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静かなる思い 5

 数分後、

 ユウトとリュッカは少し離れて座っていた。

 まだ服が乾いているか確認していない為、ユウトは上半身裸で、リュッカは布にくるまっていた。

「あの、ユウ君先程はそのすみませんでした」

 リュッカは顔を赤くしながら言う。

「別にいいよ。おかげで身体は少し楽になったし、何よりも顔を赤くして一生懸命な可愛いリュッカを見ることができたし、な」

 ユウトがそう言うと、リュッカは頬を膨らませて、

「ユウ君は意地悪です。鬼畜です」

「この程度で鬼畜だったらみんな鬼畜だよ」

 ユウトは笑いながら言う。

「ユウ君は昔と変わってしまいました」

「まあ。家を出て、学園で再会するまで3年が経つからな。その間いろいろあったし」

 ユウトはそう言い遠くを眺めた。

「その年間は私には言えない3年なのですよね?」

「ああ。人に言えるような3年じゃなかったし、リュッカが聞きたくないようなことばっかりだからな」

「そう…ですか」

 リュッカは悲しそうな顔でユウトを見る。

「ところで、ユウ君。あの約束は憶えていますか?」

「どの約束だ?リュッカとはいろんな約束したからな。あの約束って言われてもわからないよ」

「そうですよね。ユウ君が私達を初めて風竜に乗せてくれたときのことですよ。憶えていますか?」

 リュッカはユウトの目を覗き込むように見る。

「ああ。もちろん」

 ユウトは、リュッカの言った頃について思い出す。

(たしか、俺が8歳くらいのことだよな)

 8年前、リュッカと出会って2年が経ったころ。


 ユウトは緑色の風竜の背に乗っていた。

「ユート、何しているの?」

 下から白銀の髪をなびかせながらあの子が声をかける。

「前に、僕がみんなに風竜を見せるって言ったよね」

「うん」

「だから、こいつを連れてきたんだよ」

「私も乗せて。ユート」

「いいよ」

 ユウトは彼女の手を引いて風竜の背に乗せた。

 すると、

「ユウ君」「ユウト様」

 ユウトが声をした方を見ると下に青色とクリーム色の頭があった。

「お?2人とも来たね。約束通り風竜を連れてきたよ」

「これが風竜なのですね。初めて見ました」

「ユウト様。私の為にわざわざ風竜を連れて来てくださりありがとうございます」

「リーナ。そんなお礼はいいから感想を言ってよ」

「とても大きくて、凛々しい。流石伝説の存在」

「だから言っただろ。風竜に会ったことがあるって」

「ユウ君。信じなくてすみません」

「まあ。信じてくれたならいいよ。それよりも風竜に乗ろうよ」

 ユウトはそう言い、リュッカとリーナの手を引いて風竜の背に乗せた。

「ひんやりしていて、堅い」

「これが風竜の背ですか」

「んじゃあ、飛ぶからみんな掴まってね」

 ユウトは3人の顔を見ながら言う。

「はーい」

「わかりました」

「ユウト様。お願いいたします」

 ユウトは風竜の頭を触り、

「ゼソ」

 竜語で飛べと言う。

 すると風竜はゆっくりと上昇していく。

「すごーい」

「高い。流石ユウト様」

「風が気持ち良いです」

 3人とも目をキラキラさせて周りを見ていた。

「こうしていると世界が小さく見えるよな」

「そうですね」

「ユウト様。世界が全てユウト様のもののように感じさせられるような風景でございます」

「世界が僕のものかぁ。そうなると僕が王様だね」

 ユウトは周りを見ながら言う。

「はいはい。ユートが王様なら、私がお姫様をやります」

 彼女が手を上げながら言う。

「だったら、私もお姫様をさせていただきます」

「では、私もやります」

 リーナとリュッカも競い合うように言う。

「みんな、竜の上であんまり動かないでよ。落ちるよ」

 ユウトがそう言うと、3人は一斉にユウトの方を見て、

「ユート、誰をお姫様にするの?」

「え?」

「だからね。ユートは誰をユートのお姫様にするのって訊いているの」

「えーと…」

 3人が食い入るように見てきた為、ユウトは戸惑った。

「みんな、お姫様じゃあ駄目なの?」

「ユートがそう言うなら別にいいけど」

「ユウト様がそうおっしゃるなら私もいいです」

「私も」

 それぞれ不満そうに唇を尖らせていた。

「では、約束してください。私達をユウ君のお姫様にしてくれると」

 リュッカはユウトを真っ直ぐ、期待するような目で見る。

「うん。約束するよ」

 ユウトがそう言うと、3人とも眩しい笑顔をになった。

「確か、俺が王様になったらリュッカ達をお姫様にするだよな」

「ええ。それで合っていますが、ユウ君が思っている意味と私達が思っている意味と違いますが、今は憶えていただけでいいです」

「それで、なんで約束について訊いたんだ?」

「約束は間接的なことです。本題はこっちです。ユウ君、王様になれるとしたら、どうしますか?」

「王様か…。別になりたくないな。統治とか面倒だしな」

「そうですか。やはりユウ君は変わってしまいました。昔のユウ君なら喜んで王様をやると思います」

「それは、俺が子どもだったからだろ。もうそんなこと言うような年でもないからな」

「そうですが…。ユウ君は―ユウ君の心は歪に成長しています!!」

 リュッカは突然、普段のもの静かな口調と打って変わり口調を荒げて、ユウトに向かって叫ぶ。

「……」

 ユウトはリュッカを静かに見ていた。

「ユウ君。学園で再会した時も私を憶えていませんでした。いえ、憶えていないのは普通かもしれませんでも、ユウ君は私を忘れるのではなく、存在がなかったことのようになっていました」

「……」

「ユウ君、3年の間に何が有ったのですか!!」

 涙を目に溜めて言う。

「……」

「彼女なら言えるのですか!!私では駄目なのですか!!」

 そう叫びながらユウトの胸を殴る。

 ユウトはそれを受け止めて。

「あの子でも言えないよ。あの3年は誰にも言えるようなもんじゃない」

「言えないのは信じられないからですか?」

「いや、信じているからこそ話せないんだよ」

「信じているからこそ話せない…?」

 リュッカはよくわからないという風に首を傾げる。

「ああ。俺が話してしまうと、今の関係でいられなくなるし、リュッカ達の前にもいられなくなるんだよ」

「ユウ君」

「だから、さあ…」

「ごめんなさい。ユウ君」

 リュッカは頭をユウトに向かって下げる。

「リュッカ?」

「ごめんなさい。ユウ君の弱さに気づいてあげられなくて」

「え?」

「怖いのですよね?」

「わからない」

「わからない?どういうことですか?」

「アリス曰く、俺は壊れているらしいからな」

 ユウトは苦笑いしながら言う。

「壊れている、ですか」

「言われたときは何ことかわからなかったが、なんとなくわかった気がする。」

「そう…ですか」

「でも、壊れていても、今のみんなとの関係を大切にしたいと思っている」

「…」

「だから、今はみんなと合流しようぜ」

「はい」


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