炎より熱く 6
ユウトはかれこれ8分くらい水の中にいる。
ゴミを拾っていると言ってもほとんどがビンで、他のゴミはあまりなかった。
(にしても、流石水の精霊の住処だな。水が澄んでいて、端から端まで見えるもんな)
こうして水の中を泳いでいると、昔のことを思い出す。
(昔はよく母さん達といろいろ遊んだな)
かくれんぼと称して鍛えられたものだ。
地上にいたら感知魔法に気づかれて見つかったので、魔法をかわす為に水の中に魔法を使って、潜っていたらマナを調べられて見つかった。
だから水中に魔法を使わないで長く潜っていられるように鍛えられたものだ。
(今思うと、あれはかなりきつかったけど、楽しかったな)
『ユート、大丈夫?』
『ユート、おいしい?』
『ユート、ユート、ユート』
『ユート、無茶しないでね……』
彼女との思い出も思い出す。
(あと少し、あと少しだ。だから多少無茶だろうがなんでもするしかない)
そう覚悟を決め、ゴミを拾いながら泳いだ。
ゴミももうないようだ。
(もうそろそろ上がらないとフレイヤ達が心配するからな)
ユウトはゴミを持って、底から水面に向かって泳いだ。
「ぷはー」
水面から顔を出して、数分ぶりの空気を吸う。
フレイヤ達の方を見ると、フレイヤ達は男達と戦っていた。
戦況はフレイヤ達が男を1人倒しているが、相手はチーム戦に慣れていて、数の差や力はフレイヤ達の方が勝っているが、有利とはいえない。
戦いに集中しているのか誰1人ユウトに気が付いている様子はなかった。
「助けないとな」
ユウトは音を立てないようにして、水から出て、拾ったビンに魔力を込めて全力で男の1人に投げた。
「ぐぁ」
男の頭に思いっきり当たった。
ビンの当たった男は気絶して、思いっきり地面に倒れた。
残りの2人はユウトの方を見た。
「お前、俺の仲間になにしやがる!!」
片方の男が怒気を含ませて叫び、短刀を振りかぶった。
ユウトは何事もないように男の腕をつかみ地面に叩きつけた。
「ぐふ」
男は背中から打って息がうまくできていないようだ。
「うおおおおおおおお」
もう1人の男もやけくそで突っ込んできた。
男の攻撃をかわし、鳩尾に一撃加えた。
「げふ」
最後の男も気絶して倒れた。
「ふう。みんな大丈夫か?」
ユウトはフレイヤ達の方を見た。
フレイヤ達に怪我はなさそうだったが、かなり疲労していた。
「こいつらは何なんだ?」
そう言い、フレイヤ達に近寄っていった。
ピクッ
フレイヤ達が倒したはずの男が動いたような気がした。
(倒しきれてない?リュッカまでいるのにそれは無いはず)
「盗賊団だそうだ」
「なるほどな」
「うおおおおおおおおおお」
フレイヤ達が倒していたはずの男が立ちあがり、短刀を握り、フレイヤに向かって走ってきた。
(くそ。油断していた)
男とフレイヤの距離と男の速さを考えると、男を倒すにはギリギリ足りない。
ユウトは全力でフレイヤのところまで走った。
ザクッ
ユウトがフレイヤの前に立った瞬間、男がユウトの腹部に短刀を突き刺した。
「ぐっ」
痛みで顔がゆがむが、奥歯を噛みしめて男を殴った。
マナ障壁に拳が防がれるがそんなの気にしないで、更に力を込めた。
パリン!!
マナ障壁が割れた。
「はああああ」
ユウトは男の顎を殴った。
ゴキッ
骨が砕けるような音がした。
男は顎を殴られたので気絶した。
気絶してもう戦えないはずだ。
なのに、腕が止まらない。
(血が熱い。なんなんだよ、これ。戦えない相手に手を上げたくないのに止めれない)
ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ。
1発、また1発。ユウトは衝動に任せて男を殴る。
「くっ」
5発目を殴り、6発目を殴ろうとする左腕をなんとか右手で掴み、止めた。
「はあはあ」
まだ血は熱いが、男を殴りたいという衝動は収まった。
「ぐっ」
左手で腹部に突き刺さった短刀を引き抜いた。
短刀を引き抜いた腹部から紅い血がどんどん出るが、
ユウトは気にしないで、ズボンから石を1つ取りだした。
その石は通信魔石と言い、事前に魔石どうしを触れさせて共鳴させることによって、遠くにいる人と話ができるという魔石だ。
ユウトはその魔石を耳に当てて、
「おい、聞こえるか?」
『ああ。聞こえるよ。君から掛けてくるなんて珍しいじゃないか』
魔石から軽い口調の声が聞こえてくる。
ユウトが通話をしている相手はルービナだ。
「俺達が精霊の涙を取りに来ているのは知っているよな?」
『もちろん。それでどうしたんだい?』
「来た湖に盗賊がいた。そいつらを輸送して欲しい」
『わかった。至急兵士を送ろう。場所はどこだ?』
「静寂の湖と昔は呼ばれていた湖だ。頼むぞ」
『ああ。怪我人はいないか?』
「俺以外は負傷している奴はいないぞ」
『君は大丈夫なのか?』
「ああ。問題ない。じゃあ切るぞ」
『そういえば、君に伝えないとならないことがある。学園に戻ったらチームメイト達を連れて学園長室に来てくれ』
それを言い、通話が切れた。
するとすぐに兵士達がきて盗賊団を捕まえて行った。
「ねぇ。ユウト大丈夫?」
「ん?」
「あたしを庇って刺された怪我は大丈夫なの?」
「ああ。大丈夫だよ。傷も塞がったみたいだし」
「え?」
「ほら」
ユウトはシャツを上げて腹部を見せた。
血はついていたが傷口は塞がっていた。
「ちょ、ちょっと、見せなくてもいいから!!」
フレイヤは顔を赤くして言う。
「そうか」
ユウトはシャツを下した。
「って、あんた、その目どうしたの!?」
フレイヤはユウトの顔を覗きこむ。
「目?」
「あんたの目、紅くなってるわよ」
「紅くなっている?」
ユウトはリュッカ達の方を確認のため見ると、
リュッカ達はユウトの方を向いて頷いた。
「そうか」
「大丈夫なの?」
「問題ないよ」
ユウトは微笑んだ。
「あれ、色が戻った!?」
どうやら目の色が元に戻ったようだ。
「ユウトお兄ちゃん。血など汚れがついているから、汚れを落としてあげるのです」
「頼むよ」
「わかりました。水」
ディーネは水をユウトにぶっかけた。
「水よ。集まれ」
びしょびしょになったユウトの服から水気を取り除いた。
「ふう。ありがとう」
「これくらいお安い御用なのです。あとユウトお兄ちゃんこれどうぞ」
液体の入った小瓶をディーネがユウトに渡す。
「ありがとう」
ユウトはディーネの頭を撫でた。
するとディーネは気持ちが良さそうに目を細めた。
「じゃあ。俺達行くからな」
「はい。わかったのです。また来てくださいなのです」
「ああ。もちろんだ」
「みなさんもまた来てくださいなのです」
「ええ。また来ますよ」
ユウト達は湖を後にした。




