第2話 目覚めたらタイムスリップしてました
「ここは、一体何処なんだ・・・?」
自分自身の不注意で友人である優斗の目の前でトラックに撥ね飛ばされ、忽然とその姿を消してしまった零夜はそんなことを呟きながら目を覚ました。
目を覚ました零夜の目に映ったものは、シミだらけの古びた茶色い天井であり、室内を軽く見渡してみると今自分自身が居る部屋の内装は現代のものではなく、一昔前のものばかりだった。
零夜は今まで一度も見たことも訪れたこともない部屋を見渡しながら軽い混乱状態に陥っている中、"ガラガラ"という鈍い音を立てながら襖の扉が開き、一人の少女が部屋の中に入って来た。
「目が覚めたみたいね、体調の方はどう?」
「特に体調とかには問題はないみたいだけど、君は一体誰でここは何処なんだ?」
「私の名前は梅崎蜜柑で、ここは私のおばあちゃんが大家をしているミカン荘っていうところよ」
「ミカン荘っていうのか・・・。それで、何で俺は君のお婆さんが大家をしているミカン荘で目を覚ましたんだ?」
「それは、貴方がこのミカン荘の前で倒れていたからよ、いつものように玄関の前を軽く掃除しようと外に出てみたら貴方が倒れていて、慌てておばあちゃんに話したらひとまず空き部屋になっているこの部屋に運ぶように言われたから、夏子さんと一緒に貴方をこの部屋に運んだのよ」
「夏子さん・・・?」
「夏子さんはこのミカン荘の住人の一人よ、今は仕事で外に出てしまっているからここには居ないけど、今日は残業がない日だって言っていたから夕方ぐらいには帰ってくるんじゃないかな?」
襖の扉を開けて零夜が居る部屋の中に入って来た少女は長い髪を三つ編みのツインテール状にまとめ、水玉模様のワンピースに身を包んでいた。
零夜はそんな少女に対して、"少女の名前と今自分が居る部屋"のことを聞くと、少女は"梅崎蜜柑"という名前だけを名乗るという簡単な自己紹介をしたあと、ここは自分の祖母が大家をしている"ミカン荘"だと答えた。
それを聞いた零夜は更に続けて、"何故、自分はそんなミカン荘で目を覚ましたのか"と聞くと、蜜柑は"ミカン荘の前で倒れていたから"と答えた。
「そうなのか・・・。それは、あとでその夏子さんっていう人にもお礼を言わないとな・・・。それにしても、このミカン荘は昭和の文化でも意識してるのか?」
「えーと、貴方は一体何を言っているの・・・?今は昭和なのだから、このミカン荘が昭和の文化を意識しているのは当然のことじゃない」
「えっ・・・今なんって・・・?」
「聞いていなかったの・・・!?今は昭和なのだから、このミカン荘が昭和の文化を意識しているのは当然のことじゃないって言ったの!!」
「・・・・・・今、君は昭和って言ったのか?」
「え・・・えぇ、言ったけどそれがどうかしたの?」
今まで寝ていた布団の上から起き上がった零夜は今居る部屋の内装を見渡しながら蜜柑に対して"このミカン荘の内装は昭和の文化を意識しているのか"と聞いた。
すると、蜜柑から衝撃的な答えが返ってきた。
その衝撃的な答えというものは、"今は昭和なのだから、ミカン荘が昭和の文化を意識しているのは当然"というものだった。
蜜柑のそんな衝撃的な答えを聞いた零夜は言葉を忘れると同時に驚きを隠すことが出来なかった。
「ね・・・ねぇ、大丈夫?さっきから固まっているみたいだけど、やっぱりまだ何処か悪いんじゃないの?」
「・・・・・・いや、大丈夫だから気にしないでくれ」
「いや、急にそんな風になったら普通気にするでしょ・・・。まぁ、貴方がそんなに言うなら気にしないでおくけど」
「あ・・・あぁ、ありがとう」
そんな衝撃的な話を聞き、言葉を忘れ固まってしまっている零夜のことを心配して蜜柑がそんな声を掛けるが、零夜は言葉に詰まりながらも、ただ一言"気にしないでくれ"と答えるだけだった。
それを聞いた蜜柑は零夜の表情や言動を気にしながらも、これ以上追求するのは"良くない"と思ったのか、零夜に対してこれ以上の追求をすることを辞めたのだった。
「話は変わるけど、貴方の名前はなんって言うの?」
「黒崎零夜で歳は十七歳だ・・・」
「黒崎零夜君って言うのね、十七歳ってことは私と同い歳だね」
「そうみたいだな」
「それで、何で黒崎君はミカン荘の前で倒れてたの?」
「・・・・・・いや、それが自分でもミカン荘の前で倒れていたのかを思い出すことが出来ないんだ」
「そうなのね・・・。それじゃ、家の住所は何処なの?もし、良かったら私が家の近くまで送って行くけど」
「実は、名前と年齢以外の全てのことを思い出すことが出来ないんだ・・・・・・」
「えっ、それってつまり記憶喪失ってこと?」
「あぁ、恐らくそうみたいだ」
蜜柑は話の話題を変えるためか、零夜に対して今まで聞いていなかった名前を聞いた。
蜜柑から名前を聞かれた零夜は自分の名前と年齢を答えるだけの簡単な自己紹介を行った。
零夜が簡単な自己紹介を行ったあと、蜜柑は更に続けてミカン荘の前で倒れていた理由を聞いたが、流石に"トラックに撥ねられて気が付いたらミカン荘の前で倒れていました"と話せる訳もなかったため零夜は"何も覚えていない"と答えた。
その後も更に質問を続けてくる蜜柑に対して零夜はどうにか不信感を思わせないため"記憶喪失"を偽ることにしたのだった。
「それじゃ、これから黒崎君はどうするつもりなの?」
「取り敢えず、何時までもここに居ても迷惑を掛けるだけだし、警察に事情を話して保護でもしてもらうよ」
「・・・・・・だったら、このミカン荘に住まない?」
「い・・・いや、見ず知らずの男をいきなり住まわせるのはヤバいだろ!!」
「それに関しては大丈夫だと思うわ、おばあちゃんに黒崎君の事情を話せばきっと分かってくれると思うし」
「・・・・・・そこまで言ってくれるなら、梅崎さんの言葉に甘えることにするよ」
蜜柑はそんな零夜に対して、"これから、どうするつもりなのか"と聞くと、零夜は"事情を話して警察に保護してもらう"と答えた。
それを聞いた蜜柑が"このミカン荘に住まないか"と提案すると、零夜は"見ず知らずの男を住まわせるのはヤバいんじゃないか"と言い断ったが、蜜柑は引くことなく"おばあちゃんに事情を話せば大丈夫"だと言った。
それを聞いた零夜はしばらく考えたあと、蜜柑の言葉に甘えることにしたのだった。
「それじゃ、決まりね。これから私と一緒におばあちゃんの所に行きましょう」
「あぁ、分かった」
そして、二人は事情を話すために祖母が居る部屋に向かって行くのだった。




