第一話:光の日1日目
朝の光が、まだ眠そうなカーテンの隙間から差し込む。
ぼくは目を覚ます。長い眠りのあと、世界はまだぼんやりとしているけれど、匂いがぎゅっと詰まっている。小麦の匂い、湿った木の匂い、人間の匂い。すべてが混ざって、ぼくの鼻をくすぐる。
人間たちはまだ動いていない。静かだ。でも、たまに床のきしむ音や、かすかな呼吸の振動が伝わってくる。それだけで、世界は生きているとわかる。
ぼくは伸びをして、毛を逆立てる。光の日の始まりだ。眠りのあと、少しずつ体が温まる。今日は何を見よう、何を嗅ごう。外の景色はまだ遠いけれど、窓の向こうの光がぼくを誘っている。
人間の足音が近づく。匂いが濃くなる。光の日の空気は、こうして人間の動きで満ちていくのだろう。
寝ぼけ眼のまま歩くと、人間が腰をかがめて近づいてきた。
「おはよう、ニコ」と、手のひらがぼくの頭を撫でる。
その温もりに、ぼくの体がふわりと緩む。光の日の始まりは、まだ静かだけど、人間との触れ合いで、世界が少しだけ近くなるのだ。
匂いを嗅ぎ、耳を動かし、ぼくはそっと手に体をすり寄せる。
人間は笑いながら、ぼくを抱き上げて膝に乗せる。
膝の温もりと心臓のリズムが、光の日の世界を穏やかにしてくれる。
眠っていた間に、世界は少し変わったかもしれない。でも大丈夫。ぼくはここにいて、世界の一部であることを確かめるだけでいいのだ。
光が強くなるにつれ、心も少しずつ軽くなる。
ぼくは今日の光の日に備え、ゆっくりと体を動かした。




