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愛の惑星

作者: 村崎羯諦

 みなさん、こんにちは! ようこそ、アーディオ銀河β系第二十八惑星、通称「愛の惑星」へ! 飛行船による惑星周遊ツアーはお楽しみいただけてますでしょうか?


 ここ愛の惑星は銀河交通の要所であるトラギオラ中惑星から200光年、アーディオ銀河主惑星であるギュローポイ星から12万光年離れた位置にある小惑星です。


 愛の惑星の大気は始祖地球と非常に似ており、酸素、窒素、二酸化炭素が主な成分を形成しています。ただ、酸素の割合は地球より少し高く、約23%を占めているのが特徴です。大気圧は始祖地球の海面大気圧の約1.1倍と少し高めですが、始祖地球から訪れた方々が適応するには十分な範囲内ですので、適応訓練期間なく入星できる惑星となっております。


 愛の惑星の一年は始祖地球時間で約687日。長い年月を感じさせるこの星の年は、みなさまにとって時間をゆったりと感じさせることでしょう。軌道はほぼ円形に近く、離心率が0.03と非常に低いため、季節の変動は穏やかです。また、軌道の傾斜角が17度であるため、季節の変化はありますが、始祖地球のように極端ではありません。


 さて、なぜこの惑星が愛の惑星と言われているのか。みなさまご存知でしょうか? それでは一番前の席にお座りのお兄さん。ご存知ですか?


 ……はいはい。ええ、ええ。素晴らしい! さすが始祖地球にお住まいのお客様ですね! 私の解説もいらないくらいに完璧な答えです!ですが、それでは私が給料泥棒になってしまいますので、一応説明します。


 この惑星が愛の惑星と呼ばれている理由、それはこの惑星が愛の輸出をきっかけにここまで栄えたからなんです。


 愛を輸出すると言っても比喩ではありません。愛抽出装置という機械を脳に直接埋め込み、それによって愛を感じる時に発せられる化学物質を採取。その採取した化学物質を他の惑星に輸出しているんです。


 この愛の輸出は国策で決められておりまして、惑星住民は愛抽出装置の埋め込みが義務付けられています。……ほら、私の右耳の後ろですが見えますか? 管が頭の中に差し込まれていて、その先に小さなカプセルみたいなものがありますよね? 管を通してこのカプセル内に化学物質が貯められていき、愛が一定量抽出されると、このカプセルを交換するという仕組みになっているんです。


 愛抽出装置によって本来感じるはずの愛を感じることができなくなるということで惑星によってはこの抽出行為自体が禁止されていたり、法律で制限されていたりするんです。ですが、もともと資源がなかったこの惑星では背に腹はかえられぬということでずっと昔からこれが続けられてきたんですね。


 この愛の輸出によってこの惑星は外貨を取得し、発展をしてきました。愛の輸出に伴って、離婚率の上昇や捨て子の増加といった社会問題は生まれたんですが、予期せぬメリットも生まれたんです。それが無駄に愛を感じることがなくなったせいで、この惑星の住民みんなは合理的な考え方ができるようになったということです。


 例えばほら、向かって右側に見える高いタワーをご覧ください。惑星の重力、大気と建物の高さによって算出される建造物高度値が、アーディオ銀河では最も高い建物としてこの愛の惑星を代表する建造物となっております。


 実現不可能と言われたあの建造物建造にあたっては、徹底的な効率化とコストダウンが行われました。その結果として、建設中の事故によって合計243名の犠牲者が出ながら、あの建物が作られたのです。この惑星ほど合理的に考えることができない他の惑星であればきっとプロジェクトは成功しなかったでしょう。まさに愛がないゆえに完成された建物だと言えます。


 その他にも例を挙げたらキリがありませんが、この惑星発のビジネスは銀河中に広がっています。最初は愛の輸出によって成り立っていたこの惑星も、今では愛の輸出に頼らない、経済的に発展した惑星に成長できたわけです。


 おや、後方のお客様、どうかされました? ええ、ええ。なるほど飛行船の後方右翼から黒煙が出ているということですね。それは大変ですね。


 ちなみに私たちが乗っているこの飛行船も、我が惑星に本社を置く会社によって量産化された飛行船になります。その会社のポリシーは、他のこの惑星の会社と同じように徹底的な効率化と合理化にあります。そのため、例えば事故が起きてその損害賠償を払うことになったとしても、安全性を下げることによって得られる利益がそれを上回っているのであれば、安全性を下げるという判断をしています。


 みなさん、落ち着いてください。騒いだところで私たちに何かができるわけではありませんから。状況を考えるに、おそらく飛行船の故障が原因で、まもなくこの飛行船は墜落するでしょう? 避難装置ですか? そんな滅多に使わない非合理的なものはこの飛行船には用意されてませんよ。


 死ぬことを受け入れ、今はどれだけ苦痛なく死ねるかどうかを考えましょう。え? どうしてそんなに死ぬのが怖くないのかですって? ああ、そうそう。我が惑星に住む人々はみんなそこまで生に執着していないと言われているんです。


 だってそうでしょう? 落ち着いて考えてみると、生きることほど非合理的なものなんて存在しませんからね。

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