第三話:光の日3日目
朝の光は昨日よりさらに強く、世界をぎらぎらと輝かせている。
ぼくは目を覚ますと、体が自然に緊張する。今日は光の日の最終日。人間たちはもっと慌ただしく、声も大きく、匂いも濃い。ぼくの鼻は刺激に溢れ、耳は微かな足音も逃さない。
キッチンからは食べ物の香りが立ち上り、流れるように家中に広がる。
人間の動きが活発になると、家具の影や床の反射が生き物のように変わる。
ぼくは慎重に歩く。距離を取りながらも、好奇心が胸をくすぐる。光の日は、遊ぶにも、観察するにも、緊張感が必要だ。
そんなとき、人間の一人がひょいと手を差し出した。
「ニコ、大丈夫?」
ぼくは一瞬ためらったけれど、そっと体を手に寄せる。
人間の温もりが、慌ただしい世界の中でほっとする瞬間をくれる。
膝に乗せてもらい、指先で背中を撫でられると、光の日の刺激が少しやわらぐ。
忙しい日常の中で、触れ合いは唯一の安らぎだ。
膝から降りると、再び家中を観察する。人間の笑い声、物を置く音、椅子のきしむ音…
すべてが今日の世界を形作る。
ぼくはテーブルの下でじっと見守る。時々、尻尾を揺らしながら、彼らの動きを追う。
光の日は楽しい。けれど、同時に疲れる。
それでも、この光のリズムに身を委ね、体と心で世界を感じるのが、ぼくのやり方なのだ。
窓の外の光が傾き始める。
今日の光の日も、もうすぐ終わる。
明日からは影の日が始まる。静けさと眠りの時間がやってくる。
ぼくは少し安心し、少し期待する。光の日を乗り越えた猫の体は、影の日に向けて準備を始めるのだ。




