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炎より熱く 10

 壁の中は2人でいるにはかなり余裕があるくらいだ。

 ユウトは壁を触ってどんな状態になっているのかを調べていた。

「ユウト…」

 壁の中に閉じ込められてから黙っていたフレイヤが口を開いた

「どうした?」

「ごめん」

 フレイヤは暗い表情で頭を下げる。

 目には涙が滲んでいる。

「何謝っているんだよ」

「あたしの所為で作戦が…」

「謝る必要はねえよ。別に作戦が失敗しているわけじゃないんだから」

「えっ?」

「見たところこの壁は常に魔力を送り込まないと崩れるみたいだから、シャガールは絶対そこにいるし、アリスも同じような魔法を使っているはずだから、2人とも揃って俺達を封じる壁を保つために近くにいるから、ほとんど作戦どおりだ。だから泣くなよ」

 ユウトはフレイヤの頭をくしゃっと撫でた。

「な、泣いてないもん」

「はいはい。泣いてない、泣いてない」

 ユウトはフレイヤが泣きやむまで頭を撫で続けた。


 ユウトとフレイヤがドーム状の壁に閉じ込められて残されたメンバーは動揺したが、むこうのチームは手を休めてはくれないので、応戦するしかない。

水鉄砲ウォーターショット

 牽制にリュッカは相手に向かって放った。

 相手は水鉄砲をかわして接近してくる。

(少しでもエレナの負担を減らします)

「はああ」

 エレナはリュッカとレイシア、スティアに向かってくる相手の足どめをして後ろに攻撃が行かないようにする。

「氷のアイスアロー

 スティアはエレナとリュッカが抑えている敵に的確に氷の矢を放ち相手の魔装具を凍らせる。

暗闇ブラインド

 レイシアも闇属性の魔法で敵の視界を邪魔する。

 今はこちらの方が優勢に戦えているが、アリスとシャガールがこちらに来たら確実に負けてしまうだろう。

(ユウ君、信じています)

 リュッカは岩と氷でできた壁に閉じ込められた彼を想った。


「さて、どうしようか」

 ユウトは泣きやんで目元が少し赤いフレイヤに話しかけた。

「どうするって、壊すしかないでしょ」

「壊したいけど無理だな」

「どうしてよ」

「俺の剣でもこの壁は壊せそうにないからな」

 建物を破壊することができる1撃を放つことができるユウトの魔剣でも壊すことができない壁、そんなのどうやって―

 考えていると、フレイヤは以前ユウトが魔獣の攻撃を防いでいたのを思い出した。

「ユウト、あんたが魔獣の攻撃を防いだ技で何とかならないの?」

「ディスペルか?あれでは無理だな」

「どうしてよ」

「ディスペルの仕組みから話したほうがいいよな。あれは―」

 ユウトがディスペルの仕組みを話した。

 簡単に言うなら、ディスペルは手で触れた魔法の魔法式を書き変えて、威力を0にする。

 相手の魔法に干渉するなど聞いたことがなかったがユウトならできる気がした。

「だから掌で触った魔法以外は干渉できないし、あの壁の様に威力を変えても消えないようなものには意味がないんだ」

「そうなの」

 道が見えたようだったが、その道も塞がってしまった。

(やっぱり、あたしのせいで…)

「フレイヤ、自分を責めるな」

「あたしがちゃんとしていれば…」

「なあ、フレイヤ。どうしてぼんやりしていたんだ?」

「昨日、ユウトがあたしを庇って怪我をしたことを考えていたの。今度は足を引っ張らないようにって、でもまた足を引っ張っちゃった…」

 フレイヤがそう言うとユウトは優しく微笑み、

「フレイヤ、今度気をつけてくれればいいんだよ」

「でも―」

「あんな短刀に刺された程度じゃあ怪我に含まないよ。傷だって残ってないし」

「……」

「だから、あまり気にするな。フレイヤは真っ直ぐ前だけを見ていればいいんだよ」

「前だけを見る」

「ああ。うじうじしているなんてフレイヤらしくないし、俺はいつもの真っ直ぐなフレイヤが好きだからな」

「す、好き!?」

 ユウトが何気なく言った言葉が頭の中に響く。

(こ、告白された!?)

 顔が熱くなっていく。きっと顔は真っ赤になっているに違いない。

「ああ。だから、俺の為にも後悔ばかりしていないでいつものお前に戻れよ」

 さっきまでのマイナス思考だった頭の中がプラス思考に代わっていく。

「わ、わかったわ」

 まだ告白されたことによる動揺があるが、気は楽になった。

(でも、本当に告白されたかわからないしね。ちゃんと確認しないと)

「ね、ねぇ。ユウト」

 緊張で声が震える。

「どうした?」

「聞きたいことがあるの」

「なんだ?」

「ゆ、―」

「ゆ?」

「ゆ、ユウトが言う怪我ってどれくらいなの?」

(違う、そんなこと聞きたいわけじゃないのにー!!)

 緊張のあまり別の質問をしてしまった。

「骨が折れてからが怪我だな。短刀で刺される程度なんて日常茶飯事だからな」

「そ、そう。もう1ついい?」

「いいよ」

 今度は間違えないように、呼吸を整えて、

「ゆ、ユウト。あ、あんた、む、胸が小さい子と大きい子どちらが好き?」

「へ?」

 フレイヤの質問にユウトは目が点になっているようだ。

「えーと、言わないと駄目なのか?」

「駄目よ!!」

 自分でもどうしてこんなに興奮しているのかわからない。

「別に胸なんか関係ないって言いたいけど、前そう言ったら怒られたからな。だからちゃんと言った方がいいよな」

 ユウトは独り言を言っていたが覚悟を決めて、

「あんまり、胸が大きすぎるのはどうかと思うから小さい方が好きだな」

 ユウトは少し恥ずかしそうにしながら言う。

「ち、小さい方が好きなんだ」

「いや、別に胸で人は判断しないぞ」

 そうユウトは言うがフレイヤには届いていない。

「そうなんだ」

 今にでもガッツポーズをしたいがユウト近くにいるのでしない。

(で、でもどうしよう。ユウトの顔をまともに見ることができない。でもこのままでも駄目よね)

「ユウト。目を閉じなさい」

「え?」

 ユウトはよくわからないという表情をしていた。

「だから目を閉じなさい!!」

「わ、わかったよ」

 フレイヤの威圧感に押されぎみにユウトは返事をした。

 ユウトが目を閉じた。

 フレイヤは目をユウトに顔を近づける

 ドクン、ドクン、ドクン

 心臓の鼓動が聞こえるくらいまで大きく鳴っている。

(なんでこんなに緊張してるのよ!!)

 自分に落ち着くように言い聞かせ、ユウトの唇に口づけをした。

「え?」

 ユウトはまた目を点にして驚いていた。

(キスしちゃった。でも想いを伝えるのは恥ずかしい)

「フレイヤ何を?」

(何かいいわけしなきゃ)

「こ、これはあれよ。騎士がよくやっているあれよ」

 フレイヤは自分でも苦し紛れの嘘だと思うが、

「誓いの口づけか?」

「そ、そうよ」

「あれは手の甲にするんだよ。」

 ユウトはすんなりと信じたようだ。

「で、何を俺に誓ったんだ?」

「え、えーと」

 正直そこまで考えていなかった

「あ、あたしの魔法をあんたの為に使うって誓ったのよ」

 自分でも驚くくらいちょうどいいようなことを言えた。

(でも嘘じゃないのよね)

 ユウトの為に自分の魔法を使いたいというのは真実だ。

「そうか。でも別に誓わなくてもいいんじゃないのか?」

「いいじゃない。あたしはあんたの為に使いたいのよ!!」

「わかったよ。だからそんなに怒んなよ」

 ユウトはなだめるように言う。

 そしてユウトは周りの壁を見て、

「にしても、どうやってここから出よう」

 軽くため息をつきながら言う。

「あたしの魔法でどうにかならないの?」

「うーん。火力が足りないかもな。あれ耐久力だけは高いからな、壊そうと思ってもな…あっ!!」

 ユウトは何か閃いたようだ。

「どうしたのよ」

「1つだけここから出る方法がある」

「言ってみなさい」

「熱で岩を溶かす」

「できるの?」

「一応な、でも火の第4階梯以上の魔法を使わないと駄目だがな」

「第4階梯の火属性魔法…。ねえ、ユウト、あたしも火属性の魔法が使えるのよね?」

「ああ」

「じゃあ。あたしがやるわ」

「できるのか?」

「あたしを信じなさい」

 フレイヤがそう言うとユウトは微笑んで、

「ああ。任せた」

「任せなさい」

 フレイヤは岩の前に立ち、右手をかざす。

 自分でああは言ったができるかどうかはわからないが、やるしかない。

 でも、いつもより調子がいい気がする。

(どうして?ユウトにキスをしたから?)

 そのおかけで今ならあの魔法が使える気がする。

 彼が自分を助ける為に使った魔法を

「炎より熱き焔よ、紅蓮に燃やし、我が敵を討ち払え」

 第4階梯以上の魔法の詠唱は第3階梯以下の魔法の詠唱と違い、具体的な詠唱になっている。

 フレイヤの右手に赤色の魔法陣現れる。

「緋きクリムゾンブレイズ

 緋色の炎が右手から出て、岩の壁を燃やし始めた。

 ほとんど密閉したような空間でこの焔を使えば、マナ障壁が使えないユウトは熱で焼かれてしまうだろ。

「フレイヤ、俺のことは気にしないで全力でやれ!!」

 こちらの様子を見てユウトは言う。

 フレイヤは魔力を魔法陣に込める。

 岩を燃やした。次第に壁の中の温度が上がっていく。

「はああああああ」

 更に魔力を込める。

 すると次第に岩が溶けていき、穴が開く。

 少しずつアリス達の顔が見えてくる。

「なんで…」

 穴が広がるにつれてアリスの顔が驚愕の色に染まっていく。

 そして焔は岩と氷の壁を溶かし、壁の外に溢れ出た。


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