静かなる思い 4
「う…うーん」
「ユウ君!!」
ユウトは朦朧とする意識の中でリュッカの声が聞こえた方に左手を伸ばした。
ふよん
何かやわらかい感触がユウトの手の平にあたる。
マシュマロみたいな感触、やわらかいけど弾力がある。
次第に意識がはっきりしていき、
ユウトは辺りを見回した。
(洞窟か?)
背中に岩の感触がしてどこを見回しても岩が見える。
右手にはしっかりと魔剣が握られている。
ユウトの身体の上に布がかけてあり、その布とユウトの間に人が1人入っているような膨らみがある。
ユウトは魔剣から手を放し、布をめくってみると、
自分の手で口を塞いで、顔が真っ赤に染まったリュッカがいた。
しかも服を着ていなかった。
「リュッカ!?」
ユウトは驚いたが、リュッカはさっきと同じように顔を赤くして肩を震わせていた。
「ゆ、ユウ君。そ、そろそろ離してください」
リュッカが消えそうな声で言う。
ユウトはさっきから触っているものを見た。
(この位置はもしかして…)
「ご、ごめん」
ユウトはそう言いリュッカの胸から手を離した。
「いえ。大丈夫です」
リュッカが身体を起こした為、ユウトは自分の上半身が裸なことに気がついた。
でもユウトは、自分が裸であることを訊くより前にリュッカに言わなければならないことがあった。
「り、リュッカ。前を隠してくれ。いろいろ見えているから」
「別に私は構いません」
「俺は構うんだよ!!」
「いいじゃないですか。昔は一緒にお風呂に入っていたじゃないですか」
「昔は昔だろ」
「そうですが、でも、私は今でもユウ君とならお風呂に入ってもいいです」
顔を赤くしてもじもじとしながらリュッカが言う。
(はあ。リュッカは、自分が美少女ということを自覚していないのか?)
ユウトはやれやれと首をすくめて、
「だったら、帰ったら一緒に入るか?」
ユウトは笑いながらリュッカに言った。
「ふぇ?」
リュッカは可愛らしい声で言う。
「だから、帰ったら一緒に風呂に入るか?って、言ったんだよ」
「ゆ、ユウ君、にゃ、にゃにを言っているのですか」
意外なことを言われた所為か焦ったリュッカは噛みながら言う。
「で、リュッカ。どうするんだ?」
ユウトは意地悪をするようににやにやしながら言う。
「ユウ君。そんにゃ…」
リュッカはまだ動揺していて顔を赤くしながら言う。
(なんで、俺の周りには積極的になるくせに初心な女の子ばかりなんだよ)
ユウトはため息をつき、
「そんなにも動揺するなら言うなよ」
「はい。反省します」
「リュッカは自分が可愛い女の子だって自覚しろよ。俺じゃあなかったら普通に襲われているぞ」
「はい。でも私が素肌を見せるのはユウ君だけです」
「だから、それが駄目なんだよ。俺だって幼馴染だけど他人だからさ。素肌を見せるのは結婚した相手だけにしろよな」
「はい。でも―」
「だから、いい加減、俺の言いたいことに気づけよ」
ユウトはリュッカにいらいらしながら言う。
「ユウ君の…言いたいことですか?」
リュッカはよくわからないという表情で言う。
「ああ。もう。折角、美人なんだから自分を大切にしろ!!」
「へ?」
「だから自分を大切にしろ」
「はい。あっ、もしかして―」
リュッカは何かに気がついて、微笑みながら。
「ユウ君、私が他の男性に手を出されないか心配しているのですね」
「くっ」
ユウトは図星を突かれて唸る。
「ユウ君は昔から独占欲強いですから、あの子を他の男性には絶対触れさせないですし、でも安心してください。私はユウ君以外の男性に触られるなどしません。あなたが望むなら近くに男性を近づけません」
「そこまではいいよ」
「と、言いつつもユウ君はそうして欲しいのですね」
「…」
ユウトは図星を突かれても沈黙した。
そしてこれ以上図星を突かれないようにするために話題を変えることにした。
「なあ。リュッカ、なんで俺の上半身は裸なんだ?」
「えーと、下半身も裸にした方がよかったですか?」
「いや、そうじゃなくて」
「わかっています。服がぬれていたから身体を冷やさないようにするために服を脱がしたのです」
「服は?」
「あちらに」
リュッカは指をさしながら言う。
ユウトが見るとユウトの青い制服とシャツ、リュッカの赤の制服と白いシャツそして可愛らしい下着が干してあった。
「リュッカ、お前の着替えはないのか?」
「ないです。日帰りだから着替えを持ってきていません」
「そうか。リュッカ寒くないか?夏に近づいているとはいえ裸は寒いからな」
「ユウ君にくっついているから大丈夫です」
「そうか。寒くなったらもっとくっついてもいいぞ」
「はい」
リュッカはそう言いユウトの胸に頬を寄せた。
「なあ。リュッカ。どうして俺達はここにいるんだ?」
「え?ユウ君が運んでくれたじゃないですか」
「そうなのか?」
「はい。憶えていないのですか?」
「ああ。意識を失っていたからな」
「そうですか。意識を失っていてもあそこまで動けるとは」
「それで、リュッカ。怪我は無いか?」
「はい。ユウ君が庇ってくれたから全然ありません」
「そうか。それはよかった」
ユウトはほっと一安心した。
「ユウ君は見たところ擦り傷だけのようですね」
「そうだな。見た目では、な」
「怪我をしているのですか?」
「ああ。脚や腕などの骨が数本折れているみたいだ」
「大丈夫ですか?」
リュッカは焦ったような声で訊く。
「ああ。問題ないよ。この程度だったら少し休めば動けるから」
骨が数本折れることなどユウトにとっては日常茶飯事なので特に気していない。
「でも、痛いのですよね?」
「まあ。痛みは感じるからな」
ユウトがそう言うとリュッカはため息をついて、
「私も白魔が使えればいいのですが…」
「白魔って便利だよな。チームに1人いるだけでもかなり違うからな。レイシアがいるだけでも安定するからな」
「傷を治せるのは大きいですよね。私も学園に戻ったら憶えてみましょう」
「そうだな。ところでみんなは?」
リュッカは右手の上に透明な小石を置いて、
「通信魔石で連絡してみたところ、全員無事でカシャがみんなを案内しているみたいです」
「そうか。じゃあ俺達もみんなの方に向かおうか」
そう言いユウトは起き上がろうとしたが、
「痛ッ」
身体が痛んで起き上がれない。
「ユウ君!!安静にしてください」
「だけど―」
「だったら私が傷を癒すまで休んでください」
「リュッカ、お前は回復できるような魔法が使えないだろ」
「そうですが、一応水属性の魔法にも傷を癒す方法があります」
「そうなのか」
「はい。なので、目を閉じてください」
ユウトはリュッカに言われた通りに目を閉じた。
ちゅっ
ユウトの唇にやわらかい感触が触れた。
「え?」
ユウトは驚いて目を開けるとリュッカが真剣そうにキスをしていた。
「リュッカ。な、なにをしているんだ!?」
「治療です。人の体は水でできているので、私が水を操り治すのです」
リュッカは真剣な表情で言う。
「それはわかったがどうしてキスなんだ」
「私が未熟なので水をうまく操れないので私の魔力が籠もった水、つまり私の体液を使わないと駄目なのでキスをしているのです」
「そうか」
「では、続けますよ」
そう言いリュッカはまたユウトにキスをした。
「ん…ちゅ…あむ」
ユウトは真剣にキスをしているリュッカを見ていた。
リュッカは顔を赤くして懸命に舌をユウトの舌に絡めている。




