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誕生日の最高なプレゼント②

 星降堂(ほしふりどう)の外は、昔話に出てくるような外国の町。

 レンガでつくられた建物がずらりと並んでる。そのお店はほとんどがお店。八百屋さんがあれば、お肉屋さんもあるし、果物屋さんだってある。

 星降堂(ほしふりどう)の立て看板を出すと、となりの魔導書(まどうしょ)屋さんが声をかけてきた。


「おや、星降堂(ほしふりどう)が来たのかい」


 魔導書(まどうしょ)屋さんの方を見ると、おばちゃんがそこにいた。短い茶色の髪と、ぽっちゃりした顔。僕は「こんばんは」とあいさつして頭を下げる。


「あらあらあら。シュヴァルツちゃんってば、こんな可愛いお弟子さん捕まえて……絶対に弟子はとらない、なんて言ってたのに」


 シュヴァルツちゃんって、確か魔女さんの名前……


「おばちゃん。魔女さんのこと知ってるの?」


 僕がたずねると、魔導書(まどうしょ)屋さんのおばちゃんは笑いながらこう言った。


「シュヴァルツちゃんのお師匠さんが、この国の宮廷魔導師(きゅうていまどうし)だったんだよ。シュヴァルツちゃんを弟子にしてからは、宮廷魔導師(きゅうていまどうし)をやめて星降堂(ほしふりどう)を始めたんだけどね」


「きゅーてい、まどうし?」


 なんだかむずかしい言葉が出てきた。いや、むずかしいっていうか、専門用語ってやつかも。

 おばちゃんは僕が理解できてないことがわかったみたいで、優しく教えてくれた。


宮廷魔導師(きゅうていまどうし)っていうのは、この国の王様のために働く、えらい魔導師(まどうし)のことだよ。

 王様は私たち国民を守ってくれる人だから、宮廷魔導師(きゅうていまどうし)は私たちのために働いているとも言えるね」


 おお。なんだかすごい人っぽい。つまりは王様の家来みたいな感じかな。


宮廷魔道士(きゅうていまどうし)様が、シュヴァルツちゃんを弟子にとったのが五百年前。だから、それまではグリムニル様と一緒にお仕事されてたんだよ」


 ……ふーん。

 ……え? 何だって?


「魔女さんが弟子になったのが、五百年前?」


「そうだよ。シュヴァルツちゃんは魔女だから」


 僕の頭はぐるぐるしちゃって、今にもバクハツしそうだった。

 キレイなお姉さんに見えた魔女さんが、実は五百歳のおばあちゃん。そのお師匠様はグリムニルさんの古い知り合いらしいから、多分六百歳以上……

 うわぁ……なんか……なんかすごい……


「ちょっと! 私のいないところで私の話をするのはやめてくれないか!」


 その時いきなり魔女さんがお店から出てきて、怒り肩でおばちゃんにそう言った。怒ってるのか、はずかしがってるのか、顔は真っ赤っかになってた。


「いくら君たちエルフが年齢を気にしないたちとはいえ、こちらはそうじゃないんだ!」


「あらあら、五百歳なんてまだ若いじゃない」


「若くない。他種族なら老人だよ」


 いや、人間ならとっくに死んでるけどね?


「空?」


「ひい、ごめんなさい!」


 魔女さんににらまれて、僕は縮み上がってしまった。細くなったするどい赤目ににらまれたら、さすがに怖い……ていうか、頭をのぞくのやめてください……


「まあ、こっちに来てるんだったら、また魔法具を買わせてもらおうかしら。この前買った『好みの水差し』、四十年くらい前にこわれちゃって。また同じのが欲しいのよ」


「あー……じゃあ、同じの作るよ」


「うれしい! じゃあ、晩ご飯が終わったらそっちに行くわね」


 おばちゃんは笑顔を浮かべて魔導書(まどうしょ)屋さんの中に入っていく。

 残された魔女さんと僕は、なんだか居心地が悪くて顔を見れないでいた。


「……空」


 な、なんでしょう……?

 魔女さんを横目で見るものの、僕は返事ができない。


「今のは忘れて」


 今の……?


「あの、このみのみずさし?」


「ちがう。その前」


 あ……えっと……


「魔女さんが五百さ」


「言わなくていいから。いいね?」


 は、はい……

 魔女さん、年齢気にしてるんだなぁ……


「って、ちがうちがう。そんなことを話しに来たんじゃないんだ。

 空、グリムニルが呼んでるから、店の中に来てくれないかい?」


 グリムニルさんが、僕を呼んでる? 何でだろう。

 僕は魔女さんに連れられて、星降堂(ほしふりどう)の中へ戻る。すると、グリムニルさんは僕を見てニコリとほほえんだ。


「空に頼みたいことがあってね」


「僕に?」


 僕は、たよられることがなんだかうれしくて、ちょっとだけスキップしながらグリムニルさんに近付いた。

 グリムニルさんは、杖をふって空中に映像を映し出す。そこには、グリムニルさんにそっくりな女の人が映ってた。

 多分この女の人が、グリムニルさんのお母さん。見た目は僕のお母さんと同じくらいの年齢に見えたけど、エルフっていう種族だから見た目はあてにならない……んだと、思う。


「二千年生きてると、何に対しても()きてしまっているからね。ということで、こことはちがう世界から来た空に、プレゼントを作って欲しいんだ」


「プレゼントを、作るんですか?」


「そう。エルフの母は長生きだけど、流石に異世界のことは知らない。異世界のヒトであるソラの感性で、あっとおどろくような魔法具を作ってほしいんだよ」


 僕はちょっとだけ不安になった。そんなに大きい仕事を任されたことなんてなかったから、キンチョーしちゃったんだ。

 だけど、魔女さんは優しく背中を押してくれる。


「空ならできると思って、私がそうすすめたんだ。やってくれるかい?」


 魔女さんが、僕を信用してくれてる。

 僕はすごくうれしくなって、心がぶわっと熱くなった。魔女さんのお墨付きってやつをもらったなら、僕、できる気がするよ。


「わかりました。僕、頑張ります!」


「ほんと? うれしいよ。よろしくね」


 グリムニルさんは、僕の両手をにぎってブンブンと上下にふった。

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