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第五話:影の日2日目
目が覚めると、家の中は深く静まっている。
光の日の名残はもうない。
音は薄く、匂いも柔らかく、世界は影の層に沈んでいる。
人間は動かない。
呼吸だけが、一定のリズムで部屋を満たしている。
ぼくはその音を確かめるように、そっと近づく。
布の匂い、肌の温もり、眠りの匂い。
起きているときの人間とは違う、影の日の人間だ。
ぼくは丸くなり、体を寄せる。
人間は目を覚まさない。ただ、寝返りの振動が伝わってくる。
その揺れは、外の風や葉の音と同じくらい、世界の一部だ。
影の日は、こうして一緒に静まる日なのだと、ぼくは知っている。
見なくてもいい。動かなくてもいい。
ただ、同じ影の中にいるだけでいい。
人間の呼吸に合わせて、ぼくの体もゆっくりと沈んでいく。
眠りと目覚めの境目が曖昧になり、時間は形を失う。
光の日なら、こんなふうにはならない。
影の日だからこそ、世界は寄り添う。
ぼくは目を閉じる。
人間の体温と、影の日の静けさに包まれながら、
この家が、自分の場所だと、深く確かめる。




