静かなる思い 1
トントン
ドアが叩く音が聞こえる。
「ユウ君、起きていますか」
ドアの向こうからリュッカの声が聞こえる。
「ああ。起きているよ」
ユウトはそう言い、椅子から立ってドアを開けた。
「眼鏡…」
リュッカはユウトの顔を見るなりそう言った。
「似合わないか?」
「いいえ。知的に見えてユウ君に似合っています。ですが、徹夜は見逃せません」
アリス達との試合から3日経った。
この3日間に試合が1つ有ったが普通の火属性の魔法を使えるようになったフレイヤの活躍もあって余裕で勝つことができた。
ユウトはアリス達との試合で魔力が1時的に戻ったことを調べる為に徹夜をしているが、まず魔力がなくなるということがないので他人に魔力を分け与えるという術を調べたが、どの魔術書にも書かれていなかった。
「別に7日くらい寝なくても平気だけどな」
「平気だからって言っても身体に悪いので止めた方がいいです」
「ああ。あと少しで終わるから止めるよ」
ユウトはリュッカを部屋の中に招き入れた。
「着替えてくるから少し待っていてくれ」
ユウトはリュッカから見えない位置に移動して部屋着から制服に着替えた。
「待たせたな」
「いいえ。いいですよ。ユウ君の部屋をじっくり見ることができたので」
「そうか」
「その手に持っている服は何ですか?」
ユウトの左手には黒いシャツが握られていた。
「これは前にフレイヤを助けたときに穴が開いたシャツだよ。穴が開いたからどうしようかなって」
「なるほど、私が直しましょうか?」
「直せるのか?」
「はい。できると思います」
「じゃあ、頼もうかな」
ユウトはリュッカにシャツを渡した。
「わかりました。数日中に直しておきます」
リュッカはシャツを魔法でしまった。
「じゃあ、朝食を食べに行こうか」
「はい」
ユウトとリュッカは部屋を出た。
寮の靴置き場で靴に履き替えて外に出た。
「こうして歩いていると昔を思い出しますね」
「そうだな。よく一緒に遊んだな」
「はい」
「昔といえばリュッカはよく本を読んでいたよな?」
「はい。物語などを読んでいました。ユウ君、どうして物語のお姫様は金髪なのですか?金髪のお姫様はいないはずですよ」
確かに公式で知られている王家の髪の色はフィルニア王国は紫がかった藍、ロメリル帝国はライトグリーンだったはず、ミスリティア共和国は王制ではないのでお姫様がいない。
でも、
「そうか。リュッカは、あいつが王家って知らないのか」
「あいつ、誰ですか?」
「俺達4人で遊んだだろ?」
「4人、えーと、ユウ君に私、彼女、そして…えーと―」
「忘れたのか?」
「だ、大丈夫です。すぐに思い出します。えーと、リーナですか」
「ああ。あいつ王家だよ」
「でも、共和国は王家がいないはずでは?」
「確かに今はいないけど、昔はいたけど、共和国になったときに王家は田舎でひっそりと暮らすことになったらしいよ」
「なるほど」
「だから、物語に出てくるお姫様は共和国のお姫様をモチーフにしているか、もしくはエレナみたいに金髪の貴族をモチーフにしているのかもな」
そうした他愛もない話をしていると食堂に着いた。
「よう、ユウト、リュッカちゃん」
「おっちゃん、おはよう」
「おはようございます」
「ほれ、朝食だ」
オムレツ、野菜のシチュー、サラダそして焼きたてのパンが乗ったプレートを渡してきた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ユウトとリュッカは空いている席に料理を持っていき、座った。
「「いただきます」」
朝食を少し食べたところでスティア、エレナ、フレイヤ、レイシアが朝食を持ってやってきた。
「おはよう」
「おはようございます」
「「「おはよう」」」
「おはようですわ」
4人はユウトとリュッカと同じテーブルに座った。
「ユウト、今日は眼鏡なのだな」
「ああ。この後も本を読もうと思って、な。やっぱり似合っていないか?」
「似合っている」
「似合っているわ」
「似合っていますわ」
「似合っているよ」
「似合っています」
仲の良くないのに5人は息が合ったように言う。
「そ、そうか」
ちょっと引き気味にユウトは答える。
「ところで、今日はどうするの?」
フレイヤが訊く。
「依頼でも受けるか?」
「そうしよう」
「うむ」
「はい。ですわ」
「はい」
「ええ」
「やりたい依頼は何かあるか?」
ユウトが訊くと、5人は考えていた。
「まあ。見てから決めればいいか」
そう言いユウトは再び朝食を食べ始めた。




