炎より熱く 9
日付が変わり、あと数分で試合が始まる。
試合会場である第3演習場には生徒達が集まっていて、控室から演習場に続く廊下にいるユウト達に生徒達の話声が聞こえる。
「まさか第1試合とはな」
ユウトの試合は今年の対校戦の選抜戦初めての試合だ。
そのため対校戦に出ない生徒や戦力を偵察する生徒が来ていた。
「人が多いです。多少緊張します」
「そ、そうわね」
「そうね」
「う、うむ」
それぞれ多かれ少なかれ緊張しているように見える。ただ1人以外は、
「ふっ。わたくしの華麗な戦う姿に酔いしれるといいですわ」
エレナは胸を張りながら、髪をふわっと掻きあげて言う。
「エレナ、お前は緊張しないの?」
「ええ。当然ですわ。この程度で緊張などあり得ませんわ」
「はは。それはいいな」
エレナの様子を見てユウトは笑う。
「それにしても情けないですわね。フレイヤ・スカーレット」
「う、うるさいわね。あんたと違ってあたしはこういう試合はやったことがないのよ」
また2人喧嘩を始めようとする。
そんな姿を見てユウトは苦笑いをして、
「緊張もほぐれたことだしそろそろ行こうか」
「「「「「ええ!!」」」」」
ユウト達はフィールドに出ると、
「異端者がAクラスに入ってるんじゃねえよ」「くそ、美女ばかりのチームを作りやがって」「死ね!!」
1番最初に聞こえてきたのはやはりユウトに対する罵倒だった。
数少ない男子生徒達の嘆きの様な罵声だった。
『さあ、やってきました。つい最近Aクラスに入ったユウト・フィルナンス率いる第26班が入ってきました第26班は全員Aクラスで男女比が1対5というハーレムなチームですね。聞いた話によるとユウト・フィルナンスが他の5人の弱みを握っていて、それで脅しているということです』
実況をしている生徒が身も蓋もないようなことを言う。
だけどユウトは気にしていないように苦笑いをして見ている。
「言いがかりにもほどがありますわ!!ユウトさんも言い返したらどうですの」
ぷりぷりとエレナが怒る。
「別にいいんだよ。言いたい奴は言わせておけば」
「でも―」
「ほら、試合であいつらになにも言えなくなるような力を見せつければいいんだよ。下手に言い返してもあいつらが喜ぶだけだからな」
そうユウトが言うとエレナは唇を噛んでうつむいた。
「あらー。ユウトもう来ていたのん?」
ユウト達が出てきた方とは逆の入り口から入ってきたアリスがユウトに話しかける。
「まあな。もう開始時刻だろ?だからいるのが普通だろ」
「そうよねん。あたしのチームを紹介するはわん。みんなー」
アリスが自分のチームメイト達を呼んだ。
アリスのチームメイト達はアリスとシャガール以外は普通の容姿をしていた。
「……」
シャガールは黙って凝視していた。
「シャガール、挨拶くらいしなさいよ」
「……」
アリスが注意をするが、シャガールは無言でユウトを見ていた。
まるで捕食者が獲物を見つめるような目つきで、
巨大な彼の身体の所為もあって、威圧感が出ていた。
(すごいプレッシャーだ。何かこの試合にかけるものがあるのか)
ユウトの額に一筋の汗が落ちる。
「なあ、アリス。お前のチームはどんな集まりなんだ?」
「あたし達、全員男色家なのよん。だからチームを組んだのよん」
アリスは自分達のチームメイトの共通の趣味をばらした。
アリスのチームは全員男色家。
堅物で真面目なシャガールも?
いや、性格と趣味は関係ないか。
(シャガールもそうなんだな)
ユウトはもう1度シャガールを見た。
シャガールの鋭い目と目があった。
やはり捕食者の様な目でユウトを見ていた。
「……」
しばらく沈黙が続く。
「ユウト、そろそろ始まるわよ」
沈黙を破ってフレイヤがユウトに話しかける。
「ああ。わかった。じゃあアリス試合でな」
そう言いユウトはアリス達から離れた。
フレイヤ達と共にフィールドの端に来ていた。
「みんな、絶対勝つぞ」
「「「「「ええ」」」」」
それぞれ自分の魔装具を取り出して開始の合図を待った。
『両チーム準備はいいですか?』
ユウトとアリスは審判役の教諭の声に頷いた。
『それでは開始します。スペルバトル、ファイト!!』
審判役の教諭の開始の合図が有ったが誰1人動こうとする者はいなかった。
(おかしい、なぜ近づいてこない?)
アリスのチームは1人以外全員接近戦用の魔装具を持っている。
それに対してユウト達はユウトとエレナ以外は全員遠距離と中距離用の魔装具を持っている為、速攻で近づいてくるはずだが…
(罠か!!)
ユウトは急いで周りを見回した。
足元に黒い靄が渦巻いていた。
「みんな、その場から飛び退け!!」
ユウトが叫ぶとフレイヤ以外はそれぞれに飛びかわす。
フレイヤはぼんやりとしていた。
「フレイヤ!!」
ユウトが叫ぶとはっとした表情になって、飛び退こうとするが黒い靄に脚を掴まれてしまい動けなくなっていた。
動きを止めたということは大技が来るはずだ。
(間に合え!!)
ユウトはフレイヤの元に駆けた。
「何しているんだよ!!」
「ユウト」
「動くなよ。すぐに解放するから」
「う、うん」
ユウトは魔剣で黒い靄を切り裂いた。
黒い霧は切り裂くとすぐに消えた。
「ほら、逃げるぞ」
ユウトがそう言うとアリスは口元を上げて、
「あらあら逃がすと思っているのかしら?シャガールやるわよん」
「……岩壁」
シャガールが両手を合わせた。
するとユウトとフレイヤの周りの地面から岩の壁が飛び出て。
「これはおまけよん」
アリスがそう言い、パンっと手を叩いた。
するとシャガールが作った壁の上から氷の壁を作りだした
そして、その壁はユウトとフレイヤを包んだ。




