。

「では、次はこれを食べてください」

 リュッカは、溶けてどろどろになった何かの塊(たぶん何かの野菜だろう)を指差した。

「こ、これは?」

 ひきつった笑みをしながらユウトは訊いた。

「食べてみての、お楽しみです」

 満面の笑みで言う。

「ほ、ほう」

 ユウトは恐る恐るリュッカが指差したものにスプーンを刺した。

 ドロッ

 そんな音が聞こえるように完璧に液体になった。

(お、おう)

 そんな様子を見て、若干逃げたくなるユウトだった。

 でも、男の意地があるのでユウトはそれを口の中に入れた。

 それはアボカドの味がした。

(アボカド?なんで、アボカド?)

 耐えられなくなりそうだが、ユウトはこらえて、1口、また1口、口の中に入れた。

「ユウ君?」

「…あ?ああ。これアボカドだろ」

「そうです。よくわかりましたね」

「でも、なんでアボカド?」

 ユウトが訊くと、首を傾げて、

「さあ?レシピに書いてあったので入れてみました」

「そうか…」

 ユウトはそう言い、このスープ(?)に向かった。

(大丈夫。あのよくわからないキノコに比べたら、これはまだ食べられる)

 ユウトはそう自己暗示をかけて、一心不乱に食べた。


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