闇を照らす 1
ユウトは村人に追われていた。
「死ね。死神」
そう言いながら村人たちが農具や石をユウトに投げる。
「うっ」
その1つがユウトの脚に当たり、ユウトは体勢を崩し地面に倒れた。
(早く起き上がらないと)
ユウトは起き上がろうとしたが、力が入らない。
そうしている間に村人たちはユウトを囲んでいた。
「お前たちがいなければ!!」
村人は恐怖、怒り、憎しみそんな感情が全て混ざったような表情でユウトを睨んでいた。
「どうして?」
ユウトは声を絞り出して訊いたが、村人たちは無視をした。
そして中年の男は無言で鍬を振り上げ、ユウトの背中に勢いよく振り下ろした。
「―!!」
次の瞬間、場所が変わっていた。
金属の壁と床そして明りすらない暗い部屋にいた。
手には手錠、脚には重りがついた枷がついていた。
そして金属でできたドアが開いた。
「―。出てこい」
顔が見えないが声から察すると入ってきた人は男なのだろう。
ユウトはその男にしたがった。
しばらくまともな食事をしていないため腕や脚は骨と皮だけのようになっていた。
(どれくらいここにいるのだろう?)
太陽の光を見たのはいつだろう?
もうそれもわからないくらいここにいる。
男は迷路のような道をユウトを連れて歩く。
そして、ドアの前に立ち、
「入れ」
ユウトを中に入れた。
その部屋には、手術台がぽつりと有るだけの部屋で、数人の研究者が立っていた。
ユウトは手術台の上に寝た。
研究者たちは無言でユウトの方に近づき、注射を刺し、血を抜いた。
次に研究者たちは大きな刃物を取り出し、ユウトの腕に振り下ろした。
「―!!」
そこで、ユウトは起きた。
「はあはあ」
背中は冷や汗でびしょびしょになっていた。
「また、あの夢か…。最近よく見る、な」
ユウトは手で顔を覆った。
大きく深呼吸をして息を落ち着かせた。
「どうして、このことばかり憶えているんだ。他のことは忘れてしまうのに」
ユウトはベッドから降り、洗面所に向かった。
鏡に包帯を巻いている自分が映っていた。
そんな姿の自分を見て自嘲気味に、
「こんな風になっているから、思い出すんだよ」
と言い、身体に巻いている包帯を取った。
トントン
ドアが叩かれる。
ユウトはドアの前まで行き、鍵を開けた。
するとドアを開けて、フレイヤ達が入ってきた。
「「ユウト、おはよう」」
「ユウ君。おはようございます」
「ユウトさん、おはようございます、ですわ」
「ユウト君。おはよー」
それぞれがユウトに向かってあいさつをする。
「ああ。おはよう」
ユウトがあいさつをすると、
「ユウト君。調子が悪い?」
レイシアが訊いてくる。
「どうして?」
「だって、顔色が悪いから」
そうレイシアが言うと、フレイヤ達も心配そうにユウトを見た。
そんなフレイヤ達を安心させるために、ユウトは笑って、
「悪夢を見てうなされただけだから、大丈夫だよ。ところで、みんなは俺の部屋にどうして来たんだ?」
「ユウトが安静にしているか見に来たのよ」
フレイヤがツインテールになっている髪を揺らしながら言う。
「そうか。心配してくれてありがとな」
そう言いながらユウトはフレイヤの頭を撫でた。
フレイヤが少し頬を赤く染めなる。
「まあ。怪我は治ったからもう平気だよ」
そう言いユウトが腕を回した。
だけど、フレイヤ達はまだ心配そうな表情をして、
「駄目よ。まだ休んでなきゃ」
レイシアがユウトの肩を掴んで身体の方向を変えさせてベッドまで押した。
「ちょっ」
ユウトはベッドに無理やり座らせられた。
「これから私たちがユウト君の為に料理を作るのよ」
「え?」
レイシアの口から意外な言葉が出たのでユウトは驚いた。
チームメイト達の仲の悪さはかなりのものだから一緒に何かをするなんてありえないからだ。
困惑しているユウトを見て、レイシアは微笑みながら、
「もちろん、協力なんかしないわよ。面目上はユウト君の為に料理を作るのだけど、本当はユウト君に誰が1番料理が上手いのかを選んでもらうのよ」
レイシアの言葉でユウトは納得した。
「なるほどな。でも何の料理で競うんだ?統一しないと審査できないぞ」
ユウトがそう言うと、リュッカが口を開いた。
「それぞれの出身の地方の伝統のスープ料理を作ります」
「そうか」
「では、作ってくるから、ユウトは待っていてくれ」
フレイヤ達は部屋にある台所へ向かった。
フレイヤ達を見送った後、ぼんやりとしていると、
「にゃー」
カシャがユウトの脚にすり寄ってきた。
「外出はまた今度だな」
そう言いユウトはカシャを抱きかかえた。
元々、今日は怪我が治る予定だったから、学園都市まで行って簡単な依頼を受けて来ようと思っていた。
だが、フレイヤ達が来たから外出ができなくなった。
「まあ。いいか」
そう言い、ユウトはカシャを撫でた。
『死ね。死神』
ユウトは、さっき見た夢のことを思い出した。
あの夢は実際にあった出来事だ。
その出来事を思い出すとユウトは、
本当に今の生活は許されるのだろうか?
本当に光の当たる場所を歩いてもいいのか?
と思う。
(でも、彼女ともう1度―。だけど、笑顔で彼女に再会できるのだろうか?)
「ユウト君?」
レイシアがユウトの顔をのぞいていた。
「どうした?」
ユウトが訊くと、
「……」
レイシアが無言でユウトの頭を抱きしめた。
「レイシア?」
「いいのよ。ユウト君」
そう言い、ユウトの頭を撫でた。
「あ、あれ?」
ユウトの目から涙がこぼれる。
「泣きたいなら泣けばいいのよ」
「……」




