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足りない力5

 ユウト達は第5演習場に来ていた。

「確認するけど、演習場に入ったらスタートということでいいな?」

「ええ」

 フレイヤが返事をする。

 他の4人も頷く。

「んじゃあ、始めようか」

 そう言いユウトは光の中入っていた。

 第5演習場は市街地になっていて、フィンクイルそっくりの街並みが広がっている。

「さて、どうするか」

 ユウトは辺りの気配を探ったが、誰も近くにはいなかった。

 このフィールドは半径1キロの円になっているから、最初から傍にいる方が珍しい。

「さて、どうしようか」

 ユウトはそう言いながら、ここに入る前にリュッカに言われたことを思い出した。


「ユウ君、対校戦の相手は絶対彼女が出ると思います」

「彼女?」

 ユウトはリュッカに訊いた。

「ユウ君知らないのですか?今年、共和国に入った新入生のことですよ」

「みんなは知っているのか?」

 ユウト以外全員知っているという様子だった。

「ああ。有名だからな」

「有名?」

「あんたそんなことも知らないの?」

 フレイヤが小馬鹿にしたように言ってくる。

「ああ。他校の情報とか調べないからな」

 元々対校戦に出るつもりがなかったユウトは他校について興味がなかった。

「しょうがないわね。あたしが教えてあげるから感謝しなさい」

 フレイヤは腕を組み言う。

「感謝するよ」

「それじゃあ言うわよ。その新入生はね―」

「闇と光以外の属性の魔法を使えるそうですわ」

 フレイヤの言葉を遮って、エレナが言う。

「ちょっと、エレナ!!あたしが話しているのよ!!」

「こういうのは早いもの勝ちですわ」

 エレナはさらさらの髪を手でふわっと払った。

「あんたはいつもあたしの邪魔ばかり。この金髪バカ!!」

「バカですって、このわたくしをバカ呼ばわりとはなんなのですの。この赤髪貧乳!!」

 2人とも今にも飛びかかって喧嘩をしそうな状態だった。

「なあ。あの2人止めなくてもいいのか?」

「問題ないぞ。彼女達はいつもあんな風だから」

「そうか。それで6属性が使える新入生は珍しいかもしれないけど、いないってわけでもないだろ?なのに、なんでそんなに有名なんだ?」

 普通の人2、3属性を使うことができるが、たまに6属性を使うことができる人がいる。

 学生で6属性を扱うことができるなんてかなりレアだろう。

「ユウト君、それがね。その新入生は得意の風の魔法は第4階梯の魔法が使えて、他の属性も第3階梯まで使えるらしいのよ」

「それはすごいな」

 ユウトは正直、驚いた。

 普通、得意な属性だけを使うため、他の属性を蔑ろにしがちだ。

 でもその新入生は得意な風属性は第4階梯、

 第4階梯の魔法が使えるといったら、大魔道士クラスの魔法使いだ。

 他の属性も第3階梯、

 普通の人が使える最高クラスの魔法。

 そんな魔法を使う新入生が共和国にいる。

 魔法の使えない自分がそんな相手に勝てるのだろうか。

 ユウトがそんな風に考えていると、

「そこでユウ君に頼みがあるのですが」

「頼み?」

 この学園で最強の称号である生徒会長をしているリュッカの頼み。

 この流れでいったら、鍛えてくれと言われるのだろうか。

「私達の心を折ってください」

「え?」

 まさか、そんなことを頼んでくるとは思わなかった。

「心を折るってどうして?」

 ユウトは訊いた。

「このままいっても彼女には勝てないでしょうし、強くなるためには自分の中の壁を乗り越えなければならないのです」

「心なんて簡単に折れないだろ」

「いえ。ユウ君なら私達の心くらい簡単に折れるでしょう。あなたが本気を出せば」

「俺はいつも戦うときは本気だよ」

「いえ。あんな、相手の様子に合わせた戦い方ではなく、ユウ君本来の戦い方ですよ。そちらの方を本気でやってください」

 魔力がなくなって4年が経つ、

 魔力がなくても、戦えるように、人の動きを見る為、相手の動きに合わせて戦うということをしていた。

 5年前まで使っていた剣技を封じて、

 正直、そっちの戦い方のほうが楽しいので、ユウトは戦い方を好んだ。

「前の戦い方か」

「ええ」

 剣技を使えば、できるかもしれないが…

 剣技は基本魔法と合わせて使う技だが、魔法を使わなくても使える技が多い。

 剣技をあまり使うと、フレイヤ達にアレックスだとばれるとめんどうなことになるから、使いたくなかった。

 だけどリュッカには貸しがあるからやるしかないだろう。

「別に前の戦い方をしてもいいけど、魔法が使えなくなってもいいのか?」

 魔法は心に大きく関係しているところが多く、心が弱れば、魔法の威力が弱くなったり、気持ちが昂れば、魔法の威力が強くなる。

「私は強くなりたいのです。その為に一時的に魔法が使えなくなってもいいのです」

「みんなは、チームでもない奴にやられてもいいのか?」

 ユウトはリュッカ以外にも訊いた。

「心が折れれば、あたしも強くなれるの?」

「さあ。でも乗り越えられれば、何か見えるかもしれないな」

 ユウトがそう言うと、フレイヤはしばらく考えて、

「ユウト、あたしもいいわ。強くなりたいもん」

「そうか」

「わたくしもいいですわ。わたくしが弱いなんてありえませんの」

「うむ。私も彼に1歩でも近づきたいのだ」

「私はユウト君になら心折られてもいいわ。魔法が使えなくなったらユウト君が守ってくれそうだし」

 全員同意した。

「わかった。俺も本気でやるよ」



「とは言ったけど、心を折るなんてどうするんだよ」

 ユウトは建物を触った。

 フィールドの建物は魔法で作られていて、破壊すると消えるようになっている。

「リュッカは私達を圧倒的な力で倒せってことだろうけど、普通にフレイヤ達の能力をみたかったんだがな」

 共和国に強い生徒が入らなければ、

 この学園最強のリュッカですらメインは第4階梯、サブは第1階梯までしかつかえないので、その生徒に勝つためには劇的に強くなるしかない。

「はあ。全くなんでこうも楽に進まないんだろうな」

 ユウトはため息をつく。

「でも、やるしかないよな」

 彼女の為にも、なにがなんでも勝つしかない。相手が誰であっても、

 フレイヤ達をチームに引き入れて、フレイヤ達を強くなってもらうしかない。

 フレイヤ達を利用していると、後ろめたい気持ちがあるが、心を無にして戦わなければならない。

(全ては彼女の為に…)

 頬を1回叩いて、気合いを入れた。

「よし、やるか!!」

 ユウトは腰に挿してある魔剣の柄を右手で握り、構えた。

「居合い」

 そう言い、抜剣した。

 ユウトが斬った形に斬撃が飛んで行き、建物を斬り裂いた。

 斬撃が通った後には何も残らず、更地になっていた。

「曲刀用の技は辛いな」

 ユウトの使う剣技はほとんどがユウトの母が創ったもので、ユウトの母はカタナという東方に伝わる曲刀を使っていた。

 その剣技をユウトは直剣用に変えたが、身体に負担のかかるようになった。

 居合いはユウトが直剣用に変えるのに1番苦戦した剣技で、

 剣の先に魔法をかけて、火や雷を付与して、剣を抜く勢いに任せて振ることによって、魔法の剣撃を飛ばすという技だ。

 ユウトは魔法がかけることができないので、直接魔力を乗せて振るということをしている。

「さて、みんなを探すか」

 ユウトは周りのマナを調べた。

 300mくらい東のところに5か所マナが集まっている場所があった。

 でも5か所とも動く様子もなかった。

「みんなのところに行こう」

 ユウトは駆けた。


 建物が謎の斬撃が飛んできて、身の危険を感じて、それをなんとか爆発魔法で防いだ。

 防ぎきった後に残ったのは建物が全て破壊されて更地だけが残っていた。

「何なのよ。これ…」

 フレイヤは目の前の出来事を信じることが出来なかった。

 1回の攻撃で街を全壊させるなんて、ありえない。

「けほけほ」

 近くから咳き込むのが聞こえた。

 見るとエレナが近くにいた。

 エレナ以外にもユウト以外全員が近くにいて、全員、魔法で斬撃を防いでいた。

 何が起こったのか全員わからない様子だった。

 静寂がフレイヤ達を包む。

 だけどすぐにその静寂は打ち破られた。

「いたいた」

 ユウトがこちらに向かって来ていた。

「ユウ君がやったのですか?」

「ああ」

 ユウトは頷いた。

「正直言って、ここまでできるとは思いませんでした」

 リュッカは苦虫を噛みつぶしたような表情をしていた。

「で、どうする?」

 ユウトはフレイヤ達に訊いた。

「私はもう魔力が尽きたから戦えないわ」

 レイシアは膝をついて座って言う。

 フレイヤは魔力が尽きたというわけでもないが、魔法を使っても勝てる気がしなかった。

「私も降参だ」

 スティアがユウトを真っ直ぐ見て、言う。

 スティアもユウトに魔法を使っても勝てないとわかっているようだ。

 スティアだけでなく、ここにいる誰もがユウトには勝てないとわかっているようだ。

「わたくしも降参ですわ」

 高飛車で負けず嫌いのエレナが負けを認めるなんて、

 1撃で街を破壊するよりも衝撃的だった。

 リュッカも降参してしまい、残りはフレイヤ1人になった。

「フレイヤはどうする?」

「あたしも降参よ」

 どうして、ユウトが人間離れした身体能力を持っているか、わからないが、今の自分では彼に勝つどころか、傷をつけることすらできないということはわかった。

 力の差がここまで開いているなんて、

(あたしってこんなに弱いんだ)

 自分の力の未熟さに悔しさを持って、彼を見た。


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