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サマー☆ティーチャー  作者: 佐藤こうじ
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最後の敵★

  挿絵(By みてみん)

 激戦の末、J組を破り決勝進出を果たしたD組。


 D組の生徒達は一旦グラウンドの端に集まり休憩をしている。

 

「いよいよ決勝だな! どこが相手になろうが、さっきのJ組程の強敵ではないだろう。でも油断は禁物だぞ!」

 夏田が選手達に声をかける。

 佐野もそれを受けて、

「皆、先生の言う通りだ。最後まで気を抜かずに行こう!」

 選手達は皆、おう、と気合いの入った返事をした。

 

 事実、バレー部の一年生ではD組の須山と、今戦ったJ組の白鳥以外で際立った選手はいない。

 決勝の相手がどこであろうが、須山のいるD組が有利なのは明らかだった。


 ふと夏田は室井の側に近づき、ひそひそ話のように手を口元に添え、

「どうだ室井、高橋とは何か話したか?」

 その時、側にいた数人が夏田らの方に眼を向けた。

 室井は焦り、

「ええっ、せ、先生……! 何だよ急に……皆に聞こえちゃうよ!」

 何しろ地声からして馬鹿でかい夏田の声である。

 声を抑えたつもりでも、周囲にもろに聞こえている。


「あ、悪い悪い。でも、もういいじゃねえか。皆に大体の事情はバレちゃったんだし」

 バラしたのは夏田だ。

 しかし、そんな事はもうとっくに忘れている。 

 うろたえる室井に、佐野や須山も楽しげな顔で近づき、

「どうなんだよ、室井。高橋とはうまくいきそうか?」

「しかし室井もいい趣味してるな。高橋って、あんまり目立たないけど、よく見ると可愛いよな」


 室井は頬を紅く染め、

「ちっ、違うよ! 別に顔で判断してる訳じゃ……!」

 佐野は悪戯っぽい笑みを浮かべ、

「顔じゃない……とすると、体か! 高橋の身体が目的か! ギャハハハハッ!!」

「な……な……何言ってんだよ!」

「みんなー! 室井は高橋の身体が目的らしいぜーっ!」

「ば……馬鹿っ!」 

 

 などと談笑しているD組の方へ近づく人影。

 皆それに気付き、その男の方へ顔を向ける。


 上下水色のジャージ姿で、髪はぴっちりとした七三分け。

 眼が大きく、睫毛がまるでつけ睫毛のように長い。

 あごはヒゲの剃り跡が青々と残っているが、頬はなぜか化粧したかのように、うっすらと紅くなっている。

 何より異様なのがその歩き方で、まるでモンローウォークのように腰をうねうねとくねらせながら近づいて来る。


「ハアーイ、D組のみなサァン」

 男はD組の生徒達の側まで来ると、ウインクをしてからそう言った。

 戸惑うD組の生徒達。


「あっ……! 保茂山ほもやま先生だ! A組の担任の!」

 誰かがそう叫んだ。


「あらーん、誰かが先に名前言ってくれたわネェ。そう、ワタクシ皆さんの決勝の相手、A組の担任の保茂山ですのよぉ、ヨロピクねぇ~ン」

 と言いながら投げキッス。


 保茂山の異様な風貌と仕草を、あっけに取られて見ているD組の生徒達。

 D組の教室とA組の教室は別の校舎にあり、凄く変わった先生がいるという噂は聞いてたが、実際に間近で見るのは初めてという生徒がほとんどだった。


 保茂山はD組の生徒達を見回し、

「まあ、このクラスって可愛い子が多いわネェ、私のタイプだワァ」

 そう言って、自分の人差し指の先を軽く舐めた。

 可愛いと言っているものの、視線は主に男子生徒の方に向けられている。


「あら、でもあなた髪が長いワネ、校則違反じゃナイノ?」

 佐野の顔を見て、

「放課後、生徒指導室にいらっしゃい。ワタシがみっちり調教……いや、指導してアゲル」

 佐野は驚き、

「ええっ!? 何だよ急に! そんなに長くないだろ!」

「ダメよ、いう事聞かなキャ。ワタシ生徒指導も担当してるノヨ。来なかったら停学処分にしちゃうんダカラ」

「そんな無茶苦茶な……!」

 保茂山は他の男子生徒も指さし、

「えーと、あなたも来なサイ。あっ、あなたも可愛いわね、それからあなたも、あなたもあなたも必ず来なサイネ」

 次々と自分好みの男子生徒に声をかける。

「いーい、もう一度言うわよ。必ず放課後生徒指導室に来るコト。さもなくば停学……」


「コラッ!」


 夏田が保茂山を怒鳴りつける。

 保茂山は夏田の顔を見て、

「あら、何かしら夏田ちゃん、あなたもワタシに調教……いや、指導して欲シイノ?」

「てめえ、男子生徒に悪戯してるって噂だけど、どうやら本当みたいだな!」

「いいじゃないの、別に。教師の特権でショ」

「そんな特権があるかボケッ!!」

 

 保茂山はふうっと大きく息を吐き、

「……あなた、ワタシの邪魔をすると、お尻から血が噴き出す事になるワヨ」

「うるせえな! もうどっか行けよ!」

「じゃあ、こうしましょう。決勝戦でA組が勝ったら生徒指導室に来るコト。A組が負けたら来なくていいワ」

「勝手に決めるな!」 

「言っとくけど、ワタクシこの学校の理事長ともいい関係にあるノヨ。その気になれば、何でも出来るんダカラ」

 そう言って保茂山は足早に立ち去った。


 D組の、特に保茂山から指名されてしまった男子生徒達は不安げな顔をしている。

「先生……」

 夏田は明るく微笑み、

「なぁに、心配するな。別に試合の結果がどうなろうが、行かなくていいからな!」

「……でも、理事長に顔がきくみたいな事言ってたよ」

「そんな事お前らが気にしなくていい! いざとなりゃあ、保茂山だろうが理事長だろうが、俺がぶっ飛ばしてやる!」


 さすがに理事長をぶっ飛ばしたらタダでは済まないだろうと生徒達は皆思ったが、それは口に出さなかった。


 数分後、夏田の買ったばかりの携帯が鳴った。

 

 相手は理事長で、とにかく保茂山の言う通りにして欲しい、との事。


 夏田は「何言ってんだ」と言おうとしたが、その前に電話が切れた。


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