足りない力4
ユウトが小屋に戻ると、小屋の中に誰かいた。
「リュッカ。休むんじゃないのかよ」
ユウトはさっきまで話していた生徒会長のリュッカ・フランドルに訊いた。
「ユウ君とお話したかったのです」
「まあ。4日ぶりだからな」
ユウトが生徒会長としてではなく、幼馴染として話した。
「ユウ君。肩を揉んでください」
「どうしてだよ」
「私は疲れているのです。あなたと私は許婚なのですよ。だから肩くらい揉んでくれてもいいじゃないですか」
「しょうがないな」
ユウトは渋々リュッカの肩を揉み始めた。
「気持ちがいいです。ユウ君」
リュッカはうっとりとしている。
「それはどうも」
「ところでユウ君」
「どうした?」
「とうとう計画を実行するのですね」
「ああ」
「ユウ君。私も協力しますから、約束を守ってください」
「ああ。わかっている。全てが終わったら、君の元にいくよ」
ユウトがそう言うと、リュッカはユウトの方を向いて、
「ユウ君…」
熱っぽい瞳で頬を染めて、顔を近づけてくる。
「リュッカ」
リュッカに両手で顔を抑えられて、動かすことが出来ない。
お互いの息が届くくらいまで近くにリュッカの顔があった。
リュッカは眼を閉じて、さらに近づく。
カタッ!!
壁にかけていた白い魔剣が倒れた。
「!?」
リュッカは驚いてユウトから離れた。
「ユウ君との逢瀬を邪魔しないでください」
リュッカは魔剣に向かって、言う。
「むう。気がそれました」
頬を膨らませながら言う。
「ところでユウ君。女の子と仲が良さそうですね」
「そうか?」
「ええ。スティアやエレナは仲がいい理由がわかりますが、残りの2人との仲の良さの理由がわかりません」
「フレイヤは、リュッカがいないときにちょっとな」
「ちょっとですか?」
「ああ」
「ユウ君、隠すってことは何かやましいことでもあるのですか?」
「や、やましいことなんて…」
ユウトはフレイヤの裸を思い出して、顔を赤くする。
(何考えているんだよ)
ユウトは首を振って、思い出した記憶を消した。
「その様子では図星のようですね。怒らないので話してください」
「わかったよ」
ユウトは頬を1度かき、フレイヤとの話をした。
「そうですか。ユウ君、それは大変でしたね」
「怒らないんだな」
「ええ。フレイヤさんの裸を見たのは事故ですし、ユウ君に落ち度はないのですから、怒りませんよ」
「そっか」
「それで、王女様の方はどうなのですか?」
「レイシアは―」
ガチャ
ユウト話している途中に小屋のドアが開いた。
「ダーリン。遊びに来たわ。って」
レイシアが入ってきて、ユウトとリュッカを見た。
「ダーリンですか?」
リュッカはいつもより低い声で言う。
「リ、リュッカ!?」
ユウトはリュッカの様子をみて慌てて名前を呼んだ。
「ユウ君、大丈夫ですよ。悪いのは全部この女なのでしょう?」
「リュッカ、話を聞いてくれ」
「聞きますよ。この女の処理をしてから」
リュッカは右手でユウトの魔剣を持って、構えていた。
白い魔剣はユウトにしか振ることができないはずなのに、リュッカは軽がると振っていた。
「リュッカ!!」
「大丈夫ですよ。―も斬れと言ってますし、死体の処理も私の魔法を使えば大丈夫ですよ」
リュッカの眼が沼のように暗くなっていて、白い魔剣は妖しく輝いていた。
「ふひ、ひひひ。ははははは」
リュッカは不気味に笑っていた。
「てい」
ユウトはリュッカの頭にチョップをして、魔剣を奪った。
「痛いです」
リュッカの眼は元に戻り、魔剣の輝きは消えていた。
「痛いじゃねえよ。リュッカ、半分汚染されてたじゃねぇか」
「汚染ですか?」
「適格者以外があの魔剣に触れると、精神が汚染されて、狂うぞ」
「そうですか」
「だから触れるなよ」
「わかりました。勝手に触ってすみません」
「レイシアも入口でいないで入ってきたらどうだ?」
「ええ」
すたすた。
レイシアが入ってくる。
すたすた。
レイシアがユウトの隣にくる。
ストン。
レイシアがユウトの右側に座る。
じー。
リュッカが見つめてくる。
すたすた。ストン。
リュッカがユウトの左側に座る。
「2人ともどうして俺の隣に座るんだ?椅子はあっちにあるのに」
「ダーリンの側がいい」
「私もユウ君の側がいいです」
2人ともユウトにくっつく。
「ちょ、ちょっと2人とも」
ユウトは両手に感じるやわらかい感触でドキッっとしてしまう。
「それよりもユウ君はこの人のことを話してください」
「ああ。わかったよ」
ユウトはリュッカにレイシアの話をした。
「なるほど。魔法祭のときに国王様に婚約の話が有ったわけですね」
「ああ」
「だからダーリンと呼んでいるのですね」
「ところでダーリン。そちらの生徒会長とどんな関係なの?」
「幼馴染」
「許婚です」
ユウトとリュッカが同時に言う。
「どちらなの?」
「どちらも正解だよ。俺とリュッカは幼馴染で許婚なんだ。でも、俺は4年前に家を出た人間だから、許婚は解消されたはずなんだけどな」
「そうなの」
「ですが4年後、私とユウ君はこの学園で再会したのです。これは運命と言わなくてなにを運命と言うのでしょう」
リュッカは自慢げに言うが、
「運命か…」
ユウトは暗い表情で言う。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
ユウトは頭を振って、記憶を振り払った。
「ところで、ダーリンと生徒会長の不仲説があったはずなのだけど」
「不仲説?ああ!!俺がリュッカに挑戦しまくっているからだな」
「あと、私がユウ君のことを冷たく他人行儀のように扱うからですね」
「だから、不仲と言われているのね。でも、生徒会長さんはどうしてダーリンのことを他人行儀に扱うのかしら?」
レイシアが訊くと、
リュッカは顔を赤くして、
「だって、ユウ君との仲をばれるといろいろ勘ぐられますし、あとユウ君の正体がばれるとライバルが増えますし」
「ライバル?」
ユウトは首を傾ける。
「ユウ君がこんな風だから、私は―」
「しっ。誰かがそこにいる」
ユウトはリュッカの話を遮り、周りの気配に集中した。
数は3人、全員同じ所にいる。
(こんなところに来るのが誰だ?レイシアを狙う帝国の兵士か?)
とりあえず、全員捕まえて話を聞けばいいか。
ユウトはリュッカにアイコンタクトをして、小屋を出た。
「そこにいる3人、出てこい!!」
ビクッ!!
3人とも驚いている気配がする。
3人とも逃げる様子もないのでユウトは3人に近づいた。
すると、赤、青、黄の頭が見えてきて、ユウトは知り合いだとわかった。
「フレイヤ、スティア、エレナどうしてここに」
「「「あ、あはは」」」
3人とも気まずそうに笑う。
「こそこそしていたから、てっきり帝国の兵士かと思ったぜ」
「私達が帝国の兵士ですって!!」
フレイヤはユウトの言葉に怒り気味で返事をする。
「しょうがないだろ。それよりも、どうしてみんなは盗み聞きなんかしていたんだ?」
「う、うむ」
3人とも、ユウトの求めている答えを言わない。
「はぁ、あまりこうゆうことをしたくはないんだがな」
ユウトはそう言い、スティアのあごを右手で持ち上げた。
「ふ、ふぁ。ユウト、な、なにを」
スティアの顔はみるみる赤く染まっていく。
「ほら、言えよ」
ユウトがそう言うと、スティアの目は熱っぽくなっていて、とろけてしまいそうになっていた。
「はうー」
スティアは話せる状態ではなくなってしまった。
エレナは口をぱくぱくしている。
でも代わりにフレイヤが口を開いた。
「ちょっとあんた何しているのよ!!あたしが答えるからスティアを離しなさい」
「わかったよ」
ユウトはスティアを離した。
離されたスティアはへなへなと地面に腰を落とした。
「姫様があんたの小屋に入っていくのを見たからよ。あんた達の関係を調べるためよ」
「そうか」
「どうして生徒会長までいるのよ!!」
フレイヤがぷりぷり怒る。
「関係について話してやるから怒るなよ」
ユウトはフレイヤの頭を撫ぜた。
「な、撫ぜないでよ」
「いいだろ」
フレイヤはそう言うがユウトの手をどかそうとはしない。
「うう」
フレイヤは顔を赤くする。
「ユウ君、またですか」
リュッカが小屋から出てきた。
「さすがドSのジゴロなだけありますね」
「なんで俺がドSのジゴロなんだよ」
「戦闘の時も相手の技を全部打ち破って、心を折ってからしか勝ちにいかないですし」
「だって、相手がどんな技を持っているかとか知りたいじゃん」
「だとしても、あなたはドSのジゴロです」
「いいえ。ユウト君は鬼畜ドSのジゴロよ」
レイシアが出てきて言う。
「なんで鬼畜までついた!?」
ユウトはレイシアにつっこんだ。
「ユウト君なら好んで首輪をつけさせて散歩させるとかしそうよね」
「俺をどんな奴だと思っているんだよ!!」
「へ、変態!!」
フレイヤはレイシアの言ったことを想像したのか顔を赤くする。
「俺は何もしてねえよ!!」
ユウトはため息をつく。
「つーか、お前ら休む気ないなら、もう始めに行こうぜ」




