プロローグ
魔法、それはこの世界、アメルスティアでは誰でも使えるものだった。
魔法の発達により人々の暮らしは豊かとなり、人々にとって魔法はなくてはならないものとなった。
魔法祭、それは1年に1回魔法使いの頂点を決める大会。
「さあ、今年の魔法祭もこれでラストだ!!決勝で戦う2人のうちの1人は、なんと初出場だ!!まず、火竜コーナー、〈旋風の狩人〉のグレン・ミルナース」
実況が紹介すると、魔弓を持った、ブロンドヘアーの青年は観客に向かって手を振る。
「「「きゃあああああああああああああ。グレン様―」」」
黄色い声援がグレンにかけられる。
「水竜コーナー、魔法祭初登場〈千の魔法使い(サウザンドマジシャン)〉のアレックス・フェルニティ」
夜のように黒い髪で右手に白いロングソードを持っている少年は観客に向かって礼をする。
グレンがアレックスに声をかける。
「アレックス君、運が良くて決勝まできたのかもしれないが、君の快進撃はここまでだ。俺はいくら君が子どもだからって手加減はしない」
アレックスはグレンをまっすぐ見て、
「もちろんです。グレンさん。手加減したら、期待している観客の皆さんに申し訳ないですから」
それを聞いてグレンは笑い、
「君の言う通りだね。観客のみんなの期待に添えるように美しく舞うとしようか」
「はい」
再び実況の声が入る。
「2人とも準備はよろしいですか?」
アレックスとグレンは頷く。
「スペルバトル、ファイト!!」
その声が発せられた瞬間、2人は同時に動き出した。
アレックスはグレンとの距離を縮める為に走り出した。
グレンはそれを見越して、後ろに下がりながら魔弓を引く。
「風の矢」
ウインドアローは風属性の第1階梯魔法〈風〉を矢に乗せて放つ、風の魔弓の初歩技術だ。
グレンの弓から風を纏った矢が放たれる。
アレックスは自分の魔剣の刃に左手で触れ、
「風の息吹」
ウイングブレスはウインドの派生魔法でこれもまた風属性の第1階梯魔法だ。
アレックスの魔剣に風の渦が巻きつく。
アレックスは魔剣で迫りくる矢を撃ち落とし、グレンにさらに近づく。
「やあああああ」
アレックスはグレンに魔剣を振り下ろした。
キンッ!!
「アレックス君甘いよ。俺がただの魔弓使いだと思ったら大間違いだ」
グレンは懐からナイフを出して、そのナイフに風を纏わせてアレックスの魔剣を受け止めていた。
「第1階梯魔法の無詠唱でこれを受け止めますか。さすがです」
「いや、君もその年とは思えないくらい強いよ」
「ありがとうございます」
「だから、君には俺の真骨頂と言うべき技を見せてあげよう」
グレンは不敵に笑って後ろに下がり、空向かって飛んだ。
「ウイトルヴィルベ」
空気中のマナがグレンに集まってくる。
「風の第3階梯魔法ですか」
「旋風の魔矢」
トゥルビネ・プファイルは風属性の第3階梯魔法〈風竜の突風〉をグレンがアレンジして、矢に乗せたという、グレンの固有魔法だ。
グレンは弓を引き、アレックスを狙う。
アレックスはまっすぐグレンを見据えながら集中する。
アレックスの周りのマナがアレックスの魔力に共鳴して輝きだす。
それを見てグレンは慌てて魔矢を放った。
「閃光の勇者」
それが合言葉となって、アレックスの魔剣が純白の光を放つ。
「はあああああああああああ」
アレックスは竜巻を纏った魔矢を竜巻ごと切り裂いた。
「飛翔」
アレックスは風属性の第1階梯のフライを唱えて、グレンを追いかけた。
「まだまだ!!」
今度は魔矢を連射して、グレンはアレックスを狙う。
竜巻を纏う魔矢の雨がアレックスを襲うが、アレックスは最小限の動きでそれをかわし、グレンの前まで行った。
「風」
グレンはさっきと同じようにナイフに風を纏わせた。
「はああああああ」
「おおおおおおお」
アレックスとグレンが雄叫びを上げて魔剣とナイフをぶつける。
白色の魔力と緑色の魔力がぶつかって、突風が吹き荒れるが次第に白色の魔力が緑色の魔力を押して行き、ナイフから魔力を消し飛ばした。
パリンッ!!
そんな音を立ててナイフが砕け散り、アレックスは魔剣で袈裟がけに斬った。
「まさか、光属性の第5階梯魔法を使えると思わなかったよ」
グレンはそう言い、気を失った。
このフィールドには魔法がかけられていて、どんな攻撃でも相手を傷つけることができなく、肉体へのダメージは精神へのダメージとなる。
そのおかげでグレンは斬られたのに血が全く出ていないのだ。
アレックスは気を失ったグレンを魔法で地上に運びながら、空から降りてきた。
アレックスが地面に足をつけたとき観客席から大きな歓声が沸いた。
「なんということだ。今年は魔法祭史上、最年少のアレックス・フェルニティがグレン・ミルナースを破り、史上最年少の魔王となった!!」
実況の声が町中に響いた。




