炎より熱く 11
ユウトはフレイヤが壁を溶かすところを見届けて、
(本当にやるとは、な)
まさか壁に穴を開けるような魔法をぶっつけ本番で使うとは、ユウトも正直驚きを隠せない。
(それにあの魔法、俺がオリジナルに創った魔法だから、再現するのは難しいはずだよな)
1目見ただけで魔法を再現するのは才能なのだろう。
その点も含めてフレイヤは天才なんのだろう。
「フレイヤ大丈夫か?」
「ええ。ちょっと疲れただけだから。あんたは大丈夫?」
「ああ。制服が焦げただけだから問題ない。フレイヤは少し休んでくれ。あの2人は、俺が倒すから」
ユウトは壁の中から出て、アリスとシャガールの前に立った。
「あらー。まさか出てくるとは思わなかったわ」
「俺もフレイヤが出してくれるとは思わなかったぜ」
ユウトは苦笑いをして言う。
「それで、あなたがあたし達を倒すのん?」
「ああ。チームのリーダーだからな。かっこいいところくらい見せたいからな」
「それは叶わないわん。シャガールやっておしまいなさい」
シャガールは無言でさっきのように両手を合わせた。
でも岩の壁は出てこなかった。
「シャガールどうしたのよ!?」
「…魔法が出ない」
「もういいわ。あたしがやるわ」
アリスが手を叩いて魔法を発動させようとした。
だが魔法が出なかった。
「どうして魔法がでないのよ!!」
アリスは焦ったように言う。
「やらせると思っているのか?」
ユウトはアリス達に言い放った。
「ユウトあなた、何したのよ」
「地面にマナ障壁を張った」
「そんな無茶苦茶な」
「だろうな。だけど、これで終わりじゃない」
ユウトは右手をアリスとシャガールの方に向けた。
「闇を照らす華よ、儚く散り舞える魂よ、白き花びらで輪廻ごと焼き払え」
そうユウトが唱えるとユウトの身体に幾つもの魔法陣が現れる。
火属性の第5階梯魔法、人が使える最高レベルの魔法。
そのクラスの魔法を使える魔法使いなど歴史を探しても片手の指で数えられるほどしかいない。
でもユウトは使うことができた。だけどあの子を除いて他に誰も見せたことがなかった。
そして魔力を失ってしまい2度と使うことはないのだと思っていた。
だけどさっきのフレイヤのやり取りで一時的に魔力が戻ったようだ。
刻々と魔力が失われているがこの魔法を使うのには十分な量はある。
魔法陣が現れたことにより焦ったのかシャガールはユウトに向けて突進した。
だがユウトはそれをマナ障壁で防いだ。
突進を防がれたシャガールは魔斧をユウトに向けて振りおろした。
ユウトはその斧の刃を左手で掴んで、シャガールの腹部を蹴った。
腹部を蹴られたシャガールは元居た場所まで飛ばされた。
ユウトはそれを見て、魔法を完成させるために心を無にして、母親から教えてもらった異国の雪のように散る白い花をイメージした。
「アリス、シャガール壊れるなよ」
ユウトはアリス達に向かって言った。
「桜火 百花繚乱」
何もなかった空間から白い花びらがはらはらと落ち始めた。
花びらが地面に落ちるとそこから火柱が発生した。
ユウトはその花びらを操り、アリスとシャガールの方へ向けた。
吹雪の様な花びらがアリスとシャガールを包み込んで、幾重にも火柱が立ち上がり、アリスとシャガールは見えなくなった。
火柱が消えたあと2人は地面に倒れていた。
「次はあの4人だ」
ユウトはリュッカ達が戦っている相手に向かって花びらを向けようとしたが、
脱力感に襲われて身体が動かせない。
その所為で花びらが消えてしまった。
どうやら魔力が尽きたようだ。
「くっ」
意識が遠退いていく、
バタッ
ユウトは地面に倒れた。
ユウトが目を覚ますとそこは白い天井が見えた。
どうやら試合中に倒れた為、医務室に運ばれたようだ。
「試合はどうなったんだ?」
ユウトが独り言を言うと、
「あたし達の負けよん」
カーテンの向こうからアリスの声が聞こえてきた。
ユウトはカーテンを開けるとアリスが隣のベッドに座っていた。
その隣のベッドにはシャガールが寝ていた。
「ユウト、あなたのチームがあたし達のチームに勝ったのよん」
「そうか」
「それにしても、あなた最後の魔法凄かったわ。あれは第5階梯魔法よねん?」
アリスは微笑みながら訊く。
(ばれていたか。まあ、魔法陣も出ていたししょうがないか)
「ああ。そうだ」
「第5階梯魔法を使えるなんて、あなたはあの最強の魔王クラスの力を持っている。そしてあなたは黒髪に白いロングソードの魔剣を使っている。つまりユウト、あなたは―」
「あー、それ以上は言わないでくれるか」
「わかったわん。人には言えないような秘密が1つや2つくらいあるしね」
そう言いながらアリスはウィンクをした。
「すまないな」
「それにしても、あなたがねぇ」
アリスはユウトをじっと見る。
「アリス、もうそろそろフレイヤ達がその話は終わりにしてくれ」
ユウトがそう言うとドアが静かに開いた。
そしてフレイヤ達が入ってきた。
「ユウト!!」
ベッドから身体を起こしているユウトの姿を見てフレイヤが1番最初に口を開いた。
「よう。初勝利おめでとう」
「初勝利おめでとうってそんな他人行儀みたいに」
「そうだな。でもみんなの力で勝ったようなものだからな」
「あんたの力が1番大きいのよ」
「まあ。それは置いといて、みんなはどうしてここに?」
「ユウトさんの様子を見に来ましたの」
「そうか。ありがとうな」
ユウトは微笑みながら言う。
「ユウ君。調子はどうですか?」
「別にいつもと同じだな」
「そうですか」
ちょっとほっとしたような表情でリュッカは言う。
「ユウト。君は本当にすごいのだな」
スティアは少し興奮気味になりながら言う。
「ん?何がだ?」
「君の魔法だよ。あんな綺麗な魔法は見たことがないぞ」
「まあ。あれは俺のオリジナルだからな。見たことなくて当たり前だ」
「そうか。魔法を使っていた君はまるで、彼のようだったぞ」
「黒髪だからな。見えてもしょうがないな」
ユウトは勘づきそうなスティアを適当にあしらう。
「ユウト!!」
「フレイヤどうした?」
「あ、あのね。あんたがあたしに言ったことなんだけどね」
「言ったこと?」
ユウトは首を傾げて訊く。
「あ、あんたが、あ、あたしのことをす、好きって言ったことよ」
「「「「!?」」」
フレイヤが顔を赤くして言った言葉にリュッカ達4人は驚いたような表情をする。
「ユウトさん、どういうことなのですの!?」
「ユウト君説明してくれるかしら?」
「そうだ」
「そうです。説明してください」
それぞれがユウトに説明をするように言う。
「あれは別に告白みたいな意味じゃなくて尊敬するとかそういう意味で言ったんだけど」
ユウトがそう言うと4人はほっとしたような表情をしたが、フレイヤは顔を赤くして肩を震わせていた。
「フレイヤなんか勘違いさせて、ごめんな」
「……」
フレイヤは無言でユウトの腹部を殴った。
「痛っ!!」
「べ、別に、あ、あたしあんたのことなんか好きでも何でもないからいいわ」
「じゃあ、殴んなよ」
「1発殴らないとあたしの気が収まらないの」
「そうかよ」
「おかげですっきりしたわ」
「それはよかったな」
ユウトは皮肉を込めて言う。
「ええ。これからもよろしくね」
フレイヤの顔つきは何かすっきりとしていて、まっすぐと意志の強い瞳になっていた。




