赤き爆炎と青き氷8
ケーキを食べ終わり、ユウトは紅茶を飲んでいた。
「ねえ。ユウト、砂糖入れないの?」
「甘い紅茶は苦手だから」
ユウトがストレートで飲んでいるのに対して、フレイヤは砂糖多めのを飲んでいる。
「ユウト」
「ん?」
「魔法が使えないのに、どうしてそんなに頑張れるの?」
「叶えたい願いがあるから」
「叶えたい願い…」
「俺の願いは、この剣の意思を実体化させることだ」
ユウトは白い魔剣を触る。
「実体化」
「俺も昔は魔力があったから、この剣の意思を実体化できたけど今は…」
「どうして魔力がなくなったの?」
「さあ?原因不明だよ」
ユウトはそう言い、紅茶を飲んだ。
「ねえ。その剣の意思って銀髪の女の子?」
「そうだけどなんで知っているんだ?」
「さっき見たのよ。ユウトの隣に立っていたわ」
「そうか。約束守っていてくれているんだな…」
ユウトは魔剣を優しく撫でた。
「でも、なんで俺に頑張れるか訊いたんだ?」
ユウトが訊く。
するとフレイヤの表情が曇る。
「あたし、普通の火属性の魔法が使えないの」
「え?」
ユウトはよくわからなかった、
爆発系は火属性の派生だから火属性の魔法を使う人でも上級者しか使えないはず。
だから、フレイヤが火属性の魔法が使えないのはおかしい。
「あたしね、魔法を使うとね。必ず爆発するのよ」
「爆発か」
(見たところ魔法が暴走しているようではないみたいだが、魔法式の構成が間違っているのか?)
とユウトは考える。
「それでね、あたしの家は火属性を代々使う家だから普通の火属性を使えないあたしは異端なの」
フレイヤは悲しそうな顔をする。
(だから俺に訊いてきたのか)
燃えるような赤い髪、ルビーのような瞳、火属性の家系、魔銃―。
ユウトはその特徴の家に心当たりがあった。
「なあ、フレイヤ。フレイヤの名字ってスカーレットか?」
「そうだけど、どうしてわかったの?」
「貴族でその髪と瞳の色と家の魔法で考えたら、スカーレット家くらいしかないからな」
使える属性は親と同じになることが多い。
「フレイヤは願いとかないのか?」
「あたしの願いは彼に会うことよ」
「彼?」
「アレックス・フェルニティよ」
ブフッ
ユウトは飲んでいた紅茶を噴いた。
「けほけほ」
「どうしたのよ」
「いや、驚いただけだから。でもなんで彼に会いたいんだ?」
「笑わないでよ」
フレイヤは顔を赤くして言う。
「うん」
ユウトは首を縦に振った。
「あたしね。彼に命を助けられたことがあるの。だからそのお礼が言いたいから」
ブフッ
またユウトは紅茶を噴いた。
「なによ」
フレイヤが怒り気味に言う。
「また、驚いただけだから」
ユウトは自分の記憶を漁った。
(やばい。全く思い出せない)
「なあ、その話を話してくれないか?」
「それはできないわ」
「どうして?」
「彼と約束したの。このことは話さないって」
ユウト心の中で過去の自分を責めた。
(もし、フレイヤにばれたときどうするんだよ)
「そうなんだ」
あまり追求しても逆に疑われるのでユウトは追求するのは止めた。
「でも、魔法が使えるようになるってことは願わないのか?」
「うん。彼ならきっとあたしの魔法のこともなんとかしてくれると思うから」
(確かになんとかできるかもしれないが…)
ユウトは心の中で考えた。
「そうだな。彼ならなんとかできるかもな」
ユウト達はローズガーデンから出た。
「ちょっと寄って行ってもいいか?」
「いいけど、どこに行くの?」
「酒場かな」
そう言って、ユウトはフレイヤを酒場に連れて行った。
酒場には昼間から酒を飲んでいる人が沢山いて、賑わっていた。
ユウトは入口近くのボードに近づいた。
「これって、依頼書?」
「そうだね」
ユウトはボードに貼ってある依頼書を何枚かはがした。
「これだけやればいいだろ」
「ねえ、それ全部Aランク以上の難しいやつじゃないの!」
「そうだね」
「なんでそんな難しいやつやるの?」
「お金が沢山もらえるからかな」
「だからさっきのケーキの代金も払えたのね。あれ、あたしの1カ月分のお小遣いと同じくらいだったから、なんで払えたのか不思議だったのよ」
「まあ、あれくらいなら余裕だよ」
ユウトがそう言うと、フレイヤは呆れたようにユウトを見る。
「でも、どうして学園の依頼を受けないの?あれも報酬が高いものもあるのに」
「学園のはいろいろ手間がかかるし、受けられないのがあるからこっちで受ける方がいいんだよ」
「ふーん」
ユウトは依頼書を酒場の店員に渡した。
「はい、確かに受注しました。頑張ってください」
ユウトは受注書を受け取った。
すると奥から声が聞こえてきた。
「これでこの国も…」
「そうだな」
遠くにいるので、あまり聞こえなかったが、話しているのは、ドラゴンの紋章が入った鎧を着ている兵士だった。
「ねえ、ユウトあれって帝国の兵士だよね」
「そうだな」
「どうしてこの街にいるの?」
帝国と今は休戦しているが帝国の兵士がここにいるのはおかしい。
「さあ。でもあんまりよいことは考えてなさそうだな」
「そうね」
「とりあえず、俺が学園長に報告しとくから、帰ろうか」
ユウト達は学園に戻った。
トントン
「2年Fクラスユウト・フィルナンスです」
「入りなさい」
ユウトは学園長室に入った。
「もしかして今日のデートの報告でも来たのかい?」
「デートじゃないですよ」
「まあ、そういうことにしていておいてあげよう」
ユウトは学園長に近づいた。
「なあ、ルービナ」
ユウトは敬語を止めた。
それを受けて、学園長はさっきまでの軽い感じを止めた。
「どうした?」
「街に帝国の兵士がいた。狙いはここだと思う」
「ふむ。気を付けておくとしよう」
「任せても大丈夫なのか?」
「ああ。ここの生徒は誰も傷つけさせはしないさ」
「その言葉、信じるぞ」
そう言いユウトは学園長室から出て行った。
「嵐の前触れにならなければいいが…」
ルービナは外を見ながら言う。




