慷慨悲歌
掲載日:2023/08/08
もしもこの世がまっさらで
神も思想もなかったら
顧みられぬ祈りの声は
人の心に届くだろうか
自覚と契約の名の下に
諍うことはないのだろうか
顔を背けて天を仰ぎ
紡ぐ祈りのその歌が
救世のためだというのなら
のぼり切った梯子の先にも
躊躇うことなく踏み出すだろう
硬く閉ざしたその瞳が
嘆きの涙をうつすなら
傍らで消えた温もりを
縋る力をなくした腕を
何ひとつ受け止め切れない
この両手を
差し出すことさえ厭わない
こぼれ落ちた果敢ない命を
ただひととき祈りをほどき
この手の中に抱いたことを
もしも貴女が罪と呼ぶのを
赦さなければ
私が貴女に背を向けることは
なかったのだろうか
永遠を願う貴女を蔑むことは
なかったのだろうか




