炎より熱く 1
チームを組んで2日が経つ。
ユウトはAクラスの編入試験を受け、無事合格することができ、Aクラスに今日から入ることになった。
「今日からこのクラスに編入する奴が来るぞ」
Aクラスの担当教諭、確か―、
シエラという名前の女教諭が教卓の前で言う。
その言葉で教室がざわつく、
「誰だろう?」「Bクラスの生徒かな?」「かっこいい男の子だといいなー」「どんな属性をつかうのかしら」
バンバン!!
シエラ教諭が名簿帳を教卓に叩いた。
「お前ら静かにしろ。編入生、おまえもドアの前で待っていないで早く入ってこい!!」
(あんたがいいって言うまで入るなって言っただろ)
ユウトはそう思ったが、口には出さずにドアを開けた。
生徒が20人の教室で男子が4人、女子が16人というクラスだった。
「嘘でしょ」「なんで彼が…」「でも、彼かっこいいよね」「魔法が使えないのにどうして」
歓迎されている雰囲気はあまりなかった。
(だよな)
大体想像通りの反応で少しだけ安心した。
でも3番目の人には触れないようにしよう。
「ぼさっとするな!早く自己紹介をしろ」
「はい」
ユウトはシエラ教諭に急かされて、自己紹介を始めた。
「皆さん知っていると思いますが、ユウト・フィルナンスです。これからよろしくお願いします」
ユウトが自己紹介を終わらせようとしていたら、
「もっと何かないのか」
そう言い名簿帳で頭を叩こうとしてくる。
ユウトは頭を下げてかわした。
「ほう。初見で私の攻撃をかわすとはな」
シエラ教諭は口元を緩めたが、すぐに元の真面目な顔つきに戻り、
「編入生、自己紹介が終わったなら、お前も早く座れ」
「わかりました」
ユウトはそう言い、席を探した。
フレイヤ、スティア、エレナ、レイシア、リュッカの隣の席は空いていた。
お互いバラバラの席に座っていた。
(チームなのになんでバラバラに座っているんだよ。もうちょっと近くに座れよ)
あまり仲が良くないことは知っていたが、チームであることを自覚して欲しかった。
(さて、俺はどうしようか)
―フレイヤの隣
―エレナの隣
―スティアの隣
―レイシアの隣
―リュッカの隣
ユウトはぐるりとその席を見る。
それぞれ、ユウトと目が合うと何か期待しているような表情をしていた。
一応、チームのリーダーとしてチームに手本を見せる為に誰かの隣に座るのもありだが、誰かだけを優遇せずに、中立の立場で接した方がいいのだろう。
ユウトは周りに誰もいない右端の1番後ろの席に座った。
じー
隣に座ってもらえなかった5人がユウトの方をジト目で見てくる。
「こら、前を向け」
シエラ教諭が名簿帳をバシバシ叩きながら言う。
フレイヤ達は前を見た。
「お前らも知っていると思うが今日から対校戦まで授業がない。だからお前達は意地でも代表チームになれるように切磋琢磨しろ」
シエラ教諭はそれだけ言って教室を出て行った。
ユウトが教室から出ていいのか様子を見ていた。
「ちょっと、あなた」
「ん?」
見るとさっきから3番目に話していた人だった。
「あたしはアリスよ」
「アリスか。よろしくな」
ユウトが何事もないように言うとアリスは眼を丸くして驚いていた。
「どうした?」
「あたしを初見で普通の人のように扱ったから、ちょっと驚いただけよん」
アリスはユウトより背が高く、街を歩けば普通に女性に声をかけられるような美男子だが、ネイルや軽い化粧をして、仕草や言葉使いが女性ぽく、いわゆるオネエというものだ。
ユウトは昔、そういう人が多くいる店で働いていたことがあるので特に気にならなかった。
「別にどんな容姿をしていようと関係ないだろ。大切なのはその人がどんな人かだろ」
「あらー、いいこと言うじゃない。ますます気に入ったわ。あたしのチームに入らない?」
「悪いがそれは無理だ。俺にはあいつらがいるからな」
ユウトはこちらの様子をうかがっているフレイヤ達の方を見た。
「残念だわ」
「すまないな」
「いいのよん。でも、これだけは覚えておいた方がいいわよ」
「なんだ?」
「あなたは自分の心はどうなっているのかをよく考えた方がいいわよ。そうしないと手のひらから、すべてすり落ちるわよ。あなたはいろいろ壊れているみたいだし」
「え?」
アリスの最後の言葉の意味がわからなかった。
ユウトが考えている内に、
「それじゃあね」
アリスは教室から出て行ってしまった。
「心…俺が壊れている…どういうことだ?」
全く意味がわからない。
「ユウト、アリスと何話していたのよ」
フレイヤがいつの間にか傍に来ていた。
「軽い挨拶とチームに入らないかって言われた」
「もちろん断ったわよね」
「当然だろ。俺がお前らを誘ったんだから、俺が抜けたら駄目だろ」
「そうよ。あんたはあたし達のリーダーなんだから責任持ってやりなさいよ」
「わかっているって。それよりも依頼を受けに行こうぜ」
「そうね。どんなのを受ける予定なの?」
「みんなに相談してから決めようかとは思っているけど、最初だから簡単なものにしようかな」
「妥当な判断ね。あたし達も魔法がほとんど使えなくなったしね」
フレイヤ達と戦った後フレイヤ達は魔法が第1階梯しか使えなくなってしまった。
「んじゃあ、みんなに声かけてくるよ」
ユウトは席から立って、他のメンバーのところに向かった。




