赤き爆炎と青き氷10
ユウトは化け物の前に立っていた。
「「「ユウト(さん)」」」
ユウトは3人の方を見た。
「大丈夫―、じゃなさそうだな」
「ユウト、あんた、なんで、素手で魔法を防いでいるの?」
「気にするな。ちょっとしたトリックだから」
ユウトは赤い球体を消した。
「カシャ頼む」
「にゃー」
カシャが白い魔剣に火を噴いた。
白い魔剣が火を纏う。
「はああああ」
ユウトは化け物に向かって駆けだした。
化け物の頭に向かって縦に一閃
キン!!
燃えた魔剣は化け物が頭を甲羅にひっこめたため、甲羅に当たった。
「甲羅に当たっても斬れるつもりだったんだがな、まさか焦げ目ひとつもつかないとはな。帝国もめんどくさい合成魔獣を作りやがって」
ユウトは苦虫を噛み潰したような顔をする。
合成魔獣とは、魔力を持った獣、魔獣を人工的に合成させて造り出すことで生まれる魔獣で、ほとんどの国では禁止されているものだ。
(硬いな。流石にひとりでやるのは辛いか)
ユウトはそう考える。
「戦えるか?」
3人に背を向けて訊く。
「「「もちろん」」」
3人とも返事をしてくる。
「じゃあ手伝ってくれ」
「あたし達はなにをすればいいの?」
「フレイヤとスティアは使える魔法でも1番威力の高いのを用意してくれ」
「わかった(わ)」
「わたくしはなにをすればいいのかしら?」
「エレナは止めを頼む」
「わかりましたわ」
ユウトは再び合成魔獣と戦う。
獅子の爪での引っ掻きを魔剣で受け止めて、炎で焼く、
どちらも決めることができなかった。
「ユウト、あたしは準備できたわ」
「こっちもだ」
「了解、フレイヤは右手の魔剣に、スティアは左手に魔法をぶつけてくれ」
「「え?」」
2人ともよくわからないという顔だ。
「早くしてくれ」
「「でも」」
「いいから。俺を信じろ」
「どうなっても知らないわよ!」
「うむ」
2人ともユウトが言った通り、魔法を使ってくれた。
2つの魔法がユウトの魔剣と左手にぶつかる。
―属性?? 魔法名 爆炎の嵐 威力40
(なんだよこの魔法式。こんなの火属性の魔法じゃない、番外魔法じゃないか。無意識でこんな魔法を創るとは、フレイヤは天才なのかもな)
―属性氷 魔法名 魔氷結 威力17
(よし、魔法式を書き替える)
―属性?? 魔法名 爆炎の嵐 威力50
―属性 氷 魔法名 魔氷結 威力38
ユウトは魔法式を変えることで、威力を使用者の魔力を使った分の最大値まで上げることができる。
合成魔獣はその様子を見て、危機を感じたのか甲羅の中に隠れた。
(予想通りだ)
ユウトは氷の魔法が纏っている左手で甲羅に触れた。
そして、凍った部分に爆炎を纏った魔剣を突き刺した。
「爆ぜろ」
それの一言がきっかけとなり、爆発が起こった。
「エレナ頼む」
「わかりましたわ」
エレナが駆けて行った。
「はああああ」
割れた甲羅から見える肉に雷を纏ったレイピアを突き刺した。
バチッ!!
合成魔獣の身体を電気が走り、黒焦げにした。
黒焦げになった合成魔獣は光の粒子に消えていった。
「やったのか」
スティアはへなへなと座った。
「やったのよ」
フレイヤは喜んでいる。
「制服が汚れてしまいましたわ」
エレナは自分の制服の汚れを見ている。
ギャアアアア
空からもう1体同じ種類の合成魔獣が落ちてきた。
「嘘でしょ」
フレイヤは驚愕の表情で染まっていた。
スティアもエレナも同じ様子だった。
ユウトだけが落ち着いていた。
「だと思った」
ユウトはまっすぐ合成魔獣見つめた。
「みんな、もう1度さっきの魔法を使えるか?」
ユウトは3人に訊いた。
「無理よ。さっきので、魔力が尽きたわ」
「私もだ」
「わたくしも」
3人ともさっきの魔法で魔力を使い果してしまったようで戦える状態ではないようだ。
「俺がやるしかないか」
ユウトは制服の上を脱いで、半袖のシャツになった。
脱いだ制服をフレイヤの方に投げた。
フレイヤは制服を受け取り、
「あんた、何をするつもり!?」
「あいつを倒してくる」
「冗談言わないでよ。魔法も使えないのに」
ユウトはフレイヤの言葉を無視して合成魔獣に近寄っていった。
「カシャ、ちょっとやってくるから離れてくれ」
「にゃー」
カシャは一鳴きして、ユウトの肩から飛び降りた。
グルアアアア
ユウトに向かって、合成魔獣が電気の玉を吐いた。
ユウトはそれを跳躍してかわし、合成魔獣の頭上をとった。
右手を後ろに引き、落下の勢いとともに拳を合成魔獣に振り下ろした。
「天砕衝」
天砕衝とは、ただ落下の勢いを利用して殴るという技だ。
だけどユウトの拳は、人間では魔法を使わないと壊せないマナ障壁を砕き、鋼鉄よりも硬い甲羅を砕き、砂煙が舞った。
「けほけほ」
離れているフレイヤ達の方まで砂埃が届いた。
砂埃が晴れると地面には小さなクレーターが出来ていて、合成魔獣は光の粒子になっていた。
クレーターの中心でユウトが立っていた。
「いつっ」
ユウトの右腕は内側から爆ぜたような怪我をしていて、血が溢れ出ている。
「あんた、ひどい怪我じゃない!!」
「ん?そうか?」
「そうよ。早く医務室に行かないと」
「別にいいよ。カシャ頼む」
「にゃー」
カシャがユウトの手に飛び移って、ユウトの手を軽く焙りだした。
「ユウト!!君は何をしているんだ!?」
「見てわからないのか?手を焼いて、傷を塞いでいるんだよ」
「むちゃくちゃですわ!!」
「そうか?これが1番効率的な方法だと思うんだが。やっぱり焼けた石を当てた方がいいな」
ユウトは平然と言うが、3人はかなり引いていた。
ユウトは右腕を動かした。
「よし。いけそうだな」
「どこに行くのよ」
「あれを放った奴を捕まえてくる」
そう言い、ユウトは森の中に入っていった。
学園長がすでに兵士たちを倒していて、その周辺には紫色の沼が出来ていた。
「ユウト、君か。その腕の怪我はどうしたんだい?」
「どうしたじゃあねえよ。そいつらの合成魔獣と戦っていたんだよ!」
「そうか。それはお疲れ様だな」
「あんた、言ったよな、生徒は誰も傷つかせないって」
「そうだったね。でも私が見ていた限りでは、生徒では誰も怪我はしてないはずだが」
「だけど、俺が行かなかったら、死者が出ていた」
「君は行った。だから誰も怪我しなかった」
「結果論じゃねえか」
「結果論のどこが悪い。結果が全てだろ?」
「そうだな。だが、次は許さねえよ」
「どうして君がそんなにも怒る。この学園に愛着でも湧いたのかい?」
「愛着なんて湧くかよ。俺はただこの学園にある出場枠が欲しいだけだ」
「君も青春を楽しんだらどうだい?1度しかない学園生活だぞ」
「俺はここに学園生活を楽しみに来たわけじゃない。願いを叶えるために来たんだ。だから楽しむつもりはない」
「そう。ユウト、そんな君にいいニュースが入るかもしれない」
「なんですか?」
ユウトは向こうが学園長モードで話してくるのでユウトも知人としての態度ではなく、生徒として接し始めた。
「だが、まだ確定事項ではないから話すことはできない」
「そうですか」
ユウトは学園長がどんな情報をもたらすのか気になったが、話すことができないのだから今はあきらめることにした。
「僕はもう行きます」
「そうかい。確定したらまた呼ぶとするよ」
ユウトは来た道を戻って行った。
「ユウト、もう少しで君の願いが叶うだろう。そうしたら君は次になにを願う」
ルービナはユウトの背中を見ながら言う。




