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これまでも、これからも、ずっとそばに……⑪

 僕は魔女さんと一緒に、小学校のジャングルジムにやってきた。

 太陽がやっと出てきたくらいの早い時間。当然だけど、学校には誰もいない。

 僕はジャングルジムのてっぺんに立って、箒からおりる。ぐらぐらして危ないから、魔法でとうめいな床を作った。

 魔女さんもおんなじように、ジャングルジムのてっぺんに立った。魔女さんは遠くの方に目をやって、僕にたずねる。


「家まで送らなくていいのかい?」


 僕はうなずく。

 だって、最後までついて来てもらったら、ちょっとはずかしいし。なにより、お別れのふんぎりがつかない気がした。

 僕は魔女さんを見上げる。


 思えば、フシギな一年だったなぁ。

 妖精の世界に行ったり、獣人と会ったり、魔法を使ったり、魔女さんの弟子になったり。

 大変だった。すごく。

 でも、魔法を使えるようになったのはうれしいし、誰かを思いやる想像力を、僕は手に入れた……と思う。多分ね。


 なにより、お母さんが近くにいるってことがわかって、うれしい。


「全部、魔女さんのおかげです」


 考えてることは全部魔女さんにはわかるから、僕はそれだけ言った。魔女さんは目をまあるくして、――多分、なんて言おうか考えたんだと思う――口を片手でかくして、いつもの「くひゅひゅ」っていう笑い方をした。


「多くを学べたなら、教えがいがあったってものさ」


 そう言って僕の頭をくしゃくしゃにする。相変わらず、らんぼうに頭をなでられて、僕は「やめてくださいよ」って言って目をギュっと閉じた。


「私こそ、君から色々学んだよ。ありがとう」


 ……?

 何かやわらかいのが、おでこに当たった気がする。

 僕が目を開けると、魔女さんの顔がすごく近いところにあってびっくりした。

 なんだかおかしくなっちゃって、僕らはクスクス笑い合った。


「元気でね」


「はい。魔女さんも、お元気で」


 魔女さんは僕から手をはなした。もう一度箒にまたがって、竜の杖をふった。


 とたんに、空にたくさんの流れ星が流れた。金色の流れ星は、地面に落ちるとマリーゴールドの花を咲かせていく。学校中、グラウンドにも、金色のじゅうたんみたいに、マリーゴールドの花畑が広がった。

 あんまりすごくてキレイで、僕は花畑に目をうばわれてしまって。


「さようなら。またね」


 僕が花畑に見とれてるうちに、魔女さんはふわりとうかび上がる。目の端でそれを見た僕は、あわてて魔女さんを見上げるけど。


 魔女さんの姿は、もうどこにもなかった。


「魔女さん……?」


 僕は魔女さんを探して空を見る。

 空からはまだ金色の流れ星が落ち続けてる。魔女さんは流れ星にまぎれて、空の高いところまで飛んで行ったみたいだ。


「空!」


 名前を呼ばれて、僕はジャングルジムの下を見下ろす。

 そこには、ヨレヨレのスーツを着たお父さんと、三人のお巡りさんが立っていた。


「お父さん!」


 僕はジャングルジムから飛び下りる。ケガしないように魔法をかけようとしたけど、地面に足がつく少し前に、お父さんに抱きしめられた。


「心配したんだぞ……」


 痛いくらいに強い力で、ぎゅうっと抱きしめられる。僕はちょっとだけ苦しかったけど、久しぶりにお父さんに会えたのがうれしくて、お父さんにぎゅうっと抱きついた。


「お父さん、ただいま」


 ✩.*˚


『これまでも、これからも、ずっとそばに…』

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