なれあい
カップラーメンの容器の中、おぼれてる俺の意識。箸ですくい上げてもぐったりしてて、もう甦ることもないかな、なんてぼんやりと感じてた。
「ねぇ」
「ーんぁ?」
「なにしてんの」
女が俺のベッドの中に潜って、顔だけを布団から出している。
「なんでさっきからずっとラーメンつっついてるわけ?」
なんで、なんで、なんで? 理由ばっか聞いてんなよ、てめぇは。どうにもうざってぇ。
女がこっちへ近付いて来る。裸で谷間作りゃ、お誘い成功できるとでも思ってんのかよ…
「ねー・ぇ?」
しょうがねぇ、擬死だな。 箸を置いて、テーブルの脇にごろりと横になる。
「え、寝るの」
ちょっとうわずった声、焦ってるな。
「ねぇ」
裸体を背筋になぞりつける。色仕掛けにでたかな。
何されても起きねぇよ。
まぶたから透ける蛍光灯の光。その中に、すくい上げてやったアイツが見えた。
あぁ笑ってやがるよ。いつ生き返っちまったんだろう。
そうだよ。自分でもわかってんだ、もうすぐあの女の元に戻ってくこと。ごめん、とか怒んなよ、とかぼそぼそ言いながら、小さい胸を揉みしだきにかかること。
もっかい死んでろよ。おまえいると、こんな馴れ合いを気持ち悪いって感じちまうんだよ。
頼むから、もう生き返んないでくれ。女、抱きてぇんだ。
まぶたの裏で、意識を押し潰した。潰れた音と一緒に笑い声の切片が飛びだした。
ただ、それを恥ずかしいと思う意識自身をちゃんと死なせたのだ。俺はそうして、ゆっくりと目を開けた。
小説といえないくらい短い作品ですが……;
読んでいただき、ありがとうございました。