炎より熱く 5
ディーネがユウトから貰ったクッキーの袋を開けて、
「みなさんも一緒に食べましょう。話したいこともありますし」
笑顔でフレイヤ達に言う。
フレイヤ達もそれにしたがってディーネの近くに座った。
「みなさんはユウトお兄ちゃんとどういう関係なのですか?ユウトお兄ちゃんは恋人ではないって言っていました。でも、想い人は居ないとは言っていませんでしたし」
ディーネのその言葉はフレイヤ達を凍らせた。
(もしかして、ユウトはあたしのことが好き?)
そう思うと顔が赤くなる。
でも、ユウトとの出会いを思い出した
『俺、年下には興味がないんだ』
確かにそう言ったが、年下だと犯罪になるからで、同い年なら問題ないということで、幼い体型の方が好きということなのかもしれない。
(ってことは、あたし。あいつのストライクゾーンど真ん中!?)
そう考えると顔が熱くなってしまう。
その熱を掃うために顔を左右に振るとそれに合わせてツインテールが揺れる。
(で、でもあたしは、べ、別に…。でもあいつ、そ、そのかっこいいよね)
フレイヤはユウトが自分を魔獣から守ってくれたところを思い出した。
その姿が昔の恩人の姿と被る。
その人は5年前の魔法祭の決勝の前日、家族と喧嘩をして、泊っていたホテルから飛び出て、魔樹の出る森に迷い込んでしまった。
その森でフレイヤは魔樹に襲われてしまい、逃げ惑っていたときに彼が魔法を使って助けてくれた。
でも、彼はフレイヤを庇ったため、背中に大きくX字状に深い切り傷を受けてしまった。
彼は明日魔法祭の決勝があるのに、自分を庇って怪我を負ってしまった。
でも彼は気にした様子もなく、フレイヤを森から出してくれて、
『君はどうしてあの森にいたんだ?』
泣きながら事情を彼に説明したら、彼はフレイヤの頭を撫でて、
『仲直りできるといいね』
と言う。
フレイヤが泣きやむまで頭を撫でてくれて、
フレイヤが泣きやんだ頃には、フレイヤの両親が捜しにきていた。
『じゃあ、僕は行くね』
フレイヤは、彼の名前を訊いた。
『僕はアレックス・フェルニティだよ』
その時、初めてフレイヤは彼がアレックスだと知った。
彼は名前だけを言ってどこかに消えてしまった。
そんな彼とユウトが被る。
(確かに黒髪で魔剣使いだけど、剣の長さが違うわ)
でも、
(強さは学生レベルを超えている)
クッキーを1つ掴み、齧った。
そのときフレイヤは気がついた。
「ね、ねえ。みんな、ユウト上がってきた?」
そう言うと、ディーネ以外ははっとした表情をして湖を見た。
湖にはユウトの姿がなく、泡1つすらなかった。
「ゆ、ユウトさんどれくらい潜っているのですか?」
「か、かれこれ6分くらい潜っているはずわ」
フレイヤ達に焦りが出てくる。
チームのリーダーが溺死なんてシャレにならない。
そんな思いがフレイヤ達を包む。
「ゆ、ユウ君!!」
リュッカは叫んで、湖に顔を突っ込んだ。
しばらくした後、リュッカは顔を湖から離して、
「なにも見えません」
「この湖もかなり大きい方なのです。だから上がって来なくても普通なのです」
ディーネは気にしていない様子で言う。
ガサガサ
茂みの方から草をかき分ける音が聞こえてきた。
「誰か来る」
「ディーネさん隠れてください」
「別に私が精霊だとばれなければ問題ないのです。だから、隠れなくてもいいのです」
そうやって話している内に茂みから4人の男が出ていた。
「げっ。魔法学校の生徒がいるぜ」
茂みから出てきた男達はフレイア達の姿を見て嫌な顔をする。
男達の姿は全員同じような黒い服を着ていて、口元を布で覆い隠していた。
「あなた達は誰ですか?」
リュッカは男達に訊いた。
「俺達はかの有名なカゲギ盗賊団だ」
胸を張って男達は言う。
「ねぇ、スティア。あの方達知っていますの?」
「いや、知らないぞ。レイシア、君は?」
「私も知らないわ」
どうやら誰も知らないようだ。
「で、その盗賊団がここに何の用なのよ」
「当然、精霊の涙を取りに来た。と言いたいが―」
男は言葉を途中で止め、フレイヤ達をなめまわす様に見て、
「まさか、貴族のお嬢様達がいるとはなぁ。運がいいぜ、お嬢様方を捕まえて売れば、一生遊んで暮らしていけるぜ」
下品な笑みを浮かべて言う。
「全く、庶民の男性は下品で汚らしいですわ。やっぱりユウトさんみたいな上品な方はいないのですわ」
「ユウ君は特別です。他の男と比べないでください。比べるなんてユウ君に失礼です」
「あなた達、ユウト君の話はいいから自分のことを守ることに集中しなさい」
「私もお姉ちゃん達に力を貸します」
「来るわよ」
男達との戦闘が始まった。




