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9話 冒険者登録

「そんじゃまあ、嬢ちゃんの冒険者登録でもしておくか?」


 支部長はそう言って立ち上がった。支部長が直々に登録してくれるのだろうか。と思ったが、支部長は再び執務席にと戻った。

 書類も多いし、多忙なのだろう。


「アンナは薬草の査定が終わったと思うから、換金カウンターの方に」

「はーい。じゃあ、シラユキちゃんは冒険者カウンターで冒険者登録しておいて」

「シラユキさんは吸血鬼だから、事情を知ってる私が担当するわ」


 ボクの冒険者登録はジュエルさんがしてくれるらしい。

 確かに吸血鬼だからと変な事が起きる可能性を考えると、ジュエルさんのような知っている人にやってもらいたい。


「お願いします」


 そんな会話を終え、ジュエルさんとアンナとともに、ボクは支部長室を出る。その前に、支部長を睨んでみる。

 すると、支部長が視線に気づき、怪訝な顔をした。


「何だよ?」

「いや………なんでも」


 『鑑定』スキルが発動させられるかと思ったが、発動しなかった。条件を満たしていなかったのだろう。


「うーん………」

「シラユキちゃん、行っちゃうよ?」

「あ、ごめん」


 既に少し先を行っていたジュエルさんとアンナを小走りで追いかける。

 冒険者ギルドのロビーに戻り、アンナとジュエルさんと一度別れる。ボクはカウンターの方へ歩く。

 この建物に入ってすぐにカウンターに向かって、その後も支部長室に行っていて気付かなかったが、この冒険者ギルドは酒場も併設されている。

 カウンターの区画と酒場の区画で一応分かれているが、カウンターの方で待っている冒険者に酔っ払いが絡み酒をしている。

 知り合いのようだし誰も反応しないから、ここではよくある事なのだろう。

 周りの視線を感じるが、特に気にせずジュエルさんがカウンターの奥から出てくるのを待った。


「お待たせ」


 ジュエルさんはそう言って受付の席に座った。金色の髪に青色の目。改めて見ると、どこぞのお姫様と言われても違和感はない。


「冒険者登録をするわよ」


 ジュエルさんはそう言っていかにもといった水晶玉と、紙を取り出した。


「あなたの情報をこの紙に書いてもらうわ。それで書き終わった後は、水晶玉に手を置いて魔力を流して。そうしたら後はこっちで処理するから、それで冒険者登録は完了よ」

「うん」


 ジュエルさんから紙を受け取り、カウンターに置いてあるペンを取ったが、重大な事実に気付く。


「ジュエルさん」

「どうしたの?」

「文字がわからない、です」


 取って付けたような敬語を語尾に付ける。失念していた。どう見ても日本語じゃないし英語でもない。

 言葉自体は喋れているのだから、文字もわかると思ったんだが、文字は言葉と別なようだ。

 よくよく考えれば、そもそも言葉が通じている事もおかしいな。ここは異世界なのに。


「なら、私が代わりに書くから質問に答えて」


 質問は簡単な物だった。名前と性別。そして冒険者になる上でのルールに承諾するかの質問。

 ジュエルさんが書き終えた紙を見ると、質問よりも項目数が多い。

 多分記憶喪失だったり吸血鬼だったりで、省ける質問を省いたんだろう。

 

「水晶玉に触れて。いいって言うまで手は離さないで」


 言われるがまま水晶玉に手を置き、魔力を流す。すると、水晶玉の上にステータスが現れる。



 シラユキ レベル4

 種族 吸血鬼

 性別 女

 冒険者ランク F

 生命力 2143/2143

 魔力 1683/1683

 体力 3456/3844


 【スキル】

 『吸血』『血液魔法(9)』『拳法(6)』『疾走(4)』『跳躍(2)』『軽業(4)』『観察(2)』

 【体質】

 『弱点無効』『再生』『血魔循環』



 ボクの冒険者ランクはF。一番下のランクだろう。まぁ変に優遇されて高い位置から始まるのは一悶着ありそうだしこれでいい。

 前見た時よりもいくつかのスキルの練度が上がり、『観察』のスキルが増えている。



『観察』

 一般併用スキル。

 対象の大まかな(しゅ)や、品質、体調等の目に見えやすい状態を知覚する。

 練度が高いほど間違いが減り、より細かな状態や難しい状態を知覚できる。



 ボクが望んだ『鑑定』スキルに近いものではあるが、少し足りない。

 ボクがステータスを見ていると、ジュエルさんが何かの処理を終えて話しかけてきた。


「よし。これであなたも冒険者よ。〝ディスプレイ〟って詠唱を唱えると冒険者カードを出せるわ。身分証明が必要な時はその詠唱を使いなさい。身分証代わりになるわ」


 アンナが門番の時に使っていた呪文か。この世界では詠唱と呼ぶらしい。


「それじゃあ、冒険者ギルドの説明をするわね。まず冒険者ギルドは、冒険者達と依頼者達の仲介を行う組織よ。とはいえ依頼者がギルドの方に直接来る事はほぼないけれどね」

「?それで依頼ができるの?」

「ええ。ギルドには非冒険者専用の入口もあってね。そこで依頼をする事ができるの。この制度は以前、調子に乗った冒険者が依頼者に大怪我をさせた事があって、再発防止のために本部が取り決めたの」


 確かに、力を持った冒険者が一般人を攻撃すれば大怪我をしかねないのはその通りだ。対策をするのは当然だ。


「話を戻すわね。こっちのカウンターは4種類あって、冒険者カウンター、依頼カウンター、換金カウンター、相談カウンターがあるわ」


 依頼所や換金所、相談所ではダメだったのか。長いから言いづらい。

 ジュエルさんがカウンターの引き出しから資料を取り出した。文字は読めないが、それぞれのカウンターのマークを指さしながら教えてくれる。


「まず、冒険者カウンターは今いるここね。ここでは冒険者登録やパーティの斡旋や登録ができるわね。登録解約やパーティ解消もできるわ。

 次に依頼カウンター。依頼カウンターは依頼の受注と達成報告、依頼解消をする場所ね。後は依頼について詳しく質問する事もできるわ。ギルドで把握できている事に限られるけど。

 そして換金カウンター。これは採取系の依頼や討伐系の依頼の時に主に使うわね。手に入れた素材や遺物、宝なんかを換金する事ができるわね。

 最後に相談カウンター。さっきの3箇所で相談できない事を相談する所ね。例えば冒険者講座の受講予約とか、冒険者同士のごたごたとか………」

「そんなガキが冒険者かぁ?」


 早速、冒険者同士のごたごたが始まりそうだった。ジュエルさん、フラグ回収が早くないか。


「ちょっと、冒険者同士の喧嘩は禁止です!彼女には今冒険者の説明を………」

「冒険者になる前に教えてやろうと思ってよぉ。この業界の厳しさってやつをよぉ。お前みたいなガキが冒険者やるなんざ5年早えってよぉ」


 確実に酔っ払いだ。酒場にいる人達は、ニヤニヤとやじを飛ばすか、気にせず、もしくは気付かず酒を飲んでいる。

 カウンターの方にいる人達は心配そうにこっちを見ている。何人かはグリールとやらに制止の声をかけているがグリールには聞こえていない。


「冒険者ランクDのグリール様がなぁ!」


 そう言ってグリールはボクに殴りかかってきた。

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